表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
悲月殺人事件
18/35

第十七話 ~第三・第四の事件の真相~

 木更津一樹は、斉藤千鶴、北原大地、

大江川大五郎、渚竜也、そして八乙女

瑠美奈だけがいる食堂で真相の解明を

話していた。

 千鶴達は真剣な顔で話を聞いている。

竜也は憎々しげに瑠美奈を睨みつけ、

瑠美奈はただ黙ってうつむいていた。

「あの事件、まだ殺害に使われたと思わ

れる、凶器が見つかってなかったです

よね……?」

「ああ……」

 一樹の問いに大五郎が困惑したような

顔で告げる。

 もう、瑠美奈が入れたカモミールティー

には誰も口をつけようとはせず、温かかった

紅茶はアイスティーと化してしまっていた。

 気分を落ち着かせるためか、瑠美奈だけが

青ざめた顔で自分の分を飲み干す。

「……千鶴」

「ようやく、あたしの出番ね!」

「あっ……」

 一樹に名前を呼ばれた千鶴が、瑠美奈の部屋

から取って来て隠していた、赤いシミのついた

タオルを取り出した。

 瑠美奈が、千鶴を睨むように視線を向けるが

千鶴は無視している。

「これが、一体何だって言うんだ!」

 苛立ったように竜也が怒鳴る。

しかし、一樹は静かな顔で、このシミ、何かに

似てませんか?と告げた。

 瑠美奈は黙ったまま彼らをただ見つめている。

「色がかすんでしまっているが、血、に見えるな」

「そう、これは血です。性格には、睦咲さんの、ね」

「莉子、の……?」

 大五郎が目を細めながら呟いた。

一樹の言葉に竜也の声が微かに震える。

 大五郎は、何故タオルになど血のシミがついている

んだ、と怪訝そうな顔になっていた。

「それは、これが睦咲さんを殺害した凶器だからです」

「馬鹿を言うな、タオルで人が殺せるはずがない

だろう?」

「今の状態では殺せません。ですが、水で濡らして凍ら

せたような状態だと、どうでしょうか」

 一樹が大地、と声を上げた。やっと俺の番だな!と嬉し

そうな声を上げた彼が、カチカチに固まってまるで先の

部分が槍のように尖ったタオルを取り出した。

「……瑠美奈ちゃん、君は昨日言ったよね? 熱いお湯が

苦手だから、体は冷水で洗い、室内の温度はクーラーで下げ

ているから氷が解けなくて、凍ったタオルで怪我を

したって……」

「は、い……」

 瑠美奈は蚊の鳴くような声で発言した。

一樹はそれを悲しそうに見つめながら続ける。

「こうやって、瑠美奈ちゃんは夏でもタオルの氷が解け

ないようにして、睦咲さんを殺したんだ。その後は、お湯

でもかけるか、室内の温度を上げれば、氷なんてすぐに

解ける」

 もう、瑠美奈は私は犯人じゃない、とは言わなかった。

悔しそうな、困ったような、そんな顔をしているだけ

だった――。



「――そして、第四の事件、事故に見せかけて、瑠美奈

ちゃんが葉月さんを殺した事件の解明をします」

「葉月さんも、あの子が……!?」

 桃香と莉子と弥生が殺された事件の事は知っていたが、

葉月が殺されたとは知らない千鶴がぎょっとなった。

 大地も、葉月のために泣いていた瑠美奈の事を思い出した

のか、恐ろしそうな表情で瑠美奈を見つめている。

 瑠美奈はただ顔を手で覆い、肩を震わせていた。

泣いているのだろうか、その表情は一樹達にはうかがい知れ

ない。

「まずは、これを見てください」

 一樹が取り出したのは、真相を話す前にこっそり撮りに

行った、壊された吊り橋の写真だった。

 竜也はもう莉子殺しの真相が分かったからか、うつむいて

何も語らず、大五郎が眉をひそめる。

「ただの、壊れた橋じゃないか。こんな物を見て、一体何に

なると言うのだね?」

「ええ、これだけでは、何も分かりませんよね? 次に、

こっちを見てください」

 続いて、一樹が取り出したのは刃物で切られた痕跡の残る

ロープと、刃物で傷つけられた窪みのある部分の写真だった。

 これは……、と大五郎が目を見開く。

「そう、この橋は、自然に壊れた訳ではないんです。瑠美奈

ちゃんが、刃物を使ってロープを切り、そして見た目にはまだ

橋がかかっているかのように橋を繋ぎ合わせておいたんです」

「……!」

 もし、自分が橋を渡っていたらどうなっていたのか。

その事をつい想像してしまったのか、大五郎は青ざめていた。

 きっと、渡っていたら葉月同様死んでいたはずだった。

「この橋を渡って、葉月さんは死にました。つまり、事故でも

自殺でもなく、他殺です」

「あのメイド、犯人ではなかったのか……!」

 竜也は、葉月を犯人扱いした事を後悔しているのか、痛みを

含んだような目を虚空に向けた。

 『ハチノツキ』。そのダイイングメッセージから、葉月を

犯人扱いしたのは竜也だ。

「じゃあ、ハチノツキというのは……?」

「瑠美奈ちゃんの事です。瑠美奈ちゃんの苗字にも、八の言葉が

入っているでしょう? 睦咲さんは、イタリア語を勉強していた

から瑠美奈ちゃんの名前にもあるイタリア語で月を示す言葉、

『ルナ』をそのまま月として表現しようとして書いて、瑠美奈

ちゃんに利用されたんだ」

「そう、だったのか……」

 大五郎が悔しげに拳を握りしめる。

昔ながらの警察官といった様子の、いかにも頭が固そうな大五郎は、

イタリア語など知らなかったのだろう。

 一樹は、いまだただ震えている少女に声をかけた。

「……瑠美奈ちゃん。泣いていないで、答えてくれ。君は、何故、

桃香や葉月さんや弥生さんや睦咲さんを殺したんだ?」

「……」

「俺達には、それを聞く権利があるはずだ、答えてくれ。俺と渚

さんは恋人を殺されたし、大地と千鶴は大切な友達を殺され

たんだ。どうしてそんな事をしたのか、俺達に話して欲しい」

 一樹は怒りに任せて問い詰めようととはせず、つとめて優しい

声と表情で瑠美奈に声をかけ続ける。

 瑠美奈は顔から手を下した。

しかし、垂らされた前髪が顔にかかりその表情はやはり見えない。

 それでも、わずかに見えた口元がくっ、と笑みを浮かべたのが

一樹達には見えた気がした――。



 第三の事件の武器、そして事故か

自殺に思われていた、葉月の事件も

明かされます。

 瑠美奈の目的は、何なのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