恋愛犬狂騒曲
高校生の美香ちゃんは、本屋さんの帰りに茶色い野良犬に出会いました。
「よしよし、おいでおいで、かわいいね」
中型犬の雑種のこの犬は、何を思ったか、どこまでも美香ちゃんについてきました。
美香ちゃんは自転車だったのですが、早くこげば走ってついてくるし、ゆっくり行けば足に立ち上がってなでてもらいたがるし、自転車を降りれば足に抱きついてくるし、ほとほと困ってしまいました。
途中、行きつけの動物病院に逃げ込むと、自動ドアをくぐってついてきます。
事情を話すと、看護師さんがエサを犬に与えて「今のうち!」と言いました。
脱兎のごとく逃げ出した美香ちゃんに気付いて、犬はすぐに追っかけてきました。
「あら、美香ちゃん?その犬どうしたの?」
近所のおばさんが声をかけました。美香ちゃんの同級生のお母さんでした。
「人間の男の人にモテないのに犬にはモテるんですぅー(泣)」
「あらまあ」
やっと家に着きました。
自転車とめて荷物もって一目散に玄関に走り寄ると、犬もついてきました。
「ただいまー!アルぅ!」
ばうばうばう!!
美香ちゃんの飼っているオスのビーグル犬がものすごい剣幕で吠えて、ついてきた犬はやっと諦めてどこかへ行ってしまいました。
「ありがとう、アル」
ぎゅっと抱きしめると、アルはまんざらでもなさそうでした。