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長ネギの刑

「今日も朝から楽しい穴掘りだい。ドンガラ、ドンガラ穴掘りだいっ!」

 モグラたちは楽しそうに歌を歌いながら畑を耕している。

 別に穴は掘っているわけではないが、そういう歌らしい。


 一番初めに絡んで来たモグラの名前は全員一致でモッくんに決まった。

 全員覚えるのがめんどくさいという理由だった。

 ちなみにモグラたちには名前はないらしい。

 名前はなくても何となくの上下関係があり、意思疎通も普通にできるということだ。


 残りのモグラは活躍したら名前を与えるといった感じになった。

 ただ、モッくんはジャミルにだけは上から目線を貫いているので、モグラより下の位置になったジャミルがちょっと可哀想な感じになっている。

 

 シャミルはそれが不服なのかモグラたちに何度か襲い掛かっていたがすべて返り討ちにされていた。


 1対1ならジャミルにも勝ち目はありそうだが……モッくんたちは集団戦を得意としているようで全員一丸となってジャミルに襲い掛かる。

 

 俺からすればどちらもどっちだが、なんだかんだ楽しそうにしているので放置している。


 モッくんたちは俺たちと出会ってから交代でずっと土地を耕し、肥料を入れ、魔法を唱えて、土地を開拓してくれている。

 

 ちょっと寝ていないのか、もともとなのか危ないモグラもいた。

「楽しいっーヒャッハー! まじでこの土地最高っす。涎垂らしまくりっす! ここならいいナッツできるナッツ!」

 とか叫びながら畑を耕している。

 全員で春の温かさがそうさせているんだなと温かい目で見守っていた。


 ジャミルだけは、そのモグラになら勝てると思ったのか後ろから襲っていたが、一瞬で返り討ちにあい、昨日から畑に埋められ首だけ上を畑からだし埋められている。

 生首のようで気持ち悪い。


 そのせいで未だにログハウスようのガラスが作られていない。

 俺はちょっと可哀想に思い畑からだそうと思ったら、モッくんから止められてしまった。


「腐らなければ収穫時期にはエルフが増えるはずですっ!」


 そんな戯言を信じたわけではないが、仲間を攻撃したあたり少し反省の意味も込めて埋まっていてもらっている。モグラたちもまともに働いているのに邪魔しているから少し静かにしていてもらったほうが効率はあがりそうだ。


 ただ、モッくんが周りに魔牛の糞を埋めていってジャミルが涙目になりながら無言でこっちを見ている姿があまりにいたたまれないので後で掘り返してやろうとは思っている。


 そんな目で見られるなら騒いでくれた方がまだマシだ。

 

 モッくんたちが来てすぐに耕し種を植えた場所はもう野菜が育ちつつあった。


「モッくん、野菜育つの早くね?」

「植物の加護っていう加護を持っているのでだいたい早い野菜なら3日で育ちます。明日には収穫できるものもあると思います。でも森の中ではだいたい2日で他の魔物に食べられてしまっていたのでなかなか収穫までいけなかったんです」


 森の中の生存競争はかなり大変なようだ。

 モッくんはあれほど俺を下に見ていたのに、ポチとタロスの前では絶対にタメ口をきかなくなった。もちろん、まわり俺しかいないとタメ口で話しかけるが別に気にしてない。

 

 それを面白がってポチがわざとモッくんと二人にさせようとしているが、俺は大人だからな全然気にしていない。まったく気になんてしていない。

 ただ、あとでポチにはネギを沢山刻んで食べさせてやろう。


 ポチは魔獣だからネギを消化できるが、好き嫌いをして嫌いなだけだ。

 俺も若い頃には好き嫌いは許しませんってよく怒られていたからな。

 俺も心を鬼にしてポチに食べさせるしかない。


 ポチの健康を祈ってだ。


 決してこれはポチへの嫌がらせというわけではない。


 というわけで俺はみんなの分の料理を作る。

 今日は……ネギをたっぷり使ったネギ魔牛丼だ。


 魔牛の肉は街をでる時に買って来たお肉だ。

 だが、そんなに量は多くないのでネギと玉ねぎで量をかさ増しする。

 別にポチへの嫌がらせというわけではない。


「ご飯できたぞー」

 俺の掛け声でみんながやってくる。

 モグラたちの分も用意したいが、今は全員分を賄うだけの食材がないのでモグラたちは自分たちで準備してもらった。


 畑の野菜ができたら、モグラたちにも一緒にご飯を食べてもらおう。


「ダン……ネギが沢山入っているんだけど」

「あっ? いやー肉の量が少ないからさ。かさ増しするのに野菜を多く入れたんだよ。それにポチは俺にだいぶ気を使ってくれてモッくんと2人っきりにさせたいみたいだし」


「いや、そんなことはしていないぞ。俺のこの忠犬っぷりをよく見てくれ」

 ポチが俺の方をまっすぐと見つめてくるので俺も視線を合わせると、すぐにプイッと横を向いてしまった。肩を震わせて笑っている。


「駄犬じゃねぇか! 目もあわせられない忠犬がどこにいるんだよ!」

「クッハハハ……だってあいつらのあの豹変を見てたらつい面白くて!」

 

 とりあえず、ポチの口の中に長ネギをそまま突っ込んでおいた。

 それを見ていたモグラたちは俺と2人きりになっても調子に乗らなくなった。

 まぁ結果オーライということで。

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