25、シモンの告白
25、シモンの告白
シモンの告白を聞いたヴァイオレットは信じられない思いだった。シモンが重大な案件を自分に隠していたのも驚きだったが、あのフィッシュバーガー家が関わっているなど正に青天の霹靂だった。
「ガストンはなんと言っているのです? 」
ヴァイオレットは、フィッシュバーガー家の当主の名前を言ってランスロットに訊ねた。
「いえ、先に王に報告をと思いまして、先にここへ参りました 」
ランスロットは頭を下げたまま答え、他の者も膝をつき頭を下げたままだった。
「ならば、ガストンに確認してみて下さい 」
ヴァイオレットは疲れたように言い、一人になりたいのか奥の部屋へ入っていってしまった。ランスロットたちも、すぐに王の間を辞しフィッシュバーガー家へ向かった。
* * *
様々な機器が作動し、光が点滅する異質な空間で声がする。
「あの小動物がまた現れたが、どういうことだ? 」
「今度は勇者パーティーも引き連れて来ていたな 奴らは関係あるのか? 」
「しかし、あのアークエンジェルを苦労せず倒すというのは驚きですね それが、何人もいるというのは、今後の事を考えると脅威かも知れません 」
「ことによると、ここに迫ってくるやも知れんな 警戒するに越した事はない 」
「あの強さ…… まさか、サタンと何か繋がりがあるのでは…… 」
「サタンも早く排除しておくに限るな あやつもこれ以上成長すると何をするか分からん 」
「ネオ・エリュシオンに強化した新しいアイテムを送るとしよう 北の大地に送った絶対魔法防御の甲冑を着た者が行方知れずとなっている それも気になるな サタンの仕業かも知れんしな 」
「ドローンや固定カメラの情報だけでは限界があるな 久しぶりに外へ出るのもいいだろう 俺が行こう あの小動物やサタンの動向を探ってみよう 」
「気をつけなさい あの小動物もサタンも未知数ですからね 不覚をとるといけません 気を抜いてはいけませんよ 」
「へっ…… 俺は普通の人間ではないからな 不覚をとる事などあり得ないぜ まあ、あんたたちはゆっくりと報告を待ってな 」
男の声が消えると共に、男の身体も消えていった。
「まったく自信だけはありますけど、それが油断にならなければ良いのですが 」
「まったく力を貰った転生者というのは、みんなこんなものですかね 謙虚に生きるという考えはないのですね 」
「まあ、奴も我々には逆らえんからな たまには外で息抜きしたいんだろう 外に出れば無双の力だからな いっその事、あの小動物もサタンも滅ぼしてくれれば何の憂いもなくなるがな 」
「まったくですね 奴には、その力がありますしね 」
異質な空間の中で、異質な会話がなされていた。そして、その会話はしばらく続いた後、全員の高笑いで静かになっていった。
* * *
「もうすぐ首都シン・イーハトーブですが、さすがにランスロットたちの対応もまだ終わっていないでしょう ここで野営して明日、首都に入りましょう 」
ナガトの言葉にもっともだと思った私は、テントを設営して野営する事にした。ロッジタイプの大型テントが3張りって、かなりの大人数のようだけど、人間はシャーロットを入れて5人と私だ。ナガトは焚き火の番をしながら外で寝ると言っているので、大人一人にテント1張りだ。シャーロットはナアマと思ったが、さすがに柩の中に眠らせる訳にはいかないのでクレアのテントで寝袋で寝る事で落ち着いた。私は……。柩の中だ……。
ナガトとクレアの作った食事で夕飯を済ませ、私たちは恒例の酒盛りを始めていた。
・・・まったく、子供がいるのに何やってんだよ ・・・
そう思いながら私もグラスに注いでもらったお酒をペロペロと舐めていた。すると、クレアがシャーロットに話しかけていた。
「すまんな、コイツら酒好きなものでな 」
クレアがシャーロットに謝罪しているが、シャーロットはううんと首を振る。
「大人の人は色々大変だから、お酒を飲んでストレス解消しているんだよね 」
シャーロットの言葉にクレアは苦笑して、私は驚いていた。
・・・シャーロット、いったい何歳なの ・・・
でも大人びていても子供だ。まだそんなに知らない大人たちの中で緊張しているに違いないよ。私が人間の体だったら甘いものでも作ってリラックスさせてあげるのにと思っていると、バックの中を漁っていたクレアがニコッと笑っていた。
「シャーロット、寒天があった ミルク寒天を作ってあげよう 」
「寒天……? 」
「そう ゼリーみたいなものだ 美味しくて食物繊維も豊富だから体にもいいぞ 」
・・・おおっ、ナイス クレア ・・・
私は鍋に牛乳と寒天を入れて煮ているクレアに、ピイィッと声をかけていた。実は私も寒天大好きなのだ。プリンやゼリーも良いけど、やっぱり寒天だよ。私が小さい時も、お母さんがよく作ってくれたっけ。私が、思い出に浸っているうちにクレアは最後に砂糖を入れて溶かし、型に流しこんでいた。
・・・クレア、私も手伝うよ ・・・
私は無詠唱で氷の固まりを出していた。その氷に穴を空け、そこに型を入れ冷やすのだ。ほどなく寒天は固まり、クレアはお皿にミルク寒天を乗せシャーロットにどうぞと渡していた。
「甘くて冷たくて美味しい 」
恐る恐る口にしたシャーロットだったが、一口食べて笑みを浮かべていた。それは、私が初めて見るシャーロットの子供らしい笑顔だった。




