タイトル未定2025/06/28 12:11
7話 シェルは誘拐犯?
市場でシェルとフローナが雑貨を見ていた時の事。
フローナが突然、警察官に話しかけられた。
警察官A「君!」
フローナ「え?」
警察官B「半妖に誘拐された女性がいると聞いてたけど君だね?」
フローナ「違いますけど・・・」
すぐ近くにいたシェルが出てきた。
シェル「え!?フローナ誘拐されたのか!?」
警察官二人がじ〜ッとシェルを見る。
シェル「あ、俺?」
シェルはフローナを担いで走った。
フローナは担がれたまま後ろから追いかけてくる警察官二人に向かって人差し指で目を下に下げ、ベーっと舌を出している。
シェル「こらこら、君が喧嘩売ってどーするの」
フローナ「なんか面白くなっちゃって笑」
シェル「あはは、いいことだ!」
少し離れた場所からメリサの声が聞こえてきた。
メリサ「フローナちゃーん!隊長ー!って警察官に追いかけられてるじゃないか」
レン「はぁ・・・何でこうあの人は次から次へと・・・」
コキア「走ります?」
レン「ええ」
タタタっと三人が走り出す。
メリサ「もー、隊長がいるとトラブルが絶えないよ」
レン「全くですね」
シェルとフローナ合流。
シェル「わりーわりー、なんか俺が誘拐犯ってことになったみたい」
レン「なったみたいじゃありませんよ、全く」
メリサ「フローナちゃん担いだまま走ってたら余計に誘拐犯だろ」
シェル「あ!そっか!」
レン「やれやれ・・・」
〜隊長の印象〜
レン「能天気の塊」
メリサ「元気!明るい!かな」
フローナ「太陽みたいな人」
コキア「キラキラ星人」
シェル「太陽とキラキラ星人って何だ??」
コキア「そのまんまの意味です」
フローナ「シェルって太陽みたいに眩しいから、コキア君のキラキラと似てるかも」
コキア「太陽もキラキラしてますしね」
フローナ「うんうん」
シェル「なんか今キュンってなったわ」
〜隊長らしさ〜
バサッと赤い鳥が屋根の上から飛び立った。
シェル「あ!!赤い鳥だ!」
レン「隊長ちょっとまっ」
ダダダッ!!
レン「はぁ・・・何であの人はいつもこうなるんだ・・」
メリサ「まぁ隊長だからねぇ」
フローナ「シェルらしいとゆーかなんとゆーか」
コキア(頷く)
〜暑さに弱い隊長〜
シェル「・・・」
フローナ「意外、シェルって暑さに弱いんだ・・・私も夏苦手だけど私以上だね」
メリサ「フローナちゃんもかなり弱い方だけど隊長は桁外れだよね」
レン「いつも夏本番はこんな感じです」
レンはペチペチっとシェルの頬を叩く。
レン「隊長、そろそろ起きて下さい」
シェル「一歩も動けない」
フローナ「シェルは人一倍体温高いし・・・可哀想・・・レンさん、いつもこう言う場合どうしてるんですか?」
レン「川か海にぶん投げますね」
川に到着。
レンとコキア、メリサの三人によって川に投げられたシェルは嘘みたいに元気になった。
シェル「おっしゃ水〜!!」
フローナ"凄い、ほんとに元気になった"
シェル「お前らも来いよー!」
レン「キラン✨」(メガネ光る)
レンさんは既に水着に着替えていた。
隊長に向かって走り出す。
ダダダッバシャン!!
シェル「!?おいっ!!」
レンが飛び込んだ水しぶきがシェルにかかる。
シェル「やりやがったなレン!!」
シェルがレンの肩を抱える。
2人は戯れ合っている。
フローナ「レンさんって意外と子どもっぽいとこあるんだなぁ、ふふふ」
メリサ「フローナちゃんも入るのかい?」
フローナ「はい、気持ち良さそうなので」
メリサ「じゃあ僕はコキア君とここで見てるよ」
フローナ「はーい!」
一通り遊び終わり、フローナが川から上がろとした時、足を滑らせた。
フローナ「わぁ!!」
シェル「!!危ねぇ!」
間一髪、シェルの胸にフローナがダイブする。
シェル「!!」
フローナ「ごめん、ありがと」
フローナは気にも止めずすったかたーと着替えに戻っていった。
レン「フローナさんケロっとしてましたね」
シェル「あいつは自分に魅力がないと思ってるとこが一番の欠点なんだよ」
レンは無言のままシェルの方にポンっと手を置いた。
〜金銭感覚〜
フローナ「ずっと気になってたんですけどお金どこから出て来てるんですか?誰も働いてる様子ないのに」
メリサ「いーい質問だフローナちゃん」
レン「隊長、自分をオークションに出したんですよ」
レンがシェルを腕を組んだまま人差し指だけで指差す。
フローナ「えぇ!?ほんとなの?」
シェル「ああ」
メリサ「ほんと無茶する人だよね」
シェル「人間相手なら逃げれる自信あったからな、金だけ奪って逃げた笑」
メリサ「それでもだよ!自分達の隊長がオークションに出されるなんていい気しないんだからね」
シェル「けどそのおかげで一生遊んで暮らせるじゃん」
