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国境なき騎士団

オークとの戦闘の後、目を覚ましたのは次の日の昼前だった。

目を覚ました俺を母さんと父さんはこっ酷く叱った。

どうして1人で向かったの、何故すぐに大声で助けを呼ばなかったの等、その手があったかと思わされる事を言われ、最後の方には小さくなってしまっていた。

ちなみにリズは説教の最中、ずっと俺にくっついたまま一緒に怒られていた。

母さんと父さんが俺とリズを叱り俺たちを強く抱きしめた後、国境なき騎士団から呼び出された。


「し、失礼します」


騎士団のリーダーが借りている家へとノックをして入る。

中にはベッドと小さなテーブル、椅子が2つ置かれていた。

椅子の1つに座っていた人物が、立ち上がりながら話し出す。


「やぁ、こんにちは。私は国境なき騎士団の団長を務めている、ティアーツだ。君がダリル殿の息子のエリック君だね?」


そう言って手を差し出してきた人物は、銀色の甲冑と赤いマントをつけた美しい女性だった。

髪はマントよりも綺麗な赤色をしており、腰の少し上まで伸ばしている。

目も綺麗な緋色だ。

銀色の甲冑の左胸当ての部分には騎士団の紋章であろう、剣と盾が交差し左右に翼がある絵が描かれている。

差し出してきた右手は手甲がされており、銀色に煌いている。。


「は、はい。エリックです」


その手を緊張しながらも握る。


「フフッ・・・そう緊張しなくていい。まずは椅子に座りたまえ」


そんな俺の様子を見ていたティアーツさんは、そう言うと椅子を勧めてくる。


「し・・・失礼します」


そう言って座るとティアーツさんは、少し真剣な顔になりながら尋ねてくる。


「君は戦闘の才能持ちだと聞いているが、それは本当かい?」


俺はその言葉に首を傾げながらも頷き返す。

俺の返事を見たティアーツさんは顎に手をやり考え出す。


(え、なに?何か問題とかあるの?)

ティアーツさんの様子に何故か心配になってきた俺は、キョロキョロと周囲を確認する。

そうして俺が挙動不審になっているとティアーツさんが再び尋ねてくる。


「・・・オークを君が1人で倒したと聞いたが、どのようにして倒したのか聞いてもいいかな?」

「はっはい!えっと・・・」


突然話しかけられて驚くも、オークを倒した状況について話始める。




話を聞き終えたティアーツさんは1つ頷くと俺に言ってくる。


「エリック君は、才能を使いこなせていない様に見える」

「才能を使いこなせていない?」

「ああ。知っていると思うが、戦闘の才は戦闘センスの向上を行う。それは、衝撃の受け流しにも影響する。」

「・・・自分が、オークの攻撃の衝撃を受け流せずダメージを受けていたのは、上手く才能を使いこなせていなかったからだと言うんですか?」


ティアーツさんはその問いに黙って頷く。


(才能を使いこなせていない・・・か。もし使いこなせていればあのオークも簡単に倒せたのだろうか)


才能を使いこなせれば、俺が長生きできる可能性は上がる。


(誰かに才能の使い方について教えてもらえれば・・・)


けど村には才能を持っている人が居ない。

どうしようか悩んでいると目の前の人物を思い出す。


「・・・そうだ!ティアーツさん、才能の使い方について教えてください!」


いきなりの大声にも関わらず、その答えを予想していたのか冷静に返答する。


「残念だがそれは出来ない。私の才能は普通とは少し違うんだ」

「普通と違う?」

「ああ。私の才能は特殊でね。詳しくは言えないが、普通の才能とは種類が違うんだよ。その為、君の戦闘の才について教える事が出来ないんだ・・・すまない」

「そう、ですか・・・」

「仲間に才能持ちが他にも居れば、その者に頼めたのだが、残念ながら居ないのだ・・・本当にすまない」


軽く頭を下げてくるティアーツさん。

それを慌てて上げさせる。


「や、やめてください!ティアーツさんは何も悪くないですよ!それに頭を下げるべきなのは俺の方です。俺が才能を使いこなせていない事を教えてくれたんですから、感謝してるんです」


