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ジャミルの子供

「うーん。そろそろやっぱり肉が欲しいな」

「肉か。買いに行ってくるか?」

「いや、もう少し辺境開拓ライフを楽しむとしようか。よし!ポチシルバーラビットを狩りに行こう。他にシルバーラビットを狩りに行きたい人?」


 タロスとモッくんが勢いよく手をあげる。

 ジャミルは無言で俺の方を見てきた。

 その視線が怖い。


「わかったよ。ジャミルも連れて行こう。タロス引き抜いてやってくれ」

「ダンいいのか? まだきっと小さいエルフしかできてないぞ」


 モッくんはまだそんな冗談を言っていた。

 ジャミルはずっと無言のまま俺の方を見ている。


「モッくんはこのエルフが2人欲しいのか?」

「あっ……確かに無駄飯食らいを増やしても何の得にもならないか」

「そういうこと。タロス頼む」

「わかった」


 タロスはジャミルの肩まわりの土を払いのけ脇の下を持って一気に引き抜く!

 モッくんはエルフがこれで増えるなんて言っていたがまったく……引き抜かれたジャミルの手には子供のエルフがついてきていた。


「えっ? エルフってこんな増え方するの?」

「いやーやっと話せる。土の中で沈黙の魔法を使われていたみたいで何も話せなくてさ」


 ジャミルは手に握っていた子供の手をさらっと離す。

 うわぁ! 危ない!  


 俺はとっさにその子のことを助けるためにダイブし受け止める。

 危ない! ギリギリセーフだ。


 その子はプニプニとしてとても柔らかかった。

 そういえば昔こんな人形が街で流行ったことあったけな。


 たしか名前はプニプニ人形。

 大量に魔法使いが作って売りにだされたけど、その後街の川とかに捨てて水死体に間違われて製造禁止になっていたっけ。


 それにしても……あっもしかしてあれか?

 モッくんとジャミルがふざけて人形埋めておいて俺を騙そうとでもしたのか?


 ずいぶん手の込んだことをするもんだ。


 俺はそこ子のお腹辺りをプニプニと押す。

 触り心地がいいな。


「キャハハ! パパッくすぐったい!」

 はぁ? 

 人形と目と目があう。

 っていうかこの人形話したんだけど。


「うわぁ! なんだそのエルフ!」


 俺の手の中で抱かれた子はなぜか俺のことをパパと呼び、ジャミルは自分で引っ張り上げてきたエルフを見て驚いている。


「ジャミル、エルフってこんな感じで増えるんじゃないのか?」

「何を言っている! エルフだって普通に結婚して増えるぞ!」


 俺たちが会話をしている横でモッくんが胸を張ってドヤ顔をしていた。

「モッくんの魔法なのか?」

「そうですよ。ジャミルから栄養をもらって株分けしました」


 ごめん。いったい何を言っているのかがわからない。

 エルフって株分けできるの?


 そもそもそんな風にできるもんだっけ?

 あれ、俺もそのあたり詳しくはないけどおしべとめしべがごっつんこしてでしょ?


 俺が混乱をしていると俺の腕の中で俺の服を引っ張り小さなエルフが話しかけてくる。

「パパっお腹すいたー」

「ダンがパパ……カッハハハ! ダンおめでとう! 可愛い子じゃないか。大丈夫か? 犬一匹養えないのに。子供を育てるなんて。お前にそんな度胸があったことに驚きだけどな」

「そうだな。ポチ悪いけど俺にはそんな甲斐性がないんだ。だから、最初にポチのご飯を減らすしかないな。本当にごめんな。苦労をかけ……」


 ポチはかぶせぎみに謝罪をしてきた

「あっ悪い、ふざける時じゃなかったな。ご飯は減らさないでくれ」

「わかればよろしい。ご飯のかわりにネギ2割り増しで許してやろう」

「グヌヌヌ」

 ポチはわかりやすくしょんぼりしてシッポを垂らしていたが、少し静かにしてもらっておこう。


 とりあえず、何か食べ物を与えないと。

 ミルクとかか?

 タロス上半身牛だしミルクとか……でないよな。


 タロスの上半身はムキムキに鍛えられており、乳牛のような感じではなさそうだ。

 そもそも性別が違うはず。

 

「それって森の妖精ポルックルの子ですかね」

 俺がタロスを見ていると視線に気が付いたタロスがそんなことを言いだした。


「タロス知っているのか?」

「はい、森の妖精と呼ばれる種族で特に害はなかったはずです。でもどうやって増えているのか知りませんでしたけど。ポルックスのいる種族は繁栄をするっていう伝説があるくらいなので幸先いいですね」

「確かに! よく見ればポルックルだな! ポルックルはキレイな水が主食だって聞いたことあるぞ。でも、俺の知ってるポルックルはもっと違った形だったけどな。たしか小さな竜神族の姿に近いって言われていた」


 どうやらジャミルも知っているらしい。

 エルフではないのか。

 でも、耳も長くエルフのような特徴的な姿をしている。

 もしかして色々増やせるってことなのか?

 ポルックルを見ると指をくわえてお腹を空いたアピールをしてくる。

 詮索よりも先に水なら飲ませてやるか。

 

「水飲むか?」

「うんっ!」


 ポチは先ほどのふざけていたのとは違い、空気を読んだのかすぐにコップを持ってきてくれた。

 だが、持って来てくれたコップにはポチの涎がすごい。


「ポチありがとう」

「いいってことよ。だからネギは勘弁してくれよな」

「わかったよ」

 ポチはブンブンとシッポを振って喜んでいる。

 意外とチョロいんだよな。


 俺は水魔法できれいに洗ってからコップに水を入れてやる。

 ポルックルは大事そうにコップを両手で持ち美味しそうに一気に飲みほしてしまった。

「もっと飲むかい?」

「うん!」


 よっぽど水が美味しいらしい。

 その子が水を飲んでいる間にモッくんに聞いておかなければいけないことがある。

「モッくんこの子はエルフじゃないってこと?」

「いや、よくわからないけどエルフを埋めておくと増えるって森の魔法使いから聞いたことがあったんだよね。あれ? でもそれはエルフの死体だっけ? 今までエルフと会うことがなかったし、教わってから一度も使う機会がなかったからいつか使って見たいと思っていたんだよね」


 結構あやふやな記憶で埋められてたらしい。

「ジャミル、エルフの死体からポルックルが生まれたりはするのか?」

「いや、そんなことはないと思うぞ。ただ、仲間内で死んだ人間はここ最近いなからわからないけどな」


「もう一回埋めてみればいいんじゃないか?」

 モッくんがスコップで土を掘りだし、タロスがジャミルを持ち上げる。

 連携速度が早すぎる。


「ちょっと待って!」

 ジャミルは埋められるのをなんとか避けようと暴れているが、ポルックルは全然気にせずに水を飲んでいる。


「埋めてもいいが、次また増えた時に面倒を誰が見るんだ? それにこの子も今後どうするんだ?」

 

 全員が俺の方を見てくる。

 ジャミルまで俺の方をみてくるが、俺が育てる?

 まさかだろ。


「いやいやそんなの無理だからな」

「パパ?」

 

 ポルックルが俺の方を見て首をかしげてくる。

 いや、可愛いのは可愛いけどさ。

 この子どうしたらいいんだよ。

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