メリサ「う、それ言われると反論できない」
レン「それだけじゃないでしょう?フローナさん、隊長は単にお金を奪って逃げただけじゃないんですよ」
フローナ「え?それはどういう・・・」
レン「相手はたまたま目の前にいた令嬢だったんですが、一目で隊長のことを気に入ってしまったんです、なんでもルックスが好みだったとかで」
フローナ「シェルかっこいいもんね」
シェル「え?そ、そう言われると照れるな」
レン「まだ話の続きがあるんですよ」
フローナ「なんですか?」
レン「最初は貴族達の間で3億、4億と値が上がっていったんです、
そしてついには8億に」
フローナ「凄い・・・」
レン「俺もその辺りで終わると思っていたんですが・・・この人、その令嬢に何て言ったと思います?」
フローナ「え、うーん、なんだろ?」
シェル「お姉さん、俺のこと買ってくれるよね?」
令嬢「12億!12億出しますわ!!」
レン「と・・・そして、その令嬢がお金を用意した瞬間、縛り上げてお金だけ奪って逃げたというわけです」
フローナ「うわぁ・・・」
レン「一番タチ悪いのは隊長なんじゃないかと思いましたね」
シェル「人身売買なんてやってる方が悪い」
メリサ「さすがに僕も呆れてものも言えなかったね」
フローナ「なんかとんでもない話を聞いてしまった・・・」
シェル「使えるもんは利用しないとね♪」
メリサ「ま、結局、その騒ぎに便乗して他の奴隷にされた人達も逃げれたみたいだけどね、本人にその気はなかったみたいだけど」
シェル「ぜんっぜんなかった!」
フローナ「それはある意味凄い・・・」
レン「この人、時々サイコパスなこと平気でやるから怖いんですよ」
フローナ「あはは」
〜シェルの血〜
街の人「ねぇ、あのトラックの運転手、様子変じゃない!?」
トラックに乗っている男は気絶してハンドルに突っ伏してしまっている。
メリサ「ちょ、やばくない!?」
フローナ「あのままだと民家にぶつかっちゃう!」
レン「あの男性、俺達が買ったたこ焼きの屋台の人ですね」
シェル「お前らはここにいろ」
レン「まさか1人で止めに行くですか!?」
メリサ「無茶だよ、何トンあると思って」
シェル「俺を誰だと思ってんだ?」
シェルは自信満々な笑みで走っていく。
街人「きゃあー!!人が轢かれる!!」
街人「何やってんだ危ないぞ!!」
シェルはトラックの前に飛ぶと全身を使って止めにかかる。
しかしトラックの重さにシェルの体は押される。
フローナ「シェル!!」
シェルは両足で踏ん張りながら止めに入る。
シェル「レン!コキア!タイヤを切ってくれ」
レン&コキア「「了解!」」
ザンッ!!
二人がタイヤを斬った。
トラックのスピードは弱まる。
シェル「メリサ!窓を撃て!」
メリサ「あいよ!」
バンッ!!バリィン!!
メリサの銃で割れた窓ガラスにフローナが入り込む。
中から扉を開けて男性をメリサと共に外へ救出した。
「今の見たか?」
「すっげー連携技だったよな!」
「うん!カッコよかった!!」
シェルはトラックの男を運び出すと病院へ連れていった。
男性「うぅ・・・」
シェル「おっちゃん、半妖の血で良けりゃ分けてやる」
男性「あぁ・・・頼む、妻をひとりにはできない・・・」
シェル「分かった」
男性は怪我をしていて血を流していた為、シェルが血を分けたのだ。
その男性の妻が駆けてきた。
妻「あの、本当にありがとうございました!ありがとうございました!あの何かお礼を」
妻は泣きながらお礼を言う。
シェル「良いよ礼なんて、これ以上ここにいたら騒ぎになっちまうし俺らは行くよ」
妻「あの、せめてお名前だけでも」
シェル「シェル」
数日後。
フローナが貧血を起こした時のこと。
コキア「メリサさん」
メリサ「どうしたんだい?」
コキア「僕気付いたことがあるんですけど
この間、隊長おじさんに血を分けてましたよね?」
メリサ「うん」
コキア「あの人、その後すぐ元気になってましたよね?」
メリサ「うん」
コキア「だったら隊長の血をフローナさんに分けたら元気になるのでは?」
シェル「それだー!!」
フローナ「え、でも怪我したわけでもないのに血をもらうなんて悪いよ・・・」
メリサ「何言ってんだい、貧血は立派な怪我だよ!」
シェル「そうそう、俺なら身体ちょー頑丈だから大丈夫だよ」
レン「まぁ、血を分けたら隊長も少しは大人しくなるかもしれないですしね」
シェル「わぁレンちゃん相変わらずキレッキレだね」
レン「ちゃんは辞めて下さいちゃんは」
血を分け中。
フローナ「シェルありがとね」
シェル「ニカッ、元気になるといーな!」
フローナ「!うん」
フローナ"シェルは本当に優しいなぁ・・・"
15分後。
フローナ「すごーい!体軽ーい!シェルありがとう!
