34、招かれざる客
34、招かれざる客
私たちは城の広い貴賓室で歓迎されていた。私は友人の結婚式でホテルの式場くらいしか行った事がないけど、このお城の貴賓室はそれより遥かに上、都会の格式の高い超一流ホテルの大広間のように感じるよ。私は思わずキョロキョロと見回していたけど、自身も荘厳な城を持っているナアマは、ふむこの程度かという様な表情で見ている。
・・・ナアマも一国一城の主だもんね しがない会社員だった私とは大違いだよ ・・・
しかも私は上座の席に案内されていた。
・・・ここって社長さんや偉い人が座る席だよね ・・・
私は、緊張してしまった。だって、こんな待遇を受けるなんて初めてだもの。いつも、接待する方で、される方なんてなった事がない。でも、される方は気楽かと思ったけど、そうでもないと実感した。ナアマは慣れた態度だけど、ナガトとクレアも、そしてシャーロットも私と同じ様に緊張しているみたいだ。そうシャーロットも招待されている。ヴァイオレットはシャーロットにシモンの失態も含めて”いじめ”の件を謝罪し、シャーロットを招待していた。
私は椅子の上で偉そうにふんぞり返っているように見えるけど、ジリスの体だとこうなってしまうのだ。別に偉ぶっている訳ではないからね。しかも、この椅子。私の体に合わせたような小さいけど豪華な椅子だ。だから、よけい偉そうに見えてしまう。どうして、こんな椅子があるのか理解に苦しむ。お城の中に小人族の重要人物でもいるのだろうか。
「どうですか、キノコ様 城の錬金術師に急いで作らせたものですが、座り心地等不満はありませんか 」
ヴァイオレットが訊いてくるけど不満なんかあるはずないよ。それにしても、そうか錬金術。無から有を作り出す錬金術師。こんな物も作れるのか。私はテーブルの上に載せられた小さな椅子に座り感激していた。すると城兵がやって来てヴァイオレットに何か告げる。ヴァイオレットはランスロットにヒソヒソと何か連絡していた。その後、アリスが立ち上がり部屋を出ていった。何かがあったようだけど、ヴァイオレットもランスロットも慌てた気配はないので、たいした事ではないのだろう。そうしているうちに料理が運ばれてきて私はそっちに目を奪われてしまった。
・・・うぴぃーっ、こんなの見たことないよ ・・・
私は目を丸くしていたけどナガトもクレアもシャーロットも同じだ。ヴァンパイアレディーはシャーロットの前のお皿に料理を切り分けておいている。まるでお母さんみたいだ。シャーロットの両親は亡くなっていてお婆さんに育てられているそうだから、シャーロット嬉しいだろうなぁ。私は、ますますヴァンパイアレディーに好感を持っていた。そして、私たちが料理を楽しんでいるとナアマが話しかけてきた。
「なあ、キノコ 前から疑問に思っていたのだが、お前程の魔力があれば人間の姿に擬態出来るのではないか なぜ人の姿にならないのだ その方が便利な様に思えるが まあ、私は別にお前がどんな姿であろうが関係ないがな 」
「ピッ…… 」
私は、そんな事考えた事もなかったよ。だってこの体は女神様に貰った体。その体を変えるなんて発想が、そもそもなかった。でも考えてみればナアマやイブリース、ヴァンパイアレディーが人間の姿に擬態しているんだもんね。私だって出来るはずだよね。でも実をいえば、このジリスの体、気に入っていたりするんだよ。だって可愛いんだもん。人間だった頃の私では、とてもナアマの隣にはいられないよ。
「まあ無理に変える必要はないが、人間の中にいるときは人間の姿でいる方が便利で良いのではないか ほら、郷に入れば郷に従えって言うではないか 」
確かにそうだけど、なんでナアマそんな言葉を知っているの。でもまあ、そこまで言うのならやってみるかな。みすぼらしい姿だけど、もしかしたらこの世界では元の私、美人さんだったりして。それに今なら私は神様だと思われているから、どんな姿でも敬ってもらえるよね。私は試してみようかなという気持ちになっていた。
・・・ねえねえ、どうすれば良いの? ・・・
「簡単さ、イメージすれば良いんだ 人間の姿になれって そうすると自分の深層心理に刻まれている姿に変化するんだ 」
・・・ふーん…… やってみるけどナアマ、私の姿見て笑わないでよ ・・・
「私がキノコを見て笑うわけがないだろう どんな姿でもキノコはキノコだ 」
ナアマにそう言われると気が楽になる。私は椅子から降りて床に立つと人間の姿に変化する自分をイメージし魔力を込める。一瞬意識が広がった様な気がすると、今まで低かった視点が高くなっていた。
「ほう、キノコ 意外だな…… 」
ナアマの言葉で私は恥ずかしくなっていた。期待外れでごめんなさい、ナアマ。私は、すぐに元に戻ろうとしたけど、次のナアマの言葉で意味がわからなくなっていた。
「キノコ、お前まだ子供だったのか 元の世界では子供が酒を飲んでいいのか あまり飲まない方が良いと思うぞ 」
「へっ…… 」
私が意味が分からずにいると、ヴァイオレットが大きな姿見を持ってきてくれた。それを見て私は驚愕した。
・・・やっちゃった これ私が好きだったアニメ魔法少女○○○の主人公じゃない 私、自分の元の姿より、アニメの○○○の方が深層心理に残っていたって事 ・・・
正直、私はガーンとショックを受け、自分自身に呆れていた。クレアもキノコさん可愛いというし、シャーロットもお友達になって下さいと言ってくる。それよりもナガトだ。こいつ私の事が好きだと告白していたけれど、さらに熱い視線を送ってくる。
・・・怖い…… 怖いよ、ナガト…… ・・・
私は、ゾクッと背筋が凍りついていた。その時、ドアが乱暴に開けられ一人の男が立っていた。その男は小脇に抱えていたアリスをポンッと放り投げる。ボロボロになっているアリスは、床に転がると口から血を吐いていた。
「こんなのが、この国一番の魔法使いとはね 可笑しすぎて腹が痛いぜ 」
男の顔を見てヴァンパイアレディーが席を立って睨みつける。この男は、あの時の転生者だ。私も席を立っていた。




