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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
お伽話殺人事件
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第十一話 真実を暴け

 木更図一樹は、真実を明らかにすると決めた。

姉を殺された塩瀬海のためにも、仲間のためにも、そして殺人容疑を

かけられた自分のためにも。

 そして、大事なはずの静を告発してくれたノール・フェイトンのた

めにもだ。

 きっと、ノールは静を止めて欲しいのだろう。

一樹達にこれ以上彼が殺人を犯すのを止めて欲しいのだ。

 だから、あえて口にしたのだろう。

静はノールといつも一緒にいたように思えたが、実はそうではないと

分かった。

 女将である夢都小夜の証言もあり、静ならば毒を混入される事は出

来たと知った。

「私に考えがあるんです……」

 どこかぎらり、とした光を瞳に宿した海が口を開いた。

一樹達は彼女の言葉に耳を傾ける。そして、彼女の覚悟を感じ取って

危険と知りつつも頷く事にした――。


 その夜、海は部屋で一人眠りについていた。

すやすやと安らかに。鍵はかけてはいない。

 と、その扉を押し開けて何者かが侵入した。

海は気づいていない。やがて、男らしきその人物は周りを見回すと

きらりと光る刃物を取り出した。

 眠りにつく少女の胸元へと振り下そうとした、その時。

「――今です!」

 眠っていたはずの海が、きっと男を睨みつけ目を開いた。

ぎょっとなった男の手元が狂い、刃物は枕を傷つける。

「動くな!」

 飛びかかったのは、大地だった。反対側から一樹も飛び出し、

男を取り押さえる。

「もう逃げられないわよ!」

 千鶴が電気をつけ、その場が明るくなる。

当の犯人は、やっぱり美香山静だった。

「静……やっぱりお前が……!」

 ノールが悲しそうな声で言う。静の顔には表情がなかった。

ただ冷たい諦めたような感情が浮かんでいた。

「いいえ……その人は美香山静ではないわ!」

 ノールがさらに静を詰問しようと口を開きかけた、その時

だった。鋭い海の声がその場に響く。

「やっと見つけた……あなたが『あいつら』の一員だったのね

……!」

 静へと指を突きつけながら、海はなおも言った。

くっ、と静が嘲るような笑みを浮かべる。

「やっぱり……あの時の被害者か。どこかで見たような気がし

ていた……」

「そうよ……私は『あの時』の被害者の娘……! この時を

……ずっと待っていたわ『uranusu』!」

 訳が分からない、と言った様子の二人以外の全員を見回しな

がら海はなおも口を開いた。

「こいつらは……私達から大切な母様を奪った!」

「なっ……!? シエーラはすでに死んでいたのか!?」

 ノールが海に駆け寄ろうとした。が、その冷たい瞳を見てし

まいぴたりと足を止める。

「シエーラは――母様は――、あんた達にはめられて死んだの

よ!」

「違う! 母様はシエーラを探していた!! 俺だって……」

 海は嘘よ、と呟いた。一瞬よろけそうになったものの、青い

顔をしたまま踏みとどまる。

「シエーラを追いだしたのは、メイド頭の独断なんだ! あな

た達の母様とうちの母様は仲がよかった!」

 周りの人達のよく分からない、という感情をようやく理解し

た様子で海は説明を始めた。

 母シエーラはフェイトン家のメイドで、フェイトン家の今は

亡き当主との間に子を設けた。

 それが、海と汀の二人であるらしい。

つまり、ノールとは腹違いの姉弟という事だ――。


 ノールは母ラビィニアはずっとシエーラとその娘達を探して

いたと言った。無論、父アランもそうだと。

 しかし、海はそんなの信じられないとつっぱねた。

母シエーラは追い出されたし、それ以来何の支援もないままに

自分達は二人だけで成長して来たと。

「それに……この事は今はどうでもいい。私はあなた達を憎ん

でいる訳じゃない。憎んでいるのはただ一人……あんたよ」

 再び海の指が静――否、静に変装した人物へと向く。

くっ、とそいつが口元を歪めたのが一樹達には分かった。

「気づくのが遅かったようだな……。誰がなんと言おうと、

このままお前を殺せば『シナリオ』は完結する」

「いいえ! 『シナリオ』は完結なんてしない! 絶対に!!」

 静に扮した男は訝しげな顔になった。まだ、自分の勝利を

確信していて、この女は何を言っているのかと思っている様子

だ。

「だって……私は海じゃない。姉の『汀』よ!!」

 その場の全員が凍りついた――。



 復讐に燃える妹、大切な家庭教師を告発する事に苦痛を感じつつも、

耐えるノール。真実を暴こうとする一樹達。

 そんな彼らを中心に書かせていただきました。

ラストで秘密が明かされます。

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