なんかね!体がすっごい軽いの!何か今なら何でもできそう!」
シェル「おーおー良かったなぁ、俺は今ほど半妖に生まれて良かったと思った事はないよ」
メリサ「元気になって何よりだよ」
レン「この2人は日に日にフローナさんの保護者みたいになっていくな・・・」
フローナ「わーいわーい!」
レン「・・・」(ほわほわ)(自覚ないもの約1名)
コキア「?」
〜生きて俺の元に〜
シェル「いいかフローナ、この先は老人が倒れていようと、子どもが泣いていようと、足を止めずに走れ」
フローナ「助けを求められても?・・・」
シェル「フローナ、俺達は正義の味方じゃないんだ」
レン「生きて必ず俺の元に帰って来い、ですよね?」
シェル「ああ」
フローナ「うん、分かった」
シェルはフローナを不安にさせないようにニコッと笑った。
メリサ「ところでコキア君、君は何してんのさ?」
コキア「耳栓です、断末魔うるさいので」
メリサ「尊敬するよ君のそう言うところ」
シェル「まぁ、ここまでなれとは言わんが・・・
俺はフローナの命を最優先にだな」
メリサ「隊長、いい話してるとこ悪いけどフローナちゃんあっちだよ」
フローナ「コキア君、便利なもの持ってるね」
コキア「フローナさんも使いますか?予備用の新品のものがありますよ」
フローナ「え、いいの?助かるー!」
シェル「心配いらなかったのね・・・って!じゃなくて!断末魔はともかく俺の指示まで聞こえなくなるから二人とも耳栓はだめ!」
フローナ「えー」
コキア「隊長の指示が聞こえなくても問題ないのでは?」
シェル「俺一応お前らの隊長なんだけどな」
〜綿あめ〜
東の街K地点。
この街では大々的に祭りが行われていた。
シェル「ん?あれ何だ、あのふわふわしたやつ!」
街を歩いているとシェルが気になったものを指差した。
フローナ「あー、あれ綿あめだよ」
シェル「わたあめ??」
フローナ「空に浮かぶ雲みたいなお菓子、砂糖を機械でふわふわにするの」
シェル「砂糖ってことは食べ物だよな?」
フローナ「そーだよ」
シェル「なーなー!俺わたあめ食べてみたい!」
フローナ「私も食べたーい!」
シェルとフローナは目をキラキラとさせながらレンの方を見る。
レン「はいはい、じゃあ綿あめ買ってから車に戻りましょうか」
シェル「やったー!!」
レン「やれやれ・・・」
レンはため息をつきながらも綿あめにはしゃぐシェルとフローナの姿を見て微笑ましい気持ちになるのだった。
数分後、無事に綿あめを買った5人。
シェル「ん?これどうやって食べんの?」
シェルは食べ方が分からず、綿あめとにらめっこをしている。
フローナ「直接口で食べてもいいけど、私は口にベタベタ付くのやだから指で少しずつ摘んで食べてるよ」
フローナはそう言って人差し指と親指で綿あめを摘んで食べた。
シェル「そっか・・パクッ」
シェルは口の周りに砂糖が付くことなどお構いなしに直接口で食べた。
フローナ「どう?」
シェル「ほんとに砂糖の味する」
フローナ「原料砂糖だからねー」
メリサ「それにしても綿あめなんて久しぶりに食べたよ
、昔、ローズと家を抜け出して食べたっけ」
フローナ「私もです、祭りは何度も来たことあったけど綿あめ食べるのは子どもの頃以来だなぁ、懐かしい」
レン「俺も母と食べて以来なのでこれで二度目ですね」
コキア「甘い・・・」
メリサ「はは、まぁ砂糖だからねぇ」
シェルは綿あめを食べている皆んなを見るとフッと笑った。
メリサ「隊長?どしたのさ?」
シェル「ああ、いや、俺祭りに来たことなかったから
お前らとこうやって綿あめを一緒に食べれて良かったなと思ってさ
なんかこういうのいいな」
シェルは嬉しそうに微笑んでいる。
フローナ「シェル・・これからも祭りがあったら一緒に行こうね!」
シェル「うん!」
フローナ"やっぱり私、シェルの笑顔好きだなぁ、
シェルが笑うと世界までキラキラするよ"
レン「あれ、メリサさん、ひょっとして泣いてます?」
メリサ「何言ってんだい、目にゴミが入っただけだよ」
メリサは指で熱くなった目頭を押さえている。
コキア「メリサさん、ハンカチどーぞ」
メリサ「ありがと」
レン「この際、今日のお昼ご飯は屋台の料理にしましょうか」
メリサ「レン君、君も何気にお祭り楽しんでるね?」
レン「今日は楽をしようと思っただけですよ」
メリサ「またまたぁ♪」
フローナ「せっかくだし屋台のご飯食べてこうよ!」
シェル「いいな!じゃあ焼きそばとお好み焼きとたこ焼きとーあれ?あそこにいるのは・・・」
シェルの目線の先にいたのは・・・。
キリュウ「たこ焼き10人前頼む」
店主「あ、あいよ」
シェル「キリュウー!」
シェルはキリュウの名前を大声で呼びながら腕をブンブン振った。
キリュウ「ん?なんだお前か」
シェル「おお、俺だ、なーんだキリュウも祭りに来てたのか!」
キリュウ「俺はたこ焼きを買いに来ただけだ」
メリサ「とか言ってキリュウ君もなんだかんだ祭り楽しんでるみたいじゃないかい」
キリュウ「俺は別に・・・」
シェル「なぁなぁ、キリュウも一緒に食べよーぜ!」
キリュウ「俺はいい」
フローナ「えー!キリュウ君も一緒に食べようよ!」
キリュウ「・・・分かった」
メリサ「あれ、やけに素直じゃないか」
レン「フローナさんに言われたら逆らえないんですよきっと」
メリサ「なるほど」
キリュウ「おい、勝手に納得するな」
シェル「まーまー!いいじゃん♪てか、キリュウほんとたこ焼きだな、こんなに屋台あるのに全部たこ焼きとお好み焼きって」
キリュウ「使える金は限られてるからな、だったら好きなもんの為に使った方がいいだろ」
シェル「キリュウはいっつも金ないもんな」←悪気はない
キリュウ「大きなお世話だ」
メリサ「ねーねーフローナちゃん」(ヒソヒソ)
フローナ「?何ですか?」
メリサ「キリュウ君って一途そうだよね」
フローナ「それはなんか分かるかもです」
〜ほの字〜
シェル「俺が殺したんだ、母親と父親を」
フローナ「え」
シェル「俺のこと嫌いになったか?」
フローナ「全然」(けろっ)
シェル「え」
