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最強の魔法使いに転生したいとお願いしたのに小動物になっていた私  作者: とらすけ
二章 冒険の始まり

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27、イーハトーブの雨


27、イーハトーブの雨



 朝食を済ませた私たちは馬車で首都シン・イーハトーブに向かっていた。パッツィは、朝食後ナガトが後方のポラリスのパーティーの馬車へ送っていった。パッツィは戻る前、私を抱っこすると名残惜しそうにしていたが、私の鼻の頭にチュッとキスすると手を振って叫びながらナガトに背負われ帰っていった。


「キノコさ~ん、なにかあったら絶対連絡下さいよぉ~ 私もシンディもリリーも必ず力になりますからぁ~ 」


 この世界に来たときには私はひとりぼっちだったけど、今では本当に良い仲間たちが出来たと思うよ。今度、時間があるときにパッツィにホットケーキの焼き方をレクチャーして貰おう。私は完璧にホットケーキを焼く自分の姿を想像して嬉しくなっていた。そして、そんな事を思っているうちに眠くなってきちゃった。朝、ホットケーキや他のご飯をお腹いっぱい食べたからだ。見るとナアマやクレア、シャーロットはすでに馬車の中で、柔らかい荷物を枕にして気持ち良さそうに眠っている。私は、馭者台で馬車を動かしているナガトとイブリースに悪いので必死に眠気をこらえていた。会議で長い社長の話に眠気をこらえていた時を思い出すよ。あの時、うとうとしていた私は急に社長に話をふられて、私もそう思いますと適当に答えたら、社長はそうだろうと満面の笑みを浮かべていたけど、他の社員は苦い顔をしていた。後でその時の社長の話の内容が、業績が悪いので今度のボーナスは50%カットだいう話だったみたいで、それに賛成した私は白い目で見られてしまっていたのだ。あの時の失敗を繰り返さない為にも私は頑張るのだ。私は、丸い目を大きく開けて眠気に耐えていたが、ナアマたちのすやすや寝ている姿を見ると、知らないうちに眠りに落ちていた。


ガタッ


 馬車が止まったショックで私は目を覚ましていた。


・・・いけない、いけない 寝ちゃったみたい ・・・


 私は顔を上げるとナアマたちはまだ眠っていた。馬車の幌に雨の当たる音がする。いつの間にか雨が降りだしたみたい。馭者台には二人の姿がなかった。


・・・どうしたんだろう? ・・・


 私は外を覗いてみると、大きな城門は閉められており、その前に数人の門兵が立ちはだかっていた。ナガトとイブリースが何か話しているようだけど、雨音に邪魔されて聞き取れないよ。

 しばらくして戻ってきたナガトとイブリースが困ったという顔をしていた。


「最近、おかしな者が首都に入り込んでいるらしくて、許可証を持った者でないと中に入れないそうです 」


「どうします、キノコさん 力ずくで通りますか 」


 いやいやそれは不味いでしょう、イブリース。私はランスロットたちに連絡して来てもらえば良いんじゃないと思ったが、この世界にはスマートフォンなどの通信端末がないのだった。


・・・ナガト、あなた一人なら忍び込めるんじゃない ランスロットたちに連絡して来てよ ・・・


 私が言うとナガトは嬉しそうな顔をして、任せて下さいと消えていった。おおっ、さすが忍者マスターだよ。やっぱり、忍者や盗賊というのは使い勝手が良いね。ナガトの帰りを待つ間、私たちはテントを張り、待つ事にした。大きなテントを1張り張って、その前にタープを拡げて雨避けにする。雨の中のテントも風情があるものだよね。私は会社のレクリエーションで河原でバーベキューをやった時の事を思い出していた。ワイワイとみんなで楽しくお肉や野菜を焼いていると突然空が暗くなり雨が降ってきたのだ。これはもう中止して撤収だと誰もが思ったけど、社長が雨ごときで撤収してどうするとタープを張らせバーベキューを続行させたのだった。けっきょく雨は通り雨ですぐに止んで、逆に雨上がりの爽やかな空気で気持ち良かったのを憶えている。前にも思ったけど私、前の世界で結構幸せだったのかも。その時は気付かなくても、後から思うと楽しかった記憶が多いよ。私は降る雨を見ながら感傷的になっていた。


「キノコさん、どうです たまには紅茶でも こんな雨の日には紅茶も良いもんですよ 」


 イブリースが私の前にカップに淹れた紅茶を置いてくれた。ミルクティーだった。私は、ペロペロと紅茶を嘗めるとコーヒーとはまた違う美味しさを感じた。ナアマも、いつものようにイブリースに絡まず静かに私を見ている。


「雨は全てを洗い流してくれますからね 雨が上がった後には誰もが爽やかな気持ちで新たに進んでいく事が出来るんですよ 」


「ピイィッ 」


 私は、イブリースにありがとうと答えていた。コイツら私が感傷的になっているのに気付いて元気付けてくれたんだ。ホントに人間以上に人間らしい悪魔だよ。私は、泣きそうになるのを必死にこらえていた。すると雨の中、紙ヒコーキがスーッと飛んでいく。見るとクレアがシャーロットに紙ヒコーキの折り方を教え飛ばしている。


・・・シャーロットもいじめられた嫌な思い出をこの雨で流して、あの紙ヒコーキのように飛んでいけるようになると良いな ・・・


 私は、そのためにも女神様に貰ったこの力を使っていこうと考えていた。



 * * *



「やれやれ、久しぶりに外に出たのはいいが、あんな小動物をどうやって探すか ソドムの街の近辺にいるようだから、その辺りから探してみるか サタンの方は消息不明だし、後回しだな 」


 男は雨の中、傘もささずにいるが、その体はまったく濡れていなかった。


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