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最強の魔法使いに転生したいとお願いしたのに小動物になっていた私  作者: とらすけ
二章 冒険の始まり

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14、勇者パーティーのシモン


14、勇者パーティーのシモン



私は、ナアマに淹れてもらったコーヒーをペロペロと嘗めていた。そんな私を、ナアマも嬉しそうに見ている。


・・美味しいぃ……。やっぱり、コーヒーを飲むと落ち着くね・・


私は、考えた。この一杯のコーヒーが何度私を助け、癒してくれた事だろう。


・・勇者パーティーの僧侶シモンか……・・


さすがに勇者の中の勇者、ランスロットのパーティーである。勇者の仲間も凄い能力を持っているという訳だ。何れにしても、そんな瞳を持つ者がいるのでは、馬車の中を覗かれたら終わりだ。魔王が二人も揃っているのを見ては、ただでは済まないだろう。すると、クレアが私が出て行こうと言ってきた。


「すまんな、キノコ。せっかく、仲間にして貰ったが、ここは私が出て一度捕まるのが良いだろう。心配するな今度は逃げ出すさ、こう見えても私も勇者と呼ばれていたのだからな」


・・ちょっと待って、そりゃクレアなら普通の警備隊や騎士なら逃げられるだろうけど……。ねぇ、ナガト、あの勇者パーティーを相手にナガトなら逃げられる?・・


私は馭者台にいるナガトに尋ねてみた。


「いや、私でも無理でしょうな。一人二人なら、なんとかなるでしょうが、ランスロットのパーティー全員となるとまず不可能でしょう。それだけ、あの勇者パーティーは別格なんですよ」


「確かに奴らは手強いですよ。連携が見事ですからね。勇者ランスロット、騎士トリスタン、魔法使いアリス、僧侶シモン、この4人が人間界では最強でしょう。まあ、私の敵ではありませんがね」


ナガトの言葉に、イブリースが続ける。さりげなく自慢しているような気がするぞ。でも、思った通り、クレア一人では逃げるのは無理だろうな。ここは、やっぱり私が行くか。


・・それじゃ、やっぱり私が行くよ。心配しないでみんなは馬車の中にいてね・・


私は、そう伝えると止められる前に馬車の外に飛び出していた。


「うわっ、可愛い。リスちゃんだ。馬車に乗ってたの」


一人の女性が私を抱き上げると、頬ずりしてきた。そのローブをまとった格好から、この女性が魔法使いアリスだろう。私は、誰か言葉が分かる人はいないかと声をあげていた。


「ぴいぃぃーーっ 」


「あら、このリスちゃん、何か話したいみたいよ」


神官の服装をした女性が近づいて来る。僧侶のシモンであるのは間違いない。その瞳を見て私は、体が震えてきていた。会社で失敗をやらかして、部長から睨まれた時のような恐ろしい瞳だった。


・・部長、ごめんなさい・・


私は、心の中で謝っていたが、私に向かって歩いて来ていたシモンが急に足を止めていた。そして、額から汗が流れ落ちる。心なしか唇が震えているようだった。


・・どうしたんだろう?・・


私が、シモンに目を向けると、シモンはひっと小さく声を上げ硬直しているようだった。


「どうしたの?」


私を抱いているアリスが不思議そうにシモンに声をかけるが、シモンはアリスに何か言おうとして言葉が出ないようだった。


「どうしたんだ?」


勇者ランスロットと騎士トリスタンも、シモンを不思議そうに見つめている。だけど、シモンは胸に手を当てて震えているようだった。


「これは、ただ事ではないぞ。魔王との戦いの時でも、冷静に状況を判断して的確な指示を出していたシモンがどうしたというのだ。一体何に怯えているのか分からん」


トリスタンは、初めて見るシモンの姿に戸惑っていたが、ランスロットは聖剣エクスカリバーに手をかけていた。


「アリス、そのリスを置いて離れろ」


・・えっ、ちょっと待ってよ。私は話しに来ただけなのに、いきなり剣を抜くなんてあり得ないんだけど・・


「どうしたんだ、ランスロットまで……」


「シモンは見たんだ。そして、ああなった。このリスは、リスの姿をしているが、おそらく魔王クラスの化け物なのだろう。だから、斬る。アリス、早くそのリスを放して離れろ」


・・ちょっと、いきなり斬るとか失礼にも程があるじゃない。初対面の時には名刺交換して挨拶しないと。社会人の常識じゃない・・


私は、ランスロットに説教してやろうと思ったが、私のすぐ近くで怒りが爆発していた。


「ちょっと、ふざけないでよランスロット。こんな可愛いリスちゃんを斬る?冗談じゃないわ。頭、沸いてんの。私が動物好きなの知ってるでしょう。その私の目の前でリスちゃんを斬る?あり得ないわ。そんな残酷な人間は私が始末してやるわよ」


アリスの右腕が光り始め、腕の周りに魔方陣が浮かび上がった。そして、それは空中にも幾つも浮かび上がる。


・・うわあ、立体多重魔方陣。これだけ魔方陣が重なると、増幅しあって相当な威力になるよ。ちょっと、周りの人たち不味いよ、これじゃ・・


「やめろ、アリス。なに考えているんだ。周りに警備隊の人だっているんだぞ」


「あなたが、剣を収めれば良いじゃない」


「二人とも、止めないか」


トリスタンが割って入ろうとするが、聖剣と魔力の相互の力のぶつかり合いではじかれてしまう。


「大丈夫だからね、リスちゃん。あなたを斬ろうとするような野蛮な人間は私が始末してあげる」


アリスは、私をぎゅっと抱き締めていた。



 * * *



ナガトは、街道警備隊に早くここを離れろと伝え、馬車の中では外の様子を見ていたイブリースが感嘆の声を上げていた。


「さすがです、キノコさん。私たちが相手をしては具合が悪いですが、人間同士を争わせるなら私たちに敵意を向ける者はいないでしょう。天空の勇者ランスロットと深淵の魔法使いアリスですか。これは面白い見物ですね」


イブリースは、ワクワクしていたが、ナアマはまるで興味がないというようにコーヒーを淹れてクレアと飲んでいた。クレアも、こんな時にコーヒーを飲んでいて良いのかと思いながらも、コーヒーをごくごく飲んでいた。


「美味しいですね、このコーヒー」


「ほう、このブレンドの味が分かるか。なかなか見込みがあるな。今度、私が鍛えてやろう」


ナアマも上機嫌で答えていた。


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