フローナ「そうしなきゃいけない理由があったんでしょう?殺されかけたとか、もしくは・・・弟君を守る為とか」
シェル「・・・ほんとフローナは俺を否定しない女だよな」
フローナ「後悔してるの?」
シェル「いや、してないよ、それに俺の手は元々汚れてるからいいんだ」
フローナはシェルの手にそっと触れた。
フローナ「シェルの手は汚くなんかないよ
私たちを守ってくれる温かくて優しい手だもん」
シェル「フローナ・・・ありがとな」
シェルはフローナが部屋に入っていくのを確認すると人差し指で頬を掻いた。
シェル「フローナって不思議な奴だよな」
メリサ「ん?」
シェル「誰よりも頼りなく見えるのに誰よりも頼りになるってゆーか」
メリサ「フローナちゃんに過去のこと話したのかい?」
シェル「ああ、迷いなく受け入れてくれたよ」
メリサ「フローナちゃんは仲間に対して絶対的な味方でいてくれるからねぇ」
シェル「あぁ」
メリサ「ははは」
シェル「な、何だよ急に」
メリサ「隊長、顔にほーれたって書いてあるよ」
シェル「なぬ!?」
メリサはケラケラと笑いながら治療部屋へ入っていった。
その後。
レン「隊長、最もらしいこと言ってますけど
本当はフローナさんを好きになった理由、一目惚れなんじゃないですか?」
シェル「ゲホゲホッ」
〜シェル犬化〜
シェルが犬になってしまった(中身だけ)とメリサさんから聞かされた。
シェル「わんわん!!」
レン「これはキツイな」
メリサ「まぁまぁ、隊長は術かけられてるだけなんだからさ」
コキア「普段と変わらないような」
シェルが四足歩行のままフローナに近付き、しゃがむと頬を足に摺り寄せた。
フローナ「・・・お手!ちんちん!」
シェル「わん!わん!」
シェルは交互に自分の手をフローナの手に乗せた。
フローナ「よしよし、いい子いい子」
フローナはシェルの頭を撫でる。
メリサ「順応早!!」
レン「あれを0.5秒で受け入れるとは・・・」
メリサ「何だろう、フローナちゃんの底知れぬ懐の広さを垣間見た気がする」
〜不発なくしゃみ〜
シェル「ふぇ・・・」(くしゃみ出そう)
と、その時フローナがペチッとシェルの鼻を手のひらで軽く叩いた。
シェル「あでっ!」
レン&コキア「!?」
メリサ「ブホッ」
メリサが紅茶を飲みかけて吹いた。
シェル「何すんじゃい!」
フローナ「くしゃみ止まるかなって思って」
シェル「止まったわい」
レン「今の隊長、最高に間抜けでしたねぇ」
シェル「やったのフローナなのに!?」
〜隊長の苦手なもの〜
森。
フローナ「わーなんかこの森お化け出そう〜」
レン「フローナさんダメですよ、隊長の前で幽霊の話をしちゃ」
レンがこそっとフローナに言う。
フローナ「え?どうしてですか?」
レン「あれ見て下さい」
レンの指差す方にしゃがんで両耳を押さえているシェルの姿が見える。
フローナ「もしかしてシェルって幽霊が苦手?」
レン「ええ」
メリサ「まぁ僕も得意じゃないけどね」
フローナ「私もですけど私は皆んながいればヘーキかなぁ」
メリサ「僕も僕も」
フローナ「コキア君は・・・」
コキア「??」
メリサ「コキア君はこのまんまだよ」
フローナ「ですよね!・・・でもシェルの方は重傷みたいですね」
メリサ「自分は半妖のくせにね、大体、隊長は妖怪とだってよく戦ってるじゃないか」
シェル「妖怪は生きてるからいいんだよ!幽霊は死んでるんだぞ!」
フローナ「シェル・・・大丈夫だよ!もし幽霊が出て来たら私がやっつけるから」
(気分はナイト)
シェル「ほ、本当に?」
フローナ「うん!私が付いてるから大丈夫だよ」
シェル「ありが・・・わぁ!?」
ガサガサッ!!
急に草むらが音を立てて動いた。
シェルは咄嗟にフローナの後ろに隠れた。
シェルは198cm、フローナは153cmなので全くもって隠れられていないのだが。
「にゃあ」
フローナ「シェル、猫だよ?」
シェル「はー、なんだ猫か」
レン「あんた恥ずかしくないんですか・・・自分より小さいフローナさん盾にして・・」
シェル「だって・・・」
〜隊長は下着泥棒?〜
タタタッ。
フローナが洗濯物を干す為、洗濯カゴを持って外へ出ようとした時だった。
下着が一枚カゴから落ちてしまう。フローナは気付かずに物干し竿の方へ向かってしまった。
そして、シェルが第一発見者となる。
シェル「・・・」
5分後。
シェルは正座させられていた。
フローナはパンツを洗い直し、干しに行っている。
フローナ"ぶかぶかになっちゃった"
レンは静かに怒りつつ腕を組んで隊長を見下ろしている。
レン「それで?どうしてフローナさんの下着をあなたが所持していたんですか?」
シェル「いや、あの、廊下に落ちてて・・・たまたま拾いました」
レン「そこまでは分かりますよ、洗濯物を運ぶ際に落ちてしまったんでしょう、
ですが何故頭に被る必要があったんですか?説明をして下さい」
シェル「えと、パンツ被ったらどんな気持ちになるのかなって思って」
レン「この状態で照れないで下さい」
シェル「好奇心でつい、出来心で・・・すみません」
レン「ついじゃありませんよ、ついじゃ、この"下着泥棒"が!」
シェル「(ピシャーン!!)人聞き悪いこと言うなよ、
俺は盗んだんじゃない拾っただけだ、誰かれ構わず盗む下着泥棒と一緒にしないでくれ、俺は彼女のだから被ったんだ」
レン「よくもまぁ抜け抜けとそんなこと言えますね」
(ゴゴゴ!!!)
シェル「う・・・」
レン「第一、あなたが誰かれ構わず盗んでいたら今頃斬ってますよ」
シェル「う・・・」
レン「いくら付き合っているとはいえあなたにはデリカシーというものが足りないんですよデリカシーが」
(ガミガミ)
フローナが戻って来た。
メリサ「フローナちゃんも嫌なことは嫌ってはっきり言った方がいいよー?」
フローナは正座させられているシェルの前へと一歩出る。
フローナ「シェル・・・」
シェル「フローナ・・・ごめんなさい・・・」
シェルはしょんもりしている。
フローナは少し屈むと首を傾けて言った。
フローナ「下着が欲しいなら買いに行く?」
ズコー!!(レンとメリサが転けた音)
コキア「??」
(何でこの二人は揃って転けたんだろう?)
