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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
お伽話殺人事件
32/35

第八話 ~仲間がいるから頑張れる事がある~

 どうすればいいんだろう、と木更津一樹は思った。

ふらつくように部屋を出て歩き出す。

 結局、自分がやったとは言わなかったけれど、真剣な日

方青の言葉が胸に痛かった。

 自分はやっていない。でも、やったと頭から疑ってかか

られると自分でもやってしまったかのように錯覚してしま

う事がある。

 いけないと、分かってはいるけれど。

「……一樹」

 ぐいっと腕を引かれてうわっ、と一樹は思わず声を上げ

てしまった。

 振り向くと、そこにいたのはむぅっと頬を膨らませた斉

藤千鶴だ。

「ち、千鶴? どうしたんだよ?」

「今度は、絶対に認めちゃ駄目だからね! 皆、一樹の事

信じてるし、その事を裏切らないでね!」

「……ぅ」

 ぎくり、となって一樹は黙り込んだ。

今回は簡単に認める気にはなれなかったけれど、以前やっ

てもいない罪を認めて皆を心配させた事があったのである。

 そういえば、八乙女瑠美奈を名乗った少女――ファントム

も演技かもしれないが、心配していたのだ。

 彼女は今、どうしているのだろうか、とか考えてしまい慌

てて首を振った。

 彼女は事情があるかもしれないけれど、桃香の仇なのだ気

になってはいけない――。



「一樹、ご飯食べに行こう?」

「あ、うん、そうだな……」

 ぐいぐいと千鶴に腕を引っ張られ、一樹は食堂へと向かう

事にした。まるで、見張るかのようにじぃっと睨むように見

て来るのが少し居心地悪い。

 まるで、ではなくて完全に見張っているのかもしれないが。

「ちゃんと食べなきゃ駄目だからね?」

「食べるよ……子供じゃないんだからさ」

 すねたように呟くと、ようやく千鶴はいつものようにから

かうような顔になって子供でしょ、とつついた。

 あえて無理している節もあったので、千鶴も子供だろ、と

わざと子供っぽく返す。

「お~い、一樹! こっちこっち!」

 と、手を振っているのは北山大地だった。

ノール・フェイトンと美香山静もいる。

 気を使わせてるな、と一樹は胸が少し痛くなりながらも嬉

しかった。

 認めてはいけない、と思う。今度こそ、脅されても何をさ

れても自分は彼らの想いを裏切ってはいけない。

 特に、千鶴や大地の事は一度裏切ってしまっているのだ。

「ありがとう、大地……ノール、静さん……」

「友達だろ、今更何だよ!」

「べ、別に心配してた訳じゃない……僕は」

「素直じゃないですね、お坊ちゃんは」

「静! うるさいぞ!」

 一樹が思わず泣きそうなのをこらえてお礼を言うと、大地

は友達だろと肩をばしばし叩き、ノールは恥ずかしそうに赤

くなって素直じゃない発言をしていた。

 静がくすくすと笑ってノールに抗議されている。

「まあまあ、ケンカしてないでともかくご飯食べようぜ」

 大地になだめるように言われ、しかも一樹には呆れたよう

な顔をされて彼はふてくされたようにチョコチップの入った

丸いパンにかじりついていた。

 静も素知らぬ顔で、砂糖もミルクも入れていない紅茶を音

も立てずに飲んでいる。

「ほら、いろいろ取って来たからさ、一樹も食べろよ」

「そうだよ、ほら食べる食べる!」

 食べろ食べろと勧められたので、まあお腹も減っていたの

で一樹は並んだ料理の内からバターの塗ったパンを選んで頬

ぼった。

 途端に、目の前にいるメンバーがほっとしたような顔にな

る。やっぱり気を遣わせていたんだな、と一樹は思わず思っ

たのだった――。



 どうぞ、と熱いコーヒーの入ったカップが差し出された。

静が淹れてくれたようだ、彼にまで気を遣わせているのか、

と一樹は少し自分で自分に苦笑する。

「ありがとう、ございます……」

「いえ、元気がなかったように見えたので。まあ、無理も

ありませんが」

「もう、大丈夫です……」

 一瞬、静の目が痛みを含んだような物になった。

何故、この人はこんな顔をするのだろう、と一樹は驚く。

「静、さん……?」

 はっとなったように静の表情が変わった。

しかし、次の瞬間にはにこりと微笑むと一樹の頭を子供に

やるようにぽんぽんと軽く叩いた。

 まあ、静から見たら一樹はまだ子供なのかもしれないが。

「坊ちゃんも元気がないですからね……」

「すみません……」

「あ、あなたが謝る事ではないですよ。あなたが悪い訳で

はないのですから」

「そ、そう、ですね」

 ふと周りを見ると、責めるように大地と千鶴とノールが

自分を睨んでいた。そうだ、と一樹は思う。

 自分は人を殺してなどいないし、何も悪い事はしていな

い。堂々としていればいいはずだった。

 たとえ、よからぬ疑いをかけられたとしても。

「そ、そんな目するなよ。大丈夫だってば……」

「「「怪しい……」」」

「三人同時!? 静さん笑わないでくださいよっ」

 同時に怪しいと言われて一樹は慌てたように叫んだ。

静がおかしそうに笑っているのでむっとなる。

「簡単に諦めるのは良くないですよ。応援しています」

「ありがとう、ございます……」

「私の知り合いに、女の子が一人いるんですけれどね? 

諦めなければ何でも出来るというのが持論なんです」

「す、凄い子なんですね」

「ええ、凄い子です。強くて負けず嫌いで、そして簡単

には諦めたりしない意思を持っています」

 そう言えば、この人とこんなに話した事など一樹はな

い気がした。厳しい人に見えたけれど、本当はいい人な

のかもしれない。

 逃げない、と一樹は思った。もう二度と逃げたりなん

てしない。

 静さんの言っていた少女のように強くありたい、と思

った。だって自分は一人ではない。

 ここには、自分の仲間がたくさんいるのだから――。


 久々の投稿でした! 何だか最近キャラクターが熱く

なってきている気がします(笑)。

 だんだんと一樹達も成長しているのかもしれませんね。

決意していく一樹のその後をぜひ見てやってください!

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