40、氷室の戦い
40、氷室の戦い
私たちが氷室に戻ってみると、ユダは再生したノヅチの攻撃から逃げ回っていた。でも氷室はどうやら無事のようで一安心だよ。天然の氷を貯蔵しておく氷室は貴重だもんね。私も前に社員旅行で行った先で氷室があり、天然氷のかき氷を食べたけど、その美味しさにショックを受けたんだ。とにかく一度食べてみてとしか言えないほど美味しい。値段もそれなりに高いけど、食べる価値は充分にあるよ。それに、食べてても頭がキーンとならなかったのは気のせいなのかな。普通のかき氷も好きだけど、この天然氷のかき氷は別格だった。味といい食感といい別次元だよ。だから、そんな貴重な氷室を破壊しようとするなんて誰であろうと許せないよ。まあ、だからそれが守れて良かったけど、ユダの奴は使えないじゃん。
・・・なにやってんの、あの馬鹿 もしかしたら、もう済んでいるんじゃないかと期待していたけれど全然駄目じゃん ・・・
私は、ちょっと失望していた。あんな凄い技を使っていたユダでさえ、一人では倒せないのか……。
ノヅチは頭部の巨大な口でユダを丸呑みにしようと襲っている。ノヅチの口は一説では、そのままブラックホールに繋がっていると云われていて、呑み込まれたものは、その超重力ですぐに分子より小さく潰され消滅してしまうらしい。もし、呑み込まれたらユダといえども終わりだろう。
・・・なんで、初めに使った必殺技をつかわないの 馬鹿なの ・・・
「うるさいっ小動物 お前が足止めしとけと言ったんだろう だから、大技の”次元斬”を最初に使ったんだよ そうすれば再生するのに時間がかかるからな ”次元斬”は魔力も体力も大量に消耗するんだ 連発出来ないどころか、1発使えば俺の魔力も体力も、残り少なくなる 早く代われ、小動物 もう、俺は限界だ しっかり、足止めはしといたからな 」
そんな1度しか使えない大技を先に使ってしまって私たちが来るのが遅れたら、どうするつもりだったの、この馬鹿は。あの光の国の宇宙人だって大技使うのは、最後にとどめを刺す時だよ。私は呆れていたけれど、このままユダを見殺しにする訳にはいかない。
「ピイィィーーッ 」
私はみんなに号令をかけ、ナアマ、クレア、アリスにノヅチを引き付けておいてもらう。その間にふらふらのユダを、シモンと二人で回復魔法で回復させる。これで、体力は回復出来るけど魔力は回復出来ない。魔力は自然回復を待つか、ポーションで回復させるかしか手がない。なので、魔力が多い者は重用されるのだ。そして、基本的に魔力は人間より魔族の方が多いのが普通だよ。でもそれはあくまで一般論で、ここにいるアリスやシモンのように人間でも桁外れな魔力の持ち主もいる。あの十戒を発動した時のシモンの魔力は凄まじかったからね。
私はシモンの顔をチラッと見ていた。シモンは、ユダの顔を見ても表情が変わらなかったし、ユダもシモンを見ても変わった素振りは見せなかった。
・・・二人共、ゴルゴダの十二使徒の筈だけど、お互いの顔は知らないのかな ・・・
私は、シモンと二人でユダを回復させていると、急に周囲の気温が下がった気がした。
・・・なんだろう? ・・・
私が、ついキョロキョロしてしまうと、シモンがアリスですよと教えてくれた。アリスの上下左右、そして、ノヅチの上下左右にも蒼く輝く巨大な多重魔方陣が出現している。そして、周囲の気温がどんどん下がり、キラキラとダイアモンドダストが舞っている。アリスに、凄まじい魔力の高まりを感じるよ。アリスは、今まで見たことのない殺気の籠った顔で呪文を唱えている。
「地獄の最下層コキュートスに眠る嘆きの川で永遠に溶ける事のない氷塊よ 我の求めに応じて現れるが良い カイーナ、アンテノーラ、トロメア、ジュデッカ 永遠の無の世界に閉じ込めるのだ ”ヘレ デス アイゼス” 」
そして、アリスの呪文の詠唱が終わった瞬間、地面からせり出した巨大な氷がノヅチを包み込んでいく。ノヅチは激しく暴れていたけど、氷に包まれ標本のように動かなくなっていた。
「おい、女魔法使い 地獄の氷を召喚なんて、俺でもこんな特大魔法は使えないぜ お前、人間だよな それにしても、こんな魔法が使えるなら、なんで俺と戦った時に使わなかったんだ 」
「キノコちゃまの言う通り ホント、あんた馬鹿ね 私が人間にこの魔法を使うわけないでしょ いくら、あんたみたいな馬鹿が相手でも、人に対しては使わない 私は人を守る為に魔法使いになったんだから 」
・・・偉いよ、アリス さすが勇者パーティーの一員だよ でも、この魔法、そんなに凄いのか 私、前に灼熱の迷宮で使っちゃったけど内緒にしておこう 無詠唱を真似した時みたいに、アリスがまたショックを受けるといけないもんね そうだ、見ていたイブリースとギュスターヴにも口止めしておかないと ・・・
私が考えているうちにノヅチは完全に凍りついていた。灼熱の迷宮で私が氷詰めにしたサラマンダーのように、ノヅチは永久に溶ける事のない氷の中で動きを止めていた。ノヅチが不死身だとしても、これで動けなくなれば一安心だといえるよね。私は、ホッと安堵の息をしていたけれど、ユダはこの程度でノヅチを無効化出来るなら苦労はしないと言う。
「一時的に動きを止められるだろうが、どれだけ持つかな 1日持てば良い方だろうな 神獸を倒す方法はないんだよ お前が遠呂知を倒せたのは、まぐれ以外のなにものでもない 」
「ピイィィィッ 」
・・・だったら、あんたも考えなさいよ 偉そうに言うだけ言って、自分の考えは何もないなんて、社会人失格です その馬鹿な頭を少しは働かせなさいよ ・・・
私は、プンプンしてユダを怒鳴りつけていた。




