26、ホットケーキ
26、ホットケーキ
ガストンは突然の訪問で驚いていたがランスロットたちを招き入れてくれた。
「皆さん、お揃いで何の御用ですかな 」
「実は息子さんの事で報告が上がってきておりまして…… 」
ランスロットが言いにくそうなので、その後をシモンが引き継いでいた。
「単刀直入に言います、ガストンさん 息子さんのカインが徒党を組んで”いじめ”を行っているようですが、ガストンさんはそれを御存知でしょうか 」
「カインが”いじめ”…… そんなこと…… 」
「複数の者から報告が上がっていますので間違いありません 今回もシャーロットを川に投げ込んだようです これは、もう”いじめ”などではなく殺人未遂ですよ 」
「シャーロットを…… それでシャーロットは無事なのでしょうか? 」
「ええ、無事に助けて保護しています ですが、心に深い傷を負ってしまっています 今は神のお側で安全に安心して過ごしていますが、あんな小さな子が死の恐怖を味わったのですよ 謝罪して、二度とこのような事はしないと誓わせて下さい そして、もし誓いを破ったなら子供と云えど断罪します 」
「それが本当なら勿論ですが…… カインがそんな事をするなど…… 」
ガストンがショックを受けていると、そこへ子供が帰ってきた。
「ただいま、父様 」
「おお、アベル カインは一緒ではなかったのかい 」
「兄様は、ランスロットさんたちの姿が見えたので、また出かけましたよ なにかあったのですか? 」
「そうか…… 実はカインが”いじめ”をしていると聞いたのだがアベルは知っているかい? 」
「えっ…… 」
アベルは、しばらく俯いていたが、知っていますと小さな声で答えていた。
* * *
「コーヒーも紅茶も日本茶も、シャーロットには合わんだろう だから、ミルクを温めておいたぞ 昨日、ミルク寒天を美味しそうに食べていたからな 」
酔っぱらっていたと思っていたナアマの言葉に私は驚いていた。きちんと見る所は見ているんだ。ナアマは出世するタイプだよ。私が、そう思っていると、いい匂いが漂ってきた。そして、シャーロットのテーブルの前にお皿にのった美味しそうなホットケーキが湯気を立てて置かれていた。こんな洒落た物をナガトが作れるの。私は驚いてホットケーキを置いた人物を見ると、また驚いた。
・・・ポラリスのプリーストのパッツィじゃない どうして…… ・・・
私が驚いて丸い目をさらに丸くしているとナガトが説明してくれた。
「子供の朝ご飯には何を作ればいいか私にはさっぱり分からなかったからな パッツィを連れてきて作って貰った ここなら首都も近いし、このメンバーなら私が焚き火の番をしていなくとも問題ないだろうしな シャーロット、温かいうちに食べな、パッツィのホットケーキは美味しいぞ 」
・・・ええっ、でもゴモラから首都まで10日はかかるって言ってたじゃない ・・・
確かナガトは前にそう言っていた。本当はこいつ、ワープでも使えるのかと思ったけど、実はもっと簡単な答えだった。ポラリスのメンバーも負傷したプロキオンの治療の為に首都へ向かっている最中だったようだ。なので、私たちの少し後方にいたのである。だから、ナガトが少し戻りパッツィを連れてきたみたい。
「私、キノコさんに絶対恩返しがしたかったんですよ それにしても、あのナガトがこうして皆と仲良くやっているなんて信じられないわ 」
「うるさいぞ、パッツィ 余計な事は言わなくていい 」
「ピ、ピイィ 」
私は、だいぶ協調性が出てきたよと言ったのに、ナガトは通訳してくれなかった。こいつ、まだまだだな。私は仕方のない奴と思いながら、ホットケーキを美味しそうに食べるシャーロットを見ていると、ナアマとクレアもシャーロットに少し食べさせてくれとホットケーキを貰っていた。
「うん、これは美味いな 」
「本当ですね これはもっと食べたいですね 」
「私も、もっと食べたい うち貧乏だから牛乳も卵もバターも買えないから、ホットケーキなんて食べた事なかったの 」
ナアマ、クレア、シャーロットの3人から見つめられてパッツィは慌てて、すぐにもっと作りますと準備を始めていた。
「私も作り方を覚えておきたいな 」
「そうですね 私も自分のレシピに加えておきたいですね 」
「私も作ってる所、見たい 」
ナアマたちに周りを囲まれてパッツィは緊張しているようだが、ボウルに薄力粉とベーキングパウダー、砂糖を入れ手早く泡立て器で混ぜると、今度は別のボウルで牛乳と卵を泡立て器で混ぜていた。そして、薄力粉を混ぜたボウルに牛乳を混ぜたボウルの中身を入れ混ぜ合わせる。後は鉄板で焼くだけだが、私はホットケーキを上手く焼けた事がない。焼きすぎて黒くなったり、上手く膨らまなかったりと散々だった。だから、ホットケーキを上手く焼ける人は無条件で尊敬してしまう。パッツィは、まさに尊敬に値する人だった。
「ちょっと私にもやらせてみろ 」
ナアマが焼くと見事に真っ黒になっていた。
「ナアマさん、今度は私に 」
クレアもチャレンジするが、パッツィのように美味しそうにふっくらと膨らまない。
「二人とも、へたくそぉーっ 」
「ピイィィィーッ 」
私とシャーロットは大笑いしていた。やっぱり、子供は笑顔でいるのが一番だよね。私はシャーロットに二度と悲しい顔はさせたくないと考えていた。