シェル「違うよ、俺はフローナのパンツだから被ったんだ!他の女のパンツなんか興味ない!」(バーン!!)
フローナ「シェル・・・」(キュン!!)
""何かが、何かが果てしなく間違ってる!!""
〜結婚願望0〜
メリサ「いいのかいフローナちゃん」
フローナ「何がですか?」
メリサ「隊長、結婚願望0な人だよ?」
シェル「結婚やだー、自由じゃないのやだー、やたやだー」
後ろの方でシェルが騒いでいる。
メリサ「こんなのと付き合っていいのかい?」
シェル「こんなのっておい」
フローナ「え、結婚願望なんてあったら旅に出ずに故郷で相手作ってとっくに結婚してますよ」(けろっ)
メリサ「あー!!」
コキア「確かに」
レン「フローナさんて時々核心突いてきますよね」
シェル「まぁないだろーな、この間だって俺がウエディングドレスが飾られてた店の前にいたら・・・」
少し前。
フローナとシェルが二人で歩いていた時のこと。
ショーウィンドウに飾られたウエディングドレスの前でシェルが立ち止まった。
シェル「フローナがこのウエディングドレス着たら綺麗なんだろーなぁ・・・お帰りなさい、あ、な、た、ご飯にする?お風呂にする?それともわ、た、し?
きゃ!・・・ってあれ!?フローナがいない!!」
すると少し先の方にフローナの姿が。
屋台。
フローナ「イカ焼き二つ下さい!」
店主「はいよ」
シェル「フローナ、俺はお前のそうゆーとこも好きだぜ」
フローナ「シェルー!何してるのー!一緒にイカ焼き食べようよー!」
シェル「ああ、今行くよ」
〜激しい〜
貴族が登ってくる橋をシェルが持ち上げる。
「貴様!何をする!」
「そんな事をしてただで済むと思っているのか!」
ギャーギャー。
シェル「じゃーねーバイバイー!」
「ぎやぁああ!!」
川に落下していく貴族達。
レン「相変わらずダイナミックなやり方しますねぇ」
シェル「だーいじょーぶ!下は川だし、運が良ければ助かるって!」
レン「よく言いますよ、あなた、あの川がピラニアの住処だと分かっていたでしょう?」
シェル「あれぇ?そうだったかな?」
レン「やれやれ」
コキア「じーっ」
コキアはピラニアに食べられている貴族達を見ながら呑気に牛乳を飲んでいる。
メリサ「コキア君、君はよくあんなの見ながら牛乳飲めるね・・・」
コキア「ピラニアってああやって餌食べるんですね」
メリサ「本当にマイペースな子だよ」
〜心理戦〜
大会にてトランプ対決をする事になったシェル。
相手は感情が読み取れないほど表情の無い女の子だ。
シェル「俺行くわ」
フローナ「シェル、ババ抜き得意なの?あの子表情読みづらそうだけど・・・」
レン「隊長はババ抜き強いですよ」
メリサ「心理戦で隊長に勝てる人なんていないんじゃない?」
フローナ「へぇ・・・そんな強いんだ」
互いに冷静さを保ったまま淡々と手札を引いていく。
レン「手強いですね」
メリサ「あの手のタイプはさすがの隊長も読みづらいだろうね」
シェルは途中で手を止めた。
審判「おっと、シェル選手の手が止まった!これはかなり難航しそうだー!」
シェル"やれやれ、女の子を威圧するような真似はしたくなかったんだけど・・・"
シェルはトランプを見つめて一瞬考える素振りを見せた後、両手を組んで相手の女の子の目を真っ直ぐ見た。
「!?」
相手の女の子はシェルの予想外の動きに一瞬動じたように見える。
フローナ「!空気が変わった・・・」
レン「本気出したみたいですね」
メリサ「あの隊長を本気にさせるなんて大した子だね」
シェルがカードを引いていくうちに相手が焦りの色を見せ始めた。
そして最後の一枚を取ろうとした瞬間、相手は焦ったのかカードを持つシェルの手を掴んでいた。
だが、すぐに諦めたように手を離した。
「負けた・・・」
シェル「君、意外と負けず嫌いなんだね、
そう言うの良いと思うよ!」
シェルはニカッと笑った。
「!」
相手は一瞬不意を突かれたような表情をした。
シェルは優勝の品の中からアクセサリーを手に取って歩き出した。
レン「え、隊長?」
シェルは対戦相手の子にアクセサリーを渡した。
「どうしてこれを私に?・・・」
シェル「あ、バカにしてるとかじゃないからね?
最初に景品見た時にこのアクセサリーの時だけ視線が止まってたから
俺らアクセサリーに興味ないからさ、せっかくなら好きな子が持ってた方がアクセサリーも喜ぶじゃん、だから良かったらもらって」
「負けたのにもらえない」
シェル「んー、じゃあまたババ抜きしようよ
それでどう?」
"ああ、そっか、私、戦う前から負けてたんだ、この人に"
「・・・分かった」
シェルはニカッと笑った。
「あの」
シェル「ん?」
「あり、がとう」
少女は辿々しくお礼を言った。
シェル「どういたしまして!そんじゃまたね〜!」
シェルは大きく手を振った。
その子はアクセサリーを握り締めたまま静かに微笑んだ。
その事は誰も知らない。
〜怪獣のぬいぐるみ〜
雑貨屋にて。
フローナ「わ、この怪獣のぬいぐるみシェルに似てる!」
メリサ「あれまほんと」
レン「そっくりですね」
シェル「そうか?」
フローナ「可愛い〜、これ買おうかな」
シェルはひょいっとフローナから怪獣のぬいぐるみを奪うと元あった場所に置いた。
フローナ「あ、ちょっと!何するの」
シェル「似てる本人がいんだからいらないだろ」
フローナ「怪獣・・・」(しょぼん)
メリサ「レン君、あれは黒だねぇ」
レン「えぇ、間違いありませんね」
レンはクイっとメガネを上げた。
コキア"今日も平和だなぁ"
フローナが部屋から出てこない為、シェルが様子を見に行った。
コンコン。
シェル「フローナー、入るぞ?」
フローナはまだ眠っていた。
シェル「って、何であのぬいぐるみが?
