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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
お伽話殺人事件
33/35

第九話 ~再び殺人事件~

 木更津一樹は強くなろうとした。いつまでも、悩んでばかり

では駄目だ。

 仲間のためにも、自分は簡単にやってもいない罪を認める訳

にはいかないのだから。

 そうは言っても、日方青の尋問はそれからも続けられた。

前のように陰湿でないだけに、達が悪いとはいえよう。

 でも、彼は真実を解き明かしたいだけなのだ。

「日方さん……俺は本当にやっていないんです。人なんか、殺

した事はないし、これからも殺す予定はありません」

「だが、あの事件は君にしか出来なかった! だから、君が犯

人としか僕には思えないんだよ……」

 言い合いは白熱した。一樹は犯人とは絶対に認めたくないし、

日方青は一樹を犯人として疑っていない。

 お互いに相手の言う事を聞いていない訳ではなかった。

でも、お互いの信じる事が違うからそもそも終わる訳がない。

 結局、一樹は自分を犯人だと嘘の供述をする事はなかったし、

日方青は一樹が犯人だと断定する事も、犯人ではないと認める事

もしなかった――。



「一樹!」

 今日も迎えに来てくれたのは千鶴だった。

恋人でもないのに、少し申し訳ないと思う一樹であるが、もしそ

れを口に出したならば、友達なのに水臭いと彼女は怒るだろう。

「今日もお疲れ~、まだ疑われてるのね……」

「俺以外に出来なかった、って言われると言い返せないからな

……俺も簡単に認めたくはないけど」

「何度も言うけど、認めたりしたら許さないからね。一生!

 一生だから!」

 気弱な発言をたしなめるように、千鶴は一樹を睨みつけた。

分かってるよ、と一樹は肩をすくめる。

 申し訳ないと思いつつ、一樹はいつも助かっていた。

彼女の力強い言葉と、一切疑う事ないその強い瞳に。

「ほら、元気出す! 朝ご飯食べに行くよ!」

「ちょっ、痛い痛いってば千鶴!」

 背中をばしばし叩かれて一樹は思わず顔をしかめた。

千鶴は意に介さず、早く来る!と怒鳴るように言う。

 いい奴だけど、彼女にするにはちょっと厳しい子かもしれ

ないと一樹は思うのだった――。



「お、一樹お疲れ~」

 すでに席についていた北原大地が手を振った。

いつものように、美香原静がぺこりと頭を下げ、ノール・フェイ

トンが何事か言いたげにこちらを見ている。

 でも、一樹が目を向けるといつも目をそらすのだった。

自分はお前など見ていない、とばかりに。

「大地……ちょっと」

「何だよ?」

「二人になれないか? 話がある」

「え~、何だよ~。はっ、告白かっ!? 駄目だ駄目だ俺には

千鶴という可愛い彼女が……」

「茶化すな!」

 思わず怒鳴りつけてしまった。ただの冗談だよ、と大地は肩

をすくめる。

 こんな事くらいでは、気を悪くする事もないいい奴なのだ。

いい奴だからこそ、一樹は時に気が咎めたりしてしまう。

「来てくれよ、話がしたいんだ」

「ちづ達と一緒じゃ駄目なのか?」

「駄目だ」

 さすがに少し考え込んでしまったのか、しばらく大地は黙っ

た。

 やっぱり怒ったのか、と一樹は心配になったけれど、すぐに

大地からの返事は返った。

「分かったよ、そこまだ言うなら二人になろう」

 千鶴がブーブー文句を言っているのを尻目に、大地と一樹は

二人で部屋を出て行った。

 ノールはつまらなそうにしていたけれど、静に止められてつ

いて行くのは止めたようだ。

 一樹は少しほっとしながら、訝しげに黙り込んだ大地と共に

歩いて行った――。



 しばらく一樹は黙っていた。大地の方も、一樹が話すのを待

っているのか口を開かない。

 少しだけ迷っていた。でも、言わなければと思う。

「大地……」

「なんだよ、ちづ達の所に早く行きたいし、早く言えよ」

「――もう、俺に優しくしない方がいいよ」

「……はぁ? 何でだよ!?」

 やっぱり怒った、と一樹は肩をすくめた。

その態度にさらに火を注がれたのか、大地は一樹の胸倉を掴み

上げながら怒鳴りつける。

「ふざけんな! 何でそんな事言いやがるんだよ! お前が犯

人だからとか抜かしやがったらぶん殴るぞ!!」

「――そんな事言わないよ」

 ちょっと苦しかったけれど一樹は構わず続けた。

「ただ、少し疑問なんだ。何で、大地は俺に優しくするんだよ

……? お前の彼女……千鶴に優しくしてもらってるし怒って

遠ざけたっていいくらいじゃないか」

「何でそんな事する必要があるんだよ? 俺は、千鶴の事も一樹

の事も大切だ。それに、俺は一樹を信じてる。絶対に犯人じゃな

いし、千鶴によからぬ想いは抱いてないってさ」

「大地……」

 一樹は自分でも痛いくらいに拳を握った。本当に自分は、いい

友人を持ったと心から思う。

 自分が同じ立場だったら、大地に同じ事を言えたかどうかわか

らなかった。

 いや、きっと言えなかっただろう。

「一樹……行こうぜ。ちづ達が待ってる」

「うん……!」

 少し怖いという想いもあった。もちろん、千鶴を好きになって

しまうかも、という想いではなく大地の友情をいつしか失ってし

まう事だ。

 自分はずっとその事に怯えていたのだと思う。

「ほら、急げよ」

 大地の差し出した手を、無言で一樹は握った。

にっ、と笑いかけてやると大地も笑い返す。

「きゃあああああっ!」

 そんな和やかな雰囲気を壊したのは、少女の悲鳴だった――。

 いつしか大地との友情が壊れてしまうのではないか、と

怯えてしまい遠ざけようとする一樹。

 しかし、大地は見事一樹との友情を守ってみせましたね。

なんだか私の手を離れて大きく成長してしまった気分です

よ。

 悲鳴の主は? 一体何があったのか!?

次回もよろしくお願いします。

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