白いわんこは魔獣だと言われ街から追放される。
「悪いな、ダン。この街の決まりでな、この魔獣は飼育指定魔獣じゃないから飼うことはできないんだよ」
ある日、俺の家に兵士がやってきてそう告げてきた。
この兵士ともすっかり顔なじみだ。
名前はポテ……ポテコだった気がする。
「ポテコさん、ちょっと待ってください。こんなにモフモフしてて、白くて可愛いのにダメって言うんですか? ほら笑った姿だってこんなに愛くるしい」
「俺の名前はポテコじゃなくてステファンな。悪い、笑った姿は俺には、今からお前を食ってやると言ってるようにしか見えない」
「いや、それは人の感じ方ですし、この潤んだ綺麗な瞳を見てください。こんな可愛いわんこが危険だなんて言うんですか!」
「あぁ金色の目だな。魔獣の中でも最高位の魔力を持っている証だ。お前も知っているだろ? 金色の目は最高ランクでヤバイ魔獣に多いって。あの見たら死ぬと言われてるブラックタイガーでさえ銀色だからな」
「そんなのきっと迷信に決まっていますよ。ほら、この子だってこんなに大きくて手触りがいいんですよ」
「あぁ百歩譲って手触りは認めよう。こんないい手触りはなかなかいない。だけどな、人間の3倍の大きさになった魔獣をこの街で飼うことは認められていないんだよ。もうすぐ、門からだってでれなくなるだろ」
「大丈夫ですよ。もう家にだって入らないんですから。それにうちのポチは門がなくても城壁くらいなんなく乗り越えられますから。なっポチ!」
「バフッ!」
ポチは元気に返事をしてくれる。
「もう帰っていいか。そもそもな城壁っていうのは魔獣に乗り越えられない高さで作ってあるものなの。それを簡単に乗り越えられるって上層部にわかったらさらに城壁を高くしなくちゃいけないだろ。ん? なんだ変なところを見ていて。何かあるのか!?」
「えっと……後ろ」
そこにはポテチの上司が怖い顔でこっちを見ていた。
「おい、ステファンこの魔獣は城壁を乗り越えられるっていうのは本当か?」
「はい! 前はできませんでしたが、今のポチなら余裕です!」
「バフッ!」
俺とポチは元気よく返事をする。
「お前余計なことをいうな」
ポテコはなぜか怒っているが、きっとうちのポチが優秀だから嫉妬しているんだな。
「実際にやってみろ」
それからポチと俺は華麗に城壁の上を飛び越えて自慢してやった。
俺たちになればこれくらい余裕だ。
「どうだポテコ。俺たちのすごさがわかっただろ」
「もうポテコでいい」
俺たちは街の兵士たちに才能を認められ、ポテコは更に城壁を高くするようにと指示があり、死んだ顔をして持ち場へ戻っていった。
そして、俺たちはあっさり街から追放になった。
今まで入街税を誤魔化していたのはバレなかったが。
ポチは街では飼ってはいけないらしい。
なんでこんなことになったんだ。
◆◆◆
ポチとの出会いは、あれは季節外れの大雨が降った日だった。
この国の乾季に振りだした雨は季節外れの大雨になり、家の近くの川を増水させた。
俺は興味本位で川を見にいくと、ゴォーゴォーと水が滝のような勢いで流れていた。
普段綺麗な水が流れる清流とはまるで違っていた。
茶色く濁った水はすべてを流すような勢いだ。
これは本当にまずい。
少し高台のところから見ていたが、徐々に水位があがっていく。
帰って避難の準備をしよう。
そう思っていたところへ、上流から小さな犬が流されてきた。必死に生きようと暴れているがこのままでは助かりそうもない。俺はとっさに風魔法で犬を川から弾き飛ばした。
その犬はまだ子犬で全身が茶色い土で汚れてしまっていた。
助け出した子犬は呼吸が荒く、震えている。見るからに弱っていた。
俺は可哀想に思い、その濡れた犬を懐にいれ、家に連れて帰ることにした。
家で優しく風魔法で身体を乾かしてやる。
暖かい暖炉の前で寝かしてやると、震えも治まり少し元気になったようだった。
さて、この犬をどうしようか?
