表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

新しい生

「おぎゃあ!」


(なんだ?赤ちゃんの声が聞こえるぞ?)


「おぉ・・・おお!メリア!遂に生まれたぞ!」


(誰だ?喜んでるのか?)


「ハァ・・・ハァ・・・男の子?女の子?」


(今度は女性の声だ。疲れているのか?)


「男の子ですよ。メリアさん」


(もう一人いた。少し妙齢の女性の声っぽい)


「早く・・・顔を見せてください」

「えぇ・・・どうぞ」


体が少し温めのお湯で洗われる。


(ん?洗われる?・・・へ?)


視界が少しづつ見えてくる。

少し妙齢の女性が俺の体を優しく洗ってくれている。

視界の端に見えた手は、まさしく赤ん坊の手であった。


(へ?・・・ちっさ!)


その大きさに驚きながらも思い出す。


(はっ!・・・そ、そうだ!俺、転生したんだ!思い出したぞ!)


丁度、記憶を思い出したと同時に俺の体が妙齢の女性からベッドで横になる女性へと渡される。

その女性は優しく俺に触れると話しかけてくる。


「やっと・・・やっと、生まれてきてくれたのね」


ぼやけた視界の中で見える女性の顔は嬉しそうに微笑んでいた。


「お、俺にも見せてくれ」


先ほど喜びの声をあげていた男性が近くに来た。


「おぉ・・・これが俺たちの子どもか」

「そうですよ。貴方が欲しがっていた女の子じゃなくて残念ですか?」


男性は首を振る。


「いや、そんなわけあるか。男だろうと女だろうと、生まれてきてくれた大事な子だ。嬉しくないわけがない。」

「フフッ・・・名前は、あの名前で決定ですか?」

「あぁ、俺たち二人で一生懸命考えた名前だ。きっとこの子も喜んでくれる」

「そうですね・・・」


二人共嬉しそうに、本当に幸せそうに微笑んでいる。

女性が話しかけてくる。


「フフッ・・・この名前は、パパとママが一生懸命考えた名前だから気に入ってくれると嬉しいな」


そう言って口にする。

俺の、二度目の人生の名前を。


「貴方の名前は――――」


そこで俺は意識を失った。








「エリックー!ご飯よー!」


母さんが家の中から呼んでくる。


「はぁーい!」


俺は元気な返事を返し、家の中へと入っていく。

家の中では母さんが、ご飯をテーブルの上へと並べていた。


「ママ!何か手伝うよ!」

「そう?それじゃあ、これを運んでもらおうかしら」


そう言って、黒いパンが入った籠を渡される。

それをテーブルへと持っていくと、丁度父さんが帰ってきた。


「ただいまー」


その声に二人で出迎える。


「お帰りなさい。ご飯出来てますよ」

「お帰りー!パパ!」

「おう。ただいま、メリア。エリックも。直ぐに食べよう」


そう言って三人でテーブルへとつく。

今日のお昼ご飯は、野草のスープと黒パンである。

何故、このような質素な食事かというと俺の住んでいる場所に理由があった。





あの時、気を失った俺が次に目覚めたのは少し成長した後だった。

年齢でいえば3~4歳程である。

それまでの記憶はどうなったのかというと、しっかりと記憶していた。

その記憶のおかげで、自分の周囲について知ることができたのだ。

自分が住んでいるのは、どうやら村らしく、周りを森に囲まれている。

家族は、母と父、そして俺の三人家族で、母は金髪を肩よりちょっとだけ長く伸ばしており名前はメリア、父は茶髪を短髪にしており名前はダリルと言うらしい。

出産の場にはもう一人女性がいたが、あれは近所に住んでいる出産経験のある人だったようだ。

父のダリルは冒険者だったようで、昔、この村に助けられた際に恩義を感じ、村娘のメリアと結婚した後は、この村に住みながら周辺の安全確保に努めているようだ。

そして、俺はエリックという元気な男の子になっていた。

髪の色は、母の金髪ではなく父の茶髪を継いでいるが、少し黒に近い茶髪である。

目の色は、父の茶色い瞳ではなく母の碧眼をきれいに継いでいた。

これには髪色が自分と同じじゃない、と落ち込んでいた母も喜んだようだ。

その母だが、村娘にしては言葉遣いが丁寧である。

当初は俺も疑問に思っていたが、どうやら母の両親は娘に恥ずかしい思いはさせたくないと、結婚する際に言葉遣いを直させたらしいのだ。

ダリルなら気にしなさそうだが、メリアの両親は気にしたのだ。

その結果、村娘でありながら言葉遣いが常に丁寧になったようだ。






それから4年程たった今、ご飯を食べ終えた俺は一人畑を眺めながら悩んでいた。


(力・・・わかんないなぁ)


そう、エリール様に貰った力がわからないのだ。

基礎知識は意識を取り戻すと同時に頭の中に入っていたが、力がどうしても確認できずにいるのである。


(知識によると、普通は10歳になると教会へと行って、自分の情報を教えてもらうみたいだけど、10歳って・・・。あと2~3年待たなきゃいけないのかぁ・・・)


教会で情報を教えてもらうと、特殊な力を持つ者はその使い方が頭に入ってくるらしいのだ。

そう考えると力を持たない者はどうなるのか?