そう言うと、ティアーツさんは頭を上げ始める。


「・・・そうか。そこまで言われて頭を下げ続けるのもいかんな。」


その言葉を聞いてホッとしていると、ティアーツさんが尋ねてくる。


「そういえば、エリック君は冒険者になるのだったな」

「は、はい・・・」

「そうか・・・。ダリル殿が嬉しそうに話しておられたぞ。副業とはいえ、我が子が自分と同じ職になるのだ。共に冒険するのを楽しみにしているのだろう」

「父さん・・・」


ティアーツさんの言葉に、嬉しそうに俺の事を話す父さんが頭に浮かぶ。


「フフッ・・・良いお父さんじゃないか」


そう言ったティアーツさんの目は、とても優しげだった。






ティアーツさんとの話が終わった後、俺は騎士団の一人の治癒師の元へ向かった。

オークとの戦闘で負った怪我を直してくれた感謝を伝えるためだ。

治癒師は現在、村の広場で村の人達の診断をしている。

その診断が終わるまで近くの地面に腰掛けて待つ。

すると、診断が終わった村人が近寄ってくる。


「おいおい、エリックじゃねぇか」


そう言って俺の名前を呼んだのは、村唯一の15歳。


「・・・バットム」


俺が名前を呼ぶとバットムはすぐに言葉を返す。


「なんだよエリック、テメェ森の中でオークと戦ったらしいな」

「そうだけど・・・」


俺が答えるとバットムはそっぽを向きながら言ってくる。


「フンッ・・・俺なら楽勝で勝てたけどな」

「そんな事言わないでよ・・・」


バットムは一見口が悪い嫌な奴に見えるが、内心は優しい奴なのは村人皆が知っている。

今の言葉も、言いながら俺をチラチラと見てきて心配しているのが分かる。

だから俺も怒ったりせずに冷静に言葉を返すのだ。


「父さんに聞いたけど骨が1本折れてたらしいんだ。ソレを治してもらったお礼を言いに、治癒師の人の所に来たんだ」


バットムに聞かれる前に広場へ来た理由を言う。

その俺の言葉にバットムは目を見開きながら尋ねてくる。


「ほ、本当か!?大丈夫なのか?ちゃんと治してもらったのか?」

「大丈夫だよ。国境なき騎士団の治癒師の人は凄い腕前らしいから。それに、今も全然痛みを感じないしね」

「そ、そうか」


先ほどの発言が嘘のように心配してきたバットムは、俺の言葉を聞いて心底安心した表情をする。

こんな風に口では色々言ってくるけど、内心では俺の事を凄く心配してくれているのが分かる。

そんなバットムに別れを告げて、診断待ちの村人が居なくなった治癒師の元へ行く。


「あの・・・」

「はい、どうしました?」


そう言って笑みを向けてきたのは、白いローブを着ている小さな女の子だった。

その顔はフードをしているため分からないが、口元から察するにかなり若い。


「えと、オークとの戦闘で負った怪我を治してもらったと聞きました。ありがとうございました」


頭を下げるとすぐに言葉が返ってきた。


「気にしなくていいんですよ。私の仕事は傷ついた人の回復ですから」


治癒師の女の子の笑みは可愛らしい笑みだった。

・・・口元しか見えないけど。


(この女の子一体いくつだ?各国を旅するにしては若すぎる気がするんだけど・・・)


その見た目と騎士というギャップに女の子の年齢が気になってしまう。


(き、聞きたい・・・。けど女性に年齢を聞くのは失礼だ・・・)


そうして俺が葛藤している間も女の子は笑みを浮かべている。

少しの間葛藤していると、体に衝撃が来る。


「エーク!」

「うお!」


妹のリズが飛びついてきたのだ。


「ど、どうしたリズ?一人で出歩いちゃ危ないだろ?」

「エークずっと帰ってこない!だからエークが悪い!」

「ん?んん・・・?」


リズの、意味がわからない理由に頭を捻る。


「と、とりあえず離れようかリズ。これじゃ動きにくいからさ、な?」

「やだ!」


俺からの提案にリズは首を振り俺から離れようとしない。


(こ、困ったなぁ・・・)


リズをどうしようか悩んでいると治癒師の女の子が話しかけてくる。


「あの・・・私はもう戻ってもいいでしょうか?」

「あ、ああ!すみません、大丈夫です!ありがとうございました!」

「いえ、それでは」


治癒師の女の子はそう言って立ち去ってしまった。


(結局、聞けなかったなぁ・・・。でも案外これでよかったのかもね)


そうして開き直ると、リズを抱きかかえて帰り出す。

ティアーツさんと結構話していたため、既に夕刻である。


(こんな時間に昨日の今日で、リズは何をしているのやら・・・)


そのリズは、抱きかかえられてからご機嫌である。

この後、母さんたちに怒られることを考えると可哀想であるが、自業自得である。


(しっかりと反省しろ、我が妹よ)


暗くなっていく空を見ながら、リズがしっかり反省してくれる事を祈った。

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