俺は、C級とD級をさまよう、さえない冒険者だ。決して豊かではなかったが日々生活するのには困りはしないくらいは稼げていた。犬1匹くらいなら飼えないわけじゃない。
これも何かの縁だ。
元いた場所に置いて来るわけにもいかないしな。
それから俺は犬に名前をポチと名付け楽しい日々を過ごした。
ポチは非常に優秀で俺の言葉を理解し、1年経つ頃には、人の言葉を話をするようになっていた。
だが、そんな幸せな日々はあっという間に終わりを告げる。
ポテコがポチを危険視するようになったのだ。
こんな可愛い犬を魔獣だと言ってつきまとい、そしていよいよ最終通告をしにきた。
「ポチ、街から追い出されてしまったけどどうしようか?」
「ダンもういいぞ。俺もうすうす気が付いていたけど、犬のフリするのは限界だと思っていたところなんだ。だって、どこの世界にオークを一撃で狩れる犬がいるんだよ」
「そうなんだよな。ごめん。俺も言い出せなかったけど、定期馬車で3日かかる距離を3時間で走り抜けるあたりで、もう犬のフリは無理かもって思ってたんだ」
「だよなー」
確かにポテコの言う通りポチは街での生活は限界にきていた。
日に日に食べる量は多くなり、近くの魔獣の数も減ってしまい、今じゃ家の中には身体の半分しかはいらない。入る時は扉を外しお尻側から入るしかなかった。
「ポチ最後に冒険者ギルドとソフィアにあいさつだけしてくるよ」
「あぁ俺も一緒に行く」
冒険者ギルドはいつもと同じように受付のセリーナは可愛くてニコやかだった。
「ダンさん今日はどうされたんですか?」
「実はセレーナにお別れを言いに来たんだ。俺とポチはこの街は狭すぎるからでていくことにしたんだ」
できるだけカッコ良くセリーナさんに伝える。
「追い出されるんですよね? もうみんな知ってますよ」
「知ってるなら聞くなよ」
「はぁダンさん強くもないけど、弱くもなくて丁度いい冒険者だったのに残念です」
「それは褒めてるのかな?」
「非常に感謝してるってことです。普通はこんなことはしないんですけど、これプレゼントです」
セレーナは俺に紙袋を渡してきた。
なかには回復薬が5本と軽い軽食が入っていた。
「ありがとうセリーナ」
「今まで本当にお世話になりました。ダンさんがいたおかげで、このギルドから育って行った冒険者も沢山います。この街の制度上仕方がないことなのかも知れませんが、ダンさんを追い出すなんてこの街にとっては、大きな損失だと思います。本当に、ダンさんが……いなくな……る……なんて……ごめんなさい。泣かないって決めてたんですけどね」
セリーナの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「あぁあ、最後までダンがセリーナ泣かせてるよ」
「本当にダンなんて早くどっか行ってしまえばいいんだ」
「そうだ、そうだ! セリーナさんは俺の嫁にするんだ」
最後に嫁と言っていった奴は、他の冒険者にどこかへ連れて行かれた。
セリーナを狙っている奴は沢山いるからな。しばらくは帰ってこないだろう。
「ダン、今まで本当にありがとうな。お前が俺たちのパーティーに基礎を教えてくれたから、俺たちは今こうして生き残っている」
「俺たちもそうだ。あんたはいつも自分の利益よりも他人のことを優先してくれていたからな」
「お前ら……タマとノリだったよな。ありがとう。お前らのことは忘れないよ」
「誰だよ! 忘れないどころかすでに記憶されていないよ。いい加減セリーナさん以外の奴の名前も覚えろ」
もちろん俺の照れ隠しだ。
大丈夫だ。忘れないぞ。多分。
名前は聞かれたら困るけど。
「それでソフィアは今日いる?」
ソフィアは俺が最後に育てた冒険者だ。
誰よりも強く、誰よりも最速で成長していった。
そして、今は俺の手元を離れ冒険者として独り立ちしている。
「今長期の依頼を受けててしばらくは帰ってこないんです」
「そうか。じゃあ戻ってきたら元気でやれって伝えてくれ」
「わかりました。この後はどこへいくつもりですか?」
「まだわからないけど、ポチが一緒に住める場所を探そうかと思っているよ」
「それなら大丈夫ですね。ダンさんにお世話になった人がこの国には沢山いますから、どこへ行っても受け入れてもらえると思います」
「そんなことないよ。セリーナさんは大げさなんだから。それじゃあ、みんな元気でやれよ」
「ダンもな!」
「ポチ、ダンをよろしくな!」
俺とポチはギルドから盛大に送りだされ街からでる。
「さて、これからどこへ行こうか?」
「本当にいいのか? 別に俺のことを捨ててもいいぞ」
「なに言ってるるんだよ。俺とお前はもう家族なんだから、家族を捨てるわけないだろ」
「ありがとうダン。これからもよろしくな」
「こちらこそ」
俺たちが歩きだすと目の前に1枚の紙が飛んできた。
「なんだこれ?」
そこにはこんな文章が書かれていた。
『終焉の森の開墾者募集! あなたもこれで土地持ちへ! 自分で好きに開墾して田舎でスローライフを送りませんか? 面接不要。早い者勝ち! 希望者多数! 先着順で優遇制あり! 開墾した土地はすべてあなたの物になります。納税の必要もなし。魔物を狩って自給自足を満喫しよう。辺境伯セス・セドリック』
「ダン、終焉の森ってどこだ?」
「ここから定期馬車で6日くらいの場所だな。ポチなら6時間ってとこ。木が固くて魔物が強いから誰も開墾できない場所なんだ。樹齢何百年の木が大量にあって、魔力濃度も濃いからこの辺りでは見ない魔物が沢山いるらしい。悪ふざけで入った冒険者がゴブリンナイトの群れを見たって言って2度と近づかないって言ってたぞ」
「じゃあ俺はそこへ行くよ。ダン、達者で暮らせよ。お前1人なら街の中で生活できるから」
「はぁ。ポチ、そんな寂しいこと何度もいうなよ。どうせならそこに、魔物も人も差別のされない街でも作ろうぜ。俺たちなら新しい街だって作れるだろ? 好きに開墾していいみたいだしな」
「あぁ行くか。俺たちの旅はまだまだ終わらない」
「ポチ、それ終わる時に使われることが多いやつだからな」
「テヘッ」
こうして俺たちの辺境での街づくりがはじまった。
その街はやがて世界でも最大規模の街へと発展していく。
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ダン「おやじギャグか!」
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