そういう者は、自分の適性の職について教えてもらえるらしい。

ところで、先ほどから言っている教えてくれるというのは、神託のことである。

流石に教会の聖職者でも、他人の情報を知ることは出来ないということだ。


「おーい、エリック!もう日が暮れるぞー!」


そんな風に考えていると、畑仕事から帰る人が呼んできた。


「あ、はーい!ありがとう、おじちゃーん!」


そう言うとおじちゃんは片手を上げて答えてくれた。

それを見たあと、急いで家へと帰る。


「ただいまー!」


さて、お手伝いでもするかな。






「お休みなさーい」


そう言って自分の部屋へと向かいベッドに横になり毛布に包まれる。

何故、村人であるにも関わらずこの年で自分の部屋があるのか。

理由は簡単である。

母と父の夜の営みである。

自分も驚いたがあの二人は、母が24、父が26なのである。

少なくとも自分を生んだ時には、母は16~17歳、父は18~19歳なのである。

日本だと成人にもなっていないのに、結婚して子をなしたのである。

さすが異世界だと思わざるをえない。

ちなみに、この世界では15歳から成人である。


と、こんなことを考えている場合ではない。

自分にはやるべきことがあるのだ。

そう、魔法である。

異世界といえば魔法であり、エリール様もこの世界には魔法があると言っていた。

それに、しっかりと頭の中の基礎知識にも魔法についての知識がある。


魔法とは、生命が体内に持っている魔力を消費して起こす現象などを魔法という。

有名なものは、火球や水球などである。

この火球や水球は、自分の魔力を体外へと放出する際に、只の無である魔力を他の属性へと変化させて具現化させているのだ。

その具現化には、想像力などが必要で魔力をどの属性に、どんな魔法へと変化させ、どのような能力や効果があるのかまで考えなければいけない。

大体の人間は、詠唱を用いてそれらをカバーしている。

詠唱は長い年月を掛けて作られたもので、人々の頭にはその詠唱がどのような属性を持ち、どんな魔法で、どのような能力や効果があるのかが、刷り込まれている。

そのおかげで多くの魔法を使う事が出来るのだという。

それに、詠唱を用いれば無詠唱よりも威力が上がることも、多くの人間に使われる理由である。


しかし、魔法の才能を持っていれば詠唱は必要ない。

才能を持っていれば無詠唱でも詠唱より高い威力を出すことが出来るのだ。

その才能は、生まれた時に持っているかどうかで決まる。

後天的に手に入ることはないのだ。

才能は別に魔法だけのものではなく、剣術や武術、交渉術など多くの分野に存在する。

恐らく俺も、何かの才能を持っていると思う。

なぜなら、転生する前にエリール様が、戦うための才能を与えると言っていた気がするからだ。

それを確認するためにも早く教会へ行きたいのである。

教会では、情報を教えてもらう時に、自分に才能があるのかも教えてもらえるという。

適正や才能、特殊な力など、それらを多くの人間に教えていかなければいけない神様も、なかなかに大変である。


と、話が逸れてしまったが自分が今から行うのは魔法である。

しかし、魔法と言っても火球や水球を出すわけではない。

無属性の魔力を利用した技術の向上である。

本来ならば体外に放出すれば消えてしまう魔力も、頑張ればそのまま使用できるのではないか、と考えたのだ。

そうやって無属性の魔力を扱えるようになれば、魔法の威力なども上がるのではないかと考えている。

そのための特訓を毎夜しているのだが、これといって手応えがない。

いつも魔力が底をつき、倦怠感と共に意識を手放して眠ってしまうのだ。

底をついたからといって、魔力量が増えたかと聞かれてもわからないのである。

基礎知識にもそんな知識はないのだ。

だが、今日も諦めず魔力を放出し続ける。

そもそも、魔法を具現化するための明確な方法も、教会で教えてもらうのだから放出しかできないだけである。


(早く教会に行けないかなー・・・)


そう思いながら魔力が底をつき、倦怠感と共に意識を手放すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