フローナの奴、こっそり買ってたな」
フローナは怪獣のぬいぐるみを抱きしめながら寝ていた。
シェル「なぁ、これってそーゆー事?」
シェルはツンツンと怪獣のぬいぐるみをつついた。
フローナ「zzz」
〜ヤキモチ〜
シェル「コキアだって男なんだから気を付けろよ?」
フローナ「それってヤキモチ?・・・ってそんな訳ないか」
シェル「そうだって言ったらどうする?」
フローナ「え・・・///」
シェルはじっと真っ直ぐフローナを見た。
フローナ"何でそんな真っ直ぐな目で見るの!?
目逸らせない・・・"
シェル「・・・!」
その時、背後からレンが近寄って来た。
レン「隊長ー、フローナさん、食事できましたよ」
シェル「おー」
フローナ「はーい」
フローナ"何よ、平気な顔して行っちゃわないでよ・・・ばか"
〜告白〜
シェル「あー俺さ、フローナの事好きだわ」
フローナ「え、私も好きだよ」(ケロっ)
シェル「な!?何でいきなり言うんだよ!」
フローナ「シェルだっていきなり言ったじゃないの」
シェル「そーだけど、心の準備ってもんがあるだろ!」
フローナ「えー、じゃあ今の一旦無しにする?」
シェル「それはできない」(真顔)
フローナ"可愛いな"
フローナ「・・・あのさ、本当に私でいいの?」
シェル「それはどう言う?」
フローナ「後から若くて可愛い子が良かったとか言わないでよ?」
ちょっと拗ね気味な顔でフローナは言う。
シェル「言わないよ、つか、フローナこそ歳上で包容力ある男が良かったーとか言うなよ?」
フローナ「言わないよ、だって・・シェル以上の人なんてこの世界中どこ探し回ったっていないもの」
シェル「今・・・何かが刺さった」
フローナ「え?なになに何が刺さったの?」
シェル「よせ、これ以上俺をいじめてくれるな」
顔を真っ赤にしているシェルにフローナは容赦なく近付く。
フローナ「いいじゃん教えてよ〜!」
シェル「だーめ!」
フローナ"シェル、大好きよ、
私のこと1秒でも長く好きでいてね"
〜シェルの過去〜
チェル「・・・本当なの?母さんと父さんを殺したって」
シェル「・・・ああ」
チェル「何で・・・」
シェル「・・・母さんと父さんはお前と俺を売る気で産んだんだ」
チェル「え・・・?」
シェル「半妖は高く売れるからな、
その事を知ったのは俺が3歳の時だ」
チェル「それって俺が産まれた時・・・?」
シェル「ああ、
両親が話してるのを聞いて耳を疑ったよ、
このままだとお前も俺も売り飛ばされる、
俺がお前を抱えて逃げようかと思ったが
また売り飛ばす為に子供を作りかねない、
半妖の知力や運動能力は普通の人間の10倍程度、
少し考えれば事故に見せかけて2人を殺すのは容易い事だった」
淡々と話すシェルの表情には切なさも混じっていた。
チェル「何で教えてくれなかったんだよ・・・何で一緒に背負おうとしてくれなかったんだよ
にーちゃんは俺が辛い時にはいつも駆けつけてくれてた
なのに俺はにーちゃんが辛い時、気付けもしないでずっと・・・」
シェル「お前には幸せな記憶のままにしておきたかったんだ
ごめんな、ずっと良いにーちゃんのままでいたかったけど・・・」
チェルはシェルに駆け寄り抱き締めた。
チェル「にーちゃんは俺にとってずっと良いにーちゃんだよ!!
俺がいなかったらにーちゃんは一人で逃げれたのに
俺がいたから・・・ごめん、にーちゃん、ごめん」
シェル「ばーか、お前が謝る事なんて一つもない、
俺はお前がいたから生きてこられたんだ、
お前は俺の大事な弟なんだよ」
チェルは泣き出す。
シェルはチェルの頭を優しく撫でた。
チェル「にーちゃんずっと辛かったよね、苦しかったよね・・・」
チェル"どんな理由であれ両親を殺すのは相当な心のダメージを負う
それをずっと誰にも言えずに一人で抱えて"
シェル「・・・なーに、俺は今まで旅をする上で何人も手に掛けてきたんだ、
たった2人増えただけさ」
シェルはこんな時にも笑顔を見せた。
チェル「にーちゃん!もう、いいんだよ・・・」
チェルは兄を抱き締めた。
シェルの目に涙が滲む。
知力や運動能力が人の10倍あれど、心は3歳と同じ。
葛藤もあっただろう。
辛くて悲しくて泣き叫びたくなる時もあっただろう。
それでもシェルは笑っていた。どんな時も。
いつも笑って皆んなを照らしてくれていた。
その笑顔の裏には誰も知り得ない心の傷があった。
一生をかけても到底癒えないような深い傷が。
シェル「チェル・・・っ」
チェル「にーちゃん!にーちゃん!」
2人は抱き合って泣いた後、皆んなの"隊長"に戻っていった。
太陽のような笑顔とともに。
〜自慢の彼氏〜
フローナはシェルに声をかけようとしたが足を止めた。
シェル「フローナ?どした、こっち来いよ」
フローナはてててっとシェルに近付いた。
シェル「ずっとそこにいた?」
フローナ「考え事してる風だったから」
シェル「あぁ・・・海や空を眺めながらいつも自分に言い聞かせてるんだ」
フローナ「言い聞かせる?」
シェル「あぁ、何があっても仲間を守るってな
毎日だぜ、カッコ悪いだろ?」
シェル"人はほんの1ミリでもズレたら、全く違う方へ傾いちまうからな"
フローナはシェルを後ろから抱き締めた。
フローナ「そんな事ないよ、シェルは世界で一番カッコイイ私の自慢の彼氏だもん」
シェル「!・・・ありがとう」
シェルはフローナの手に指先を重ねた。
シェル"敵わないな"
〜星空〜
フローナが座っていると隣に座っていたシェルが体をぐい〜っと寄せてきた。
フローナ"かっわ///"
フローナは可愛さに悶えそうになるのを必死に耐えながら質問をした。
フローナ「なぁに?」
シェル「ん、フローナが星ばっか見てるから」
フローナ「だって星見に来たんでしょ」
シェル「そうだけどさ」
フローナはむくれているシェルの肩をちょんちょんとつついた。
シェル「な、に」
フローナはシェルにキスをした後、ニッと笑った。
フローナ「隙あり」
シェル「・・・」
シェルはガシッとフローナの腕を掴んで引き寄せた。
フローナ「わっ」
急に引っ張られた為、当然驚く。
フローナ「シェル、これじゃ私星見れないよ」
そう言われてシェルは後ろからハグする形に変えた。
フローナ「あ!流れ星!!」
フローナが空に向かって指を刺す。
シェル「おー!てかすげぇ流れ星いっぱい!!」
フローナ「こんなの初めて見た!」
シェル「俺も俺もー!」
フローナ「シェルと一緒に見れて良かった!」
フローナは満面の笑みをシェルに向けた。
シェル「!そうだな」
シェル"何なんだこの可愛い生き物は!"
