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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
悲月殺人事件
17/35

第十六話 ~第一・第二の事件の犯人~

 木更津一樹は、真犯人が分かったからと、

全員を食堂へと集めた。

 斉藤千鶴、北原大地は言うに及ばず、大江川

大五郎、八乙女瑠美奈、そして今までずっと

部屋に引きこもっていたはずの渚竜也でさえも

姿を見せた。

 渚竜也はかなりやつれてしまっており、なん

だか痛々しい。

 しかし、恋人である女性を殺した真犯人が

気になるのか、目だけは異様にぎらついていた。

「一樹さん、真犯人が分かったんですね?」

 瑠美奈は真剣な顔だった。

まさか、自分が告発されるとは夢にも思って

いないのだろう、その表情はどこか無邪気にも

見える。

「犯人は、島原葉月だろう? 私だって忙しい

んだ、素人の推理なんて聞きたくないよ」

 大五郎は一樹を完全に小馬鹿にしたような

態度だ。

 千鶴と大地がムッとなったように睨みつけ

たが、彼は態度を改める気はないようだ。

「まあまあ、皆さんケンカしないでくだ

さいよ~。あ、私お茶入れますね」

 と、瑠美奈は一端台所へと引っ込むと、カモ

ミールティーを入れて戻って来た。

 一樹、大地、千鶴は何か入れたのじゃないかと

不安になったが、大五郎は美味そうに飲んでるので

恐る恐る口をつける。

 瑠美奈も少し笑って白いティーカップに口をつけ、

やはりというべきか竜也だけが手を出さなかった。

「犯人が誰かを教える前に、トリックから明かしたいと

思います。まず――第一の殺人ですね」

 瑠美奈の顔から笑みが消えた。

大五郎も、竜也も、千鶴も、大地も、真剣な顔になって

一樹に目をやる。

「どうやったんですか? 犯人は。どうやって、桃香

さんを殺したんですか……?」

 いつもの子供っぽい口調とはまるで違う、どこか静か

な口調で瑠美奈が聞いてくる。

 本当は知っている癖に、とつい思ってしまいそうに

なりながらも、一樹は口を開いた――。



「犯人は、木の幹にテグスのような物を巻きつけて、

桃香の部屋の窓の所に引っかけておいたんだ。そして、

桃香が窓を開けた途端、糸が切れて、テグスに渡されて

いたナイフが桃香に突き刺さった……」

 一樹はつとめて悲しみが顔に出ないようにしていた。

そうしていないと、感情的になって瑠美奈を詰問して

しまいそうだった。

「でも、それっておかしくないですか? この方法

って、桃香さんが窓を開けないと駄目ですよね?」

「だから、犯人は窓を開けさせるために細工もして

いたんだよ、瑠美奈ちゃん」

「――っ!」

 一樹がポケットから取り出した物に、瑠美奈は

ハッとなって息を飲んだ。

 さすがに、自分の荷物に仕舞われていた物なので

すぐに分かったのだろう。

「このカセットテープは壊れてるけど、犯人は

これにある人の声を吹き込んでおいたんだ」

「ある人、だと?」

「ええ。桃香の恋人――つまり、俺の声を、ね」

 瑠美奈は一樹を睨むように見つめながら黙り

込んでいた。

 今度発言したのは、いまだに一樹を馬鹿にしたような

目で見ている大五郎だ。

「瑠美奈ちゃん、君は、俺と桃香が会っている時こっそり

俺達の話を聞いていたね? だから、その時に録音したん

だ、俺が、桃香を好きと言っている言葉を。だから、その

言葉を聞いた桃香は、俺がこっそり会いに来たと思って

窓を開けたんだ」

「あっ、だから、あんな態勢に……!?」

 千鶴が、まるで愛しい人との抱擁を求めるように、不

自然な態勢で死んでいた桃香の事を思い出して声を

上げる。

 誰もが気になっていたはずだった。

何故、桃香がそんな態勢になっていたのかと。

 もちろん犯人である瑠美奈以外には、だが。

「……そんな事していません」

 瑠美奈は弁解するように言ったがその顔は青ざめて

いた。続いて、と一樹が声を上げる。

「俺にアリバイがないというのも、瑠美奈ちゃんが俺に

持ってきたコーヒーに眠り薬を入れたからなんだ。

だから、俺は大地に起こされるまで起きられなかった」

「証拠が、ありません」

 確かに、その件に関しては証拠はないのかもしれない。

もうその時使われた食器はもう洗われてしまい、眠り薬を

持ったという痕跡はなくなっているだろう。

 しかし、瑠美奈の肩は自分がやりました、とばかりに

震えてしまっており、一樹の言った事が正しいのでは、

という事をうかがわせた――。



「第二の事件は、弥生和彦さんが殺された事件

だったよね?」

「せん、せい……」

 一樹が再び口を開くと、ずっと言葉を発さ

なかった、竜也がぽつりと呟いた。

 まるで幼い子供のような口調だった。

「その犯人も、瑠美奈ちゃんだ」

「わ、私じゃありません……私じゃ……」

 ぎろり、と竜也の鋭い目が瑠美奈を向いた。

瑠美奈は、青ざめて顔を手で伏せてしまう。

 しかし、一樹の顔を真っ直ぐ向いて違う

とは言わなかった。

「弥生さんの体は、恨みを持っているかのように

切られていた。多分、瑠美奈ちゃんが憎しみを込めて

切り付けたんだ。そして、俺を呼び出して昏倒させ、

俺に罪をなすりつけた」

「ち、違うって……違うって言ってるじゃないです

かああ!」

 ついにバンッとテーブルを叩いて瑠美奈が叫んだ。

獣のように血走った瞳で一樹を睨んでくるが、一樹と

してもここで退く気はない。

「じゃあ、はっきりと言ってみてよ。俺と渚さんの顔を

しっかり見て、桃香も、弥生さんも、睦咲さんも殺して

ないって言って見せてよ」

「……っ」

 瑠美奈は、睨むように自分を見つめてくる二人の男に

視線を向ける事が出来ないようだった。

 一樹としても、一方的に断罪するのは気が引けるが、

早く自分が犯人だと名乗り出て桃香達を殺した理由が

聞きたかった。

 大五郎も、もはや一樹を馬鹿にしているそぶりはなく、

真剣な顔で瑠美奈を見つめていた。

 違う、私は、やってない、といまだ一樹とも竜也とも

目を合わさない瑠美奈の声が響く。

「――第三の事件の説明に移ります」

「……莉子っ!」

 竜也が哀しげな叫び声を上げる。瑠美奈はそれを痛ま

しげに見つめ、ただ唇を噛みしめていた――。


 ちょっと内容的に暗くなっちゃい

ました……。一方的に主人公達が

真犯人をいじめているように見え

る気もします。

 これからもどんどん真実が暴かれ

れていく予定です。

 事件の裏には意外な真実が待って

いますよ~。

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