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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
悲月殺人事件
16/35

第十五話 ~集まったカケラ~

 木更津一樹は、真犯人である八乙女

瑠美奈を告発するための材料を今日も

探していた。

 本当は告発したくなんてない。

だけど、これは彼女を救うためでもある

のだ。

 何故桃香を殺したのか、誰かを殺すに

至った動機は何なのか、ちゃんと聞いて

彼女を救って上げたかった。

 自分に、瑠美奈が救えるのはまだ分から

ないが。

「……桃香」

 ちゃんと事件が解決出来ますように。

祈るように、一度桃香の名前を呟くと一樹は

部屋の外に出た――。



 瑠美奈は今日も明るい笑顔でお早うござい

ます、と一樹に告げた。

 とても、人を殺したと思われる相手が浮か

べる笑みには見えない。

 ましてや、一樹の恋人を殺した相手には。

淡い金色の髪を揺らし、青い瞳で一樹を見つめ

ながら彼女は可愛らしい笑みを浮かべていた。

「あ、あの、さ、瑠美奈ちゃん」

「はい?」

 君は、本当に桃香を殺したのか。

――なんて、聞ける訳がなかった。

 一樹は悲しそうに黒い瞳を伏せる。

「なんでも、ないよ」

「変な一樹さんですね。……今日は、私と千鶴

さんが作るので楽しみにしててくださいね」

 さらに愛らしくにっこり微笑んだ顔さえも、演技

かもしれないとか、自分をだましているのではないか、

とつい思ってしまう自分が一樹はなんだか最近嫌に

なってくる。

 確かに彼女は桃香達を殺した犯人だが、何か事情が

あったのかもしれないのだ。

 やむにやまれぬ事情が……。

「一樹、おはよ~!」

「おはよ~!」

 そこに現れたのは、付き合う前と同じく一見ケンカ

友達のようにしか見えないが、その実、実はラブラブと

いう一樹の幼馴染のカップルだった。

 いつも明るいのでムードメーカーとして頑張って

くれている。

 本当は、彼らだって桃香を亡くして悲しいという

のに。

 斉藤千鶴と北原大地には、一樹は何度感謝しているか

しれない。

 あの二人がいなかったら、きっと一樹は桃香を亡く

した悲しみでおかしくなっていたかもしれなかった。

 時に厳しく、時に優しく接してくれた二人には何度

感謝しても足りない、と一樹は常々思っている。

 気恥ずかしいので本人達にはとても言えないが――。



 何はともあれ、問題は第三の事件の凶器だよな、と

一樹は思う。

 第一の事件と第二の事件の凶器はあるが、第三の

事件の凶器だけがないのだ。

 睦咲莉子の殺人事件の時の凶器だけが。

「一樹、先に食べちゃいなよ。片付かないじゃん」

 卵とチキンのサンドイッチを前に、集中せず考え事

ばかりしている一樹に千鶴の声が飛ぶ。

 慌てたように、一樹はサンドイッチを頬ぼり始めた。

ここに来ていない渚竜也以外は、皆美味しそうに

食べているのに一樹は気づく。

 大江川大五郎は、特に体が大きいせいか人一倍の

量をいつも平らげていた。

 彼も人の死を見てきているというのに、その旺盛な

食欲が衰えないのはさすがといえよう。

 渚竜也は、未だに恋人だったと思われる、睦咲莉子の

死が忘れられないらしく部屋から出て来ない。

 いつも、千鶴か瑠美奈のどっちかが自主的に食事を

運んでいるので、かろうじて死なない程度には食べて

いるらしい。

 食事を終えると、一樹は第三の事件について考える

ために外に出た。

 瑠美奈の邪魔が入らないように、大地や千鶴に

瑠美奈の相手をしてもらい、どんどん道を歩いて

行く。

 気が付くと、メイドの島原葉月が死んだ、今は

壊れている橋の場所までやってきていた。

「葉月さん……」

 一樹にはどうしても彼女が殺人犯とは思えない。

きっと、真犯人である瑠美奈に殺されたのだ、彼女も。

 橋は渡されていたロープがちぎれ、今は機能して

いない。

 どうやって事故に見せかけ殺したのか、と悩んでいた

一樹は無意識のうちに残っている木の太い棒に触れて

手を滑らせた。

「――いてっ!?」

 何かが刺さったような強烈な痛みを感じ、一樹は

びくっとなったように手を引っ込める。

 そこには何か窪みのような物が出来ていた。

まるで、ナイフでえぐったかのような。

 ハッとなって一樹が血がにじむ手でロープの部分を

持ち上げると、一部が鋭利な刃物で切られたような痕が

あった。

 自然に切れたのなら、もっと先がバラバラになっている

はずだが、ロープの先の部分は綺麗にすっぱり切られていた。

 事件が起こってからは、あの時の葉月以外は誰も橋には

近づいていないはずだ。

 一度大江川大五郎がここから出て行ったけれど、橋は危険

だからと別の道を通って行ったというのを一樹は聞くとは

なしに聞いていた。

「ロープに切れ目を入れて、他の部分と繋ぎ合わせておいた

んだな」

 一見ロープがちゃんとつながって見えるように、結んだの

だろうと一樹は思った。

 きつく結ばず、緩い結び方をしておけば誰かが橋に乗れば

すぐ解けるはずだ。

 こうやって、葉月を殺されたのだろうと一樹は

思った――。



 後は本当に第三の事件だけ。

どうやって、睦咲莉子は殺されたのか。

 あの血が付着していると思われるタオルには、

何の関係があるのだろうか。

「……一樹さん」

「うわっ!? 瑠美奈ちゃん!?」

 内部に戻った一樹は、血まみれの片手をした

瑠美奈の姿を見てぎょっとなった。

 瑠美奈は痛そうに顔をしかめ、青ざめた顔を

している。

「ど、どうしたんだい、その手は……」

「実は、恥ずかしながら昨日タオルをお風呂に置き

っぱなしにしちゃって、片付けようとしたら凍っちゃっ

てて尖った所で指を切ってしまったんです」

「凍った!? 今は夏だから、氷なんてすぐ解けると

思うけど……」

「私、熱いお湯が苦手だからいつも冷水で体を洗って

いるんですよ。暑くて気温もエアコンで下げていたから、

解けなかったのかもしれません……すみません、絆創膏

持ってませんか?」

 彼女はよく怪我をするな、とつい考えた一樹は

苦笑した。それから、そんな場合ではないと思い

直す。

 ポケットを探ると絆創膏が一個だけあった。

「あ、持ってるよ。はい、これ使って」

 外で怪我した箇所はそんなにひどくはなかったので、

もう血は止まっている。

 なので、一樹は瑠美奈に一つだけ残っていた絆創膏を

譲ってやった。

 そして、一樹はハッとなる。

(そうか、だからあのタオルには血が……! 同じ方法が取れ

れば、ひょっとして彼女を殺す事も出来たのかもしれない)」

 何かに気付いたように目を見開く一樹を、瑠美奈はどこか

冷たい表情で見ていたが一樹は全く気付いていなかった――。


 ついにカケラが揃いました。

次回、ついに一樹が瑠美奈を

告発します。

 トリック等も頑張って書いて

行きたいと思います。

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