38、十二使徒
38、十二使徒
この城の兵士たちを信頼していない訳ではないけれど、私は牢に確認に行ってみる事にした。やはり、あの男が気になるからだ。
・・・あの男の事だから、居るように見せかけて、それが偽者なんて可能性もあるからね とにかく、あの男は油断ならないよ ・・・
私はナアマの肩に乗って牢に向かっていた。そして、兵士に案内されて牢に着くと確かに男はいた。
「貴様、小動物っ さっきの子供は貴様が変身してたそうじゃないか 汚ない奴だ 今度は子供に変身して俺を油断させるとはな ふん、まともに戦っては勝てないと思っているんだろう 」
「ピイィィィーーッ! 」
・・・ホントに馬鹿なの 敵地に乗り込んできて油断する方がおかしいでしょ 自分が強いと思い上がっているからだよ 少しは謙虚になりなさいよ ・・・
私も何故かこいつにはむきになってしまう。同じ転生者として、こんな奴がいるなんて許せないよ。力を貰ったなら、それを人の為に役立てないとね。なに自分のためだけに使ってるんだよ。
「まあいい 俺が逃げずに待っていたのは、小動物、お前が来ると思っていたからだ そして、俺の想像通り、やっぱり来たな小動物 」
「ピイィィィーーッ 」
・・・私はキノコ 名前くらい覚えなさいよ ・・・
「キノコ? ふざけた名前だな 鼻がキノコみたいだからか 大笑いだ それに引き換え高貴な俺の名はユダ 覚えておけ、キノコ 」
「ピイィィィーーッ 」
・・・鼻がキノコって何? あんた、殺されたいの もう神様に転生させて貰えないよ ・・・
私は怒りに任せて空中に魔方陣を書き始めていた。
「止めろっ、落ち着けっ小動物っ それに提案があるんだ まずは落ち着いて聞いてみろっ、お前にとっても良い提案だぞ 」
こいつ、捕らえられている癖になにが提案だよ。どうせ下らない提案に決まっている。私が無視しようとするとナアマが、面白そうだから聞いてみようと言う。
「聞くだけ聞いてやろう だが、下らない提案だったらキノコの前に私が殺すからな 」
ナアマに凄まれると普通は肝を冷やすのに、このユダは余裕で笑っている。どれだけ自信過剰なの。私は、本当にムカムカしていた。こういう奴、会社にもいたよね。自信たっぷりなくせに仕事出来ない奴。周りの人に迷惑をかけているのに気付きもしない幸せな奴。それで注意しても聞かないで、周りはみんなイライラしてたんだから。このユダも、それと同類だよ。
「ふふふ、いいか 聞いて驚くなよ 俺とその小動物キノコが手を組めば、この世界を征服出来る だから、今までの遺恨は水に流して手を組もうじゃないか 」
・・・はぁ? 遺恨て何? 私は別になんにも思ってないけど やっぱり、あんた馬鹿なの それに何、世界征服って そんなの、あんたがいなくても出来るわよ そんな下らない提案なら却下です ・・・
「ふん、まったく話にならんな キノコ、こんな奴、気にする事はない もう戻ろう みんな、待ってるぞ 大会の詳細も聞かねばならんしな 」
私に続きナアマも呆れたように言うが、ユダは何故か笑みを浮かべている。
「小動物キノコ、お前がいくら強くても”ゴルゴダの十二使徒”にはかなわないさ 俺がいなくては、その居場所さえ掴めないだろう 俺と組まないと後で泣きをみる事になるぞ 」
ゴルゴダの十二使徒……。もしや、そいつらがサタンの言っていた”遠呂知”を操っていた人間?こいつの名前はユダと言ってた。こいつも十二使徒の一人なのか。私の元の世界ではゴルゴダは、イエスが処刑された丘の名前だし、十二使徒はイエスの弟子たちで、ユダもその中にいる。でも、それよりも気になるのが”シモン”。彼女だ。シモンの名も十二使徒の中にある。聖ペトロの本名でもある。でも、それは私の元の世界の話だ。この世界では違うのかもしれないよ。でも、ユダは信用出来ないけどね。私たちは、シモンの話も聞いてみようと牢の前から立ち去ろうとすると、ユダが自分の話はまだ終わりではないと続けてくる。
「良いのか、俺の話を聞かないで…… お前は平気かも知れないが、お前の仲間はどうかな、キノコ ゴルゴダの十二使徒は”神獣”という化け物を召喚する事が出来る 前にも会ったろう”遠呂知”という化け物に…… たぶん奴らは俺が成果を上げてないので、業を煮やして次の神獣を召喚しているだろうな ふふ、どうだ心当たりはないか どこかに神獣が現れているかもしれないぞ 」
「ピ、ピイィッ 」
まさか氷室……。私はドキッとしていた。ナガトが戻って来ないのは……。
・・・ナアマ、急いで氷室に向かうよっ ・・・
私は空中に転移の魔方陣を書いていた。氷室の場所はイブリースを送った時にヴァイオレットに聞いている。そして、ユダに声をかける。
・・・ユダ、一緒に来て貰うよ 私と手を組みたいなら協力しなさいよ 早くっ、そんな牢、すぐに出られるんでしょう ・・・
ヴァイオレット、そんな牢なんて言っちゃってごめんなさい。でも私が急かすと案の定ユダは、まるで牢など存在しないかのように、スッと出てきた。ふざけた奴だけど、その力は確かなようだ。
「キノコ、お前、転移まで使えるのか 俺にも教えろ そうすれば歩かないで済むからな 楽になる 」
・・・あんた、みたいな馬鹿には教えないよ それより早く、来なさいって ・・・
ユダが魔方陣の中に入り、私は転移の魔法を作動させる。一瞬、目の前が暗くなっったと思ったら、次の瞬間、城の中とは別の風景が広がっていた。
「イブリースッ 」
ナアマが叫ぶ。ナアマの視線を追うと、イブリースが地面に膝をついていた。イブリースの下には人が横たわっている。その黒装束の人間はナガトだ。イブリースはシールドを張って攻撃を防ぎながら、ナガトを回復しているようだけど、そのイブリースも血まみれだった。そして、そのイブリースに巨大な蛭のような化け物が襲いかかろうとしている。
「奴ら”ノヅチ”を召喚したのか 」
ユダが、呟いていた。




