12、仲間
12、仲間
騎士は剣を振りかざして私たちに向かって来ようとしたが、警備隊のみんなに押さえつけられていた。
「理由は訊きませんが、あなた方の事だ。何か理由があるのは間違いありません。さあ、これが牢獄の鍵です」
警備隊のみんなは騎士を押さえながら私たちに牢獄の鍵まで渡してくれた。ナアマは鍵を受けとると牢獄を開け、クレアを連れ出す。
「どういうことだ?」
クレアは不審な顔をするが、いいからついて来いと無理矢理手を引いて連れ出していた。そして、警備隊に告げる。
「いいか、お前たちは私たちに力ずくでクレアを奪還されたと言っておけ。そっちの騎士もいいな。警備隊に押さえつけられたなんて言えないだろう。だから、私たちにやられた事にしておくんだぞ」
ナアマは、そう言うとさっさと詰所から出て北門に向かっていた。クレアも、訳が分からないまま大人しくついてくる。そして、北門にはナガトが馬車を用意していた。私たちは、すぐに馬車に乗りソドムの街を後にしていた。
・・クレアの手枷を解いて上げてよ・・
私がナアマにお願いすると、ナアマはあっさりと手枷を破壊し、ポイッと馬車の外に投げ捨てた。クレアは目を丸くしていたが、なぜ私を助けたんだと逆にこちらに質問してくる。
「キノコが、お前を助けろと言うからな」
ナアマが、あっさりと言うがクレアは訳が分からないという顔をする。
「キノコというのは誰なんだ?」
「ピイィィィーーッ」
私が声を上げるとクレアはまた目を丸くした。
「このリスが、キノコ……」
・・驚かせて、ごめんなさい・・
私が謝ると、クレアはいや謝らなくといいと言い、私の方が驚いていた。
・・私の言葉が分かるの?・・
「私は、元はレンジャーだったから多少動物の言葉は分かるんだ」
そして、クレアは私とナアマの顔をジロジロと見比べていた。
「なんだ、失礼な奴だな。私の顔に何かついているか?」
ナアマが顔をジロジロ見られて文句を言うが、クレアは、失礼したと頭を下げていた。
「今、気がついたが、あの蒼い大蛇を倒したのはキノコの方なのか?」
「ピイッ」
別に自慢する訳ではないが、そうですと素直に私は答えていた。ナアマは、今頃気がついたのかと呆れた顔をしていたけれど、普通分からないって……。小動物と美人剣士だよ。どう見てもナアマの方が強そうでしょう。それなのに、クレアはよく気がついたよ。
「やはり、そうか。いや、キノコの瞳が発する気が尋常ではないからな。それに、その女剣士が大切に連れている所を見ると、ただ者ではないと感じたのでな」
なるほど、サタンも私の目がどうのと言っていたけど、私の目って、そんなに怖いのかなぁ。これは少しショックだよ。自分では黒くて丸くて可愛いお目めと思っていたのに……。
・・それでクレアはどうして捕まったの?あんな騎士くらいなら逃げられそうだと思うけど、わざと捕まったってどうして?蒼い大蛇を倒した人の顔を見たかったってだけじゃないよね・・
私は、気を取り直して疑問に思っていた事を訊いてみた。クレアは、顔を伏せると、しばらく迷っていたようだったけど、次に顔を上げて真っ直ぐに私を見て言った。
「そうだな、お前たちは蒼い大蛇を倒した本物の勇者たちだ。でも、私は違う。私は国王から称号を貰った本物の勇者ではないんだ。私は多少腕が立つレンジャーだった。それで、困っている人たちを助けていくうちに誰かが勇者と言い始めたんだ。私は別に気にしないでいた。そう言いたい人は、そう呼べばいいと軽く考えていた。それが、だんだんと大きく広がっていった。そして、勇者クレアと共に戦わせてくれと集まって来たのが、私とパーティーを組んでいた者たちだ。私は、勇者ではないと言ったのだが、そんな聖剣を持っているのだから間違いないと言って私に着いてくるようになったのだ。この聖剣は昔助けた戦士から譲り受けた物なのにな。それからの私は担がれた御輿状態だった。依頼から交渉までみんな周りがやってくれた。私は、ただいるだけで良かった。長年そんな暮らしで私は正直もう疲れていたのだ。私の気持ちとはまるで関係なく進んでいく毎日。御輿として担がれるのも、うんざりだった。そこで、今度の戦いだ。こんな魔物は見たことも会ったこともなかった。こちらの攻撃は何も通じず、あっという間に僧侶と戦士が殺された。すると、魔法使いハーブが残っていた戦士マッジを魔物の前に突き飛ばして、私の手を握って逃げ出したのだ。ハーブは私さえ無事なら、また勇者パーティーとして贅沢な生活が送れると思ったのだろう。逃げてる途中で私はハーブとは別れた。もう私は、あんな生活は嫌だったのだ。私は、ただ人の助けになれば、それだけで良かった。そこで、首都の騎士たちと会った。どうやら、ソドムの街から私を捕縛して欲しいと依頼があったようだ。そこで、私は街が無事で、私の代わりにあの蒼い大蛇を倒した冒険者がいると聞いた。もう私はどうでも良かったが、一目その冒険者の顔を見たかった。それだけだ」
クレアは暗い顔で俯いていた。処刑から逃れられても嬉しそうな顔はしていなかった。私は、そんなクレアをこのままではいけないと思った。人生は楽しいんだよ。こんな事で終わりにしたら勿体ないじゃない。仕事で、どんな辛い事があっても、それを乗り越えれば必ず楽しい事がやってくる。そう思ってみんな頑張っているんだよ。だから、クレア、あなたにもきっと楽しい事が待っている。その楽しい事を味わおうよ。この世界を平和にして……。
「ピイィィィッ」
私は、クレアに私たちの仲間になるよう声をかけていた。