シェルは胸元をぎゅっと掴みながらそう思うのだった。
〜背中の傷〜
レン「あの背中の刀傷は隊長が俺達を命をかけ守ってくれた証」
シェルは仲間3人を抱き締め、敵の攻撃から庇った。
当然、背中は無防備に晒されていた為、斬られた。
「あの傷じゃどのみち助からん、隊長を失った一味など取るに足らん、行くぞ」
レン"隊長は瀕死の状態だった
背中の傷を見た俺達は、全員顔が青ざめた
体の半分近くまで切られていたからだ"
レン「隊長、死なないで下さい・・・我々はあなたが死んでしまったら旅を続けることも笑うこともできない」
メリサ「隊長、目を覚ましとくれよ」
レン「敵にとって誤算だったのは隊長の治癒能力が桁外れで強かったこと」
「生きてやがったのか・・・あの傷で
大した奴だ」
シェル「あの時、俺の体を真っ二つにしとかなかったのは誤算だったな」
"分かるぜ、こいつ、前よりはるかに強くなってやがる"
「面白い」
敵は遥かに強くなったシェルによって倒された。
「やはり、あの時お前を殺さなくて正解だったよ」
シェル「何?」
「病じゃなく、こんな強い相手に殺されて死ねるんだからな」
シェル「お前・・・」
「さぁ、やれ」
シェルはその言葉と同時に相手を刺して殺した。
「隊長がやられた!逃げるぞ!」
「おう!巻き添えはごめんだ」
シェル「お前らそりゃねーんじゃねーか?」
「俺達は財宝が手に入るって話があったから乗っただけだ!」
シェル「知るかよ、お前らの意思でこいつにくっついて来たんだろうが」
シェルは目を光らせたかと思うと2人目掛けて飛んだ。
「ひ!」
「やめ!!」
シェルはダンッと飛ぶと二人同時に斬り捨てた。
フローナ"こんなシェル初めて見た・・・"
レン「隊長、珍しく怒ってますね」
シェル「そう見える?」
レン「ええ」
〜隊長のピンチ〜
ケシアの実の煙で弱ってしまったシェル・・・。
レン「くっ、死なせて・・死なせてなるものか・・・」
レンはシェルを命がけで庇った。
「何故そこまでして庇う?」
レン「隊長はいつも仲間を守ってくれていた
隊長のピンチに仲間が駆けつけるのは当然でしょう」
「その男でも俺に勝てなかったのにお前ごとき勝てるはずがないだろう?」
レン「勝てるかどうかじゃないんですよ、
仮に隊長を見捨てて逃げ切れたとしても
我々はもう旅を続けられない、笑うこともできない、
だから俺達は逃げない」
「なら望み通り死ね!!」
レンが攻撃を受けかけたその時。
シェルが刀で相手の攻撃を受け止めていた。
苦しそうに肩で息をしている。
レン「!隊長、ダメです、逃げて下さい!」
シェル「バカ野郎!お前ら置いて帰る場所なんかあるかよ!お前らが俺の帰る場所なんだ」
レン「隊長・・・」
「ほらほら、どうしたシェル、動きが鈍いなぁ・・・」
シェル「くっ・・・」
「もらった!!」
フローナ「シェル!」
フローナはシェルをぎゅっと庇う。
シェル「ばっ、やめ!!」
相手の刀が振り下ろされた瞬間、フローナはぎゅっと目をつむった。
しかし、そこへ猛スピードで突っ込んでくる男が・・・。
ガキィン!!!
「なに!?」
バカな、殺気はしていなかったはず・・・。
あり得ない。
妖怪の中でもトップクラスに感知能力が高いこの俺でさえ気付かない距離から一瞬でここまで来たというのか?
どんな脚力してやがんだこいつ・・・。
フローナ「!!・・・え、キリュウ君!?」
キリュウ「ちびすけ、行け」
フローナ「だ、ダメ!だってケシアの・・・」
キリュウ「俺にはケシアはきかねぇ」
フローナ「でも!」
シェル「キリュウよせ・・・お前だって全く効かねーわけじゃ」
キリュウ「仲間死なせたくなかったら黙ってろ!後で解毒薬でもぶっ込んでくれりゃ死にゃーしねーよ」
シェル「・・・キリュウ、悪い」
フローナ「キリュウ君、待ってるから!」
キリュウ「おー」
キリュウは手のひらをひらひらとさせた。
「ケシアが効きにくい半妖がいるとはな・・・」
キリュウ「ま、正確には俺の祖父が半妖なんだがな」
「なるほど、それで妖怪の血が薄いからケシアも効きづらいって訳だ」
キリュウ「そう言うことだ」
敵を倒した後。
キリュウはくらっと目眩を起こした。
キリュウ「ふー、血が薄いとは言えケシアは効くな」
シェルは布団で寝ている。
手当てされたレンも隣で寝ている。
フローナ「キリュウ君!良かった」
メリサ「キリュウ君、ここ座って」
キリュウ「?何だよ」
メリサ「いいから」
ドスの効いたメリサの声に一瞬キリュウがたじろぐ。
キリュウ「分かったよ・・・っておい!?」
するとメリサはいきなり注射をキリュウに刺した。
キリュウ「っ!てめ、いきなりなにすん」
メリサ「解毒薬だよ」
フローナ「キリュウ君、大丈夫なの?」
キリュウ「こんくらい何ともねーよ」
メリサ「全く無茶するね、それにしても半妖にも個人差があるのかね?」
キリュウ「ああ、いや、それは・・・俺の祖父が半妖だから妖怪の血が薄いんだよ」
メリサ「そうだったのかい」
フローナ「でもキリュウ君戻って来て良かった・・・」
その日の夜。
シェル「なぁ、何でキリュウは俺がピンチな時が分かったんだ?」
キリュウ「・・・お前の事ならだいたい分かる」
シェル「?うん」
シェルはニコッと笑う。
一同"それはもうほぼ告白では?"
〜シェル女性陣に囲まれる〜
レン「良いんですか?隊長放っておいて」
フローナ「話の邪魔したくないんで」
レン「・・・」
フローナは部屋に戻ろうとした。
シェルは女性陣をサッとくぐり抜けフローナの腕を掴んだ。
シェル「何で行っちゃうの」
フローナ「邪魔しちゃ悪いと思って」
シェル「何で邪魔だなんて思うの」
フローナ「男の人だしそう言う気分の時もあるでしょ?」
シェル"こいつは妙に物分かりがいいんだよな
期待しないっつーか、最初から諦めてるっつーか
どれだけ触れても壁がある、どこか冷めてる"
シェル「そんな悲しい事言うなよ、俺にはフローナしかいないんだから」
フローナ「・・・ありがと」
「えーひょっとして彼女?」
シェル「おう!可愛いだろ?」
シェルはフローナの頭をポンポンした後、戯れるようにワシワシと撫でた。
フローナ「もぅ・・・」
「可愛いー!!」
「やーん、ショックだけどこんな可愛い彼女いるんなら仕方ないよね」
シェル「てなわけだからごめんね」
「いいよいいよー」
「彼女さん大事にねー!」
シェル「うん」
二人は嵐のように去っていった。
〜キリュウとシェル共同作戦〜
シェル「あいつ強いな・・・」
キリュウ「シェル」
シェル「ん?」
キリュウ「俺が奴の攻撃を全て斬る、お前は奴の体の殻を斬ることだけを考えろ」
シェル「了解」
バラバラに動いていた二人が並んで立った。
シェル「勘違いしてるみたいだから言っとく、
俺よりキリュウの方が強いぞ、
確かに俺の方が腕力はあるが、スピードならキリュウの方が断然上だ」
「ほう、それで?」
シェル「つまり、俺らが揃うと最強ってわけ」
キリュウは得意のスピード力で相手の無数の触手攻撃を全て斬った。
シェルに襲い掛かる攻撃も全てキリュウが斬っている。
「ば、バカな、俺は妖怪の中でも攻撃も再生速度がトップクラスなのにそれを上回っているというのか?」
シェル「だから言ったろ?スピードでキリュウに敵う奴なんていないって」
「くそっ!!」
シェルは力を溜め得意の腕力で敵が体を守る為に纏っている殻を破ることだけに集中する。
そしてついに・・・。
ダンッとシェルが上空に飛び、一気に敵の体目掛けて剣を振り下ろした。
シェル「はあー!!」
ピキッと音がし、粉々に砕けた。
「ぐああっ!!」
シェル「キリュウ、さっきはありがとな」
そう言ってシェルは拳をキリュウの前に出した。
キリュウも拳を合わせようとするが・・・。
キリュウ「ずきっ・・・っ・・・」
瞬時痛みが走り、キリュウはそのまま腕を下ろす。
キリュウ「行くぞ」
シェル「キリュウ・・・?」
キリュウは戦いの後、両腕が痺れて使えなくなっていた。
シェル「よし、今日は俺が食べさせよう」
シェルの目がキラキラと輝く反面、キリュウの顔は青ざめている。
キリュウ「冗談じゃねぇ、俺は今日はもう何も食わん、明日になれば元に戻る、一日くらい食わなくたってヘーキだ」
シェル「ダメだよ!ただでさえいっぱい怪我してんだから!栄養補給ちゃーんとしないと!」
キリュウ「お前に食わさせられるくらいなら餓死した方がマシだ!!」
ギャーギャー。
レン「あ、キリュウさん今日の夕飯、たこ焼きですよ」
しん・・・。
30分後。
シェル「はい、あーん」
キリュウ「(パクッ、もぐもぐ)」
ニコニコしながらたこ焼きを食べさせるシェルと
ムスッとしながら渋々それを食べるキリュウ。
メリサ「キリュウ君ってほんとたこ焼きとお好み焼きには逆らえないんだねぇ」
フローナ「ふふ」
シェル「はい、あーん」
キリュウ「・・・黙って食わせられねーのかお前は」
その後も。
フローナ「キリュウ君、腕痛くない?大丈夫?」
メリサ「腕冷やした方がいいよ、僕がやったげるから」
シェル「なぁなぁキリュウ、他にして欲しいことあるか?」
キリュウ「痺れてるだけで痛くねぇし自分で冷やすからいい、それと、して欲しいことなんて何もねえ」
こいつらは放っておくと死ぬ病気にでもかかってんのか?