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3、魔物の襲撃


3、魔物の襲撃



「食事は18時に部屋まで運んで来て貰おうか」


「はい、かしこまりました」


「あっ、お酒もつけてね。高級な蒸留酒よ。安いお酒なんて持ってきたら、こんな宿壊してあげるからね」


「はい、一番上等なお酒をお持ちします」


「まあ、こんな辺鄙な街にそれほど上等な酒があるとは思えんが、俺達の気に入る酒をボトルで持って来い。分かったな、主人」


「はい、かしこまりました」


 勇者一行と宿屋の主人の会話は丸聞こえであった。私はその会話を聞いているうちに腹が立ってきていた。たまに客だからといって傍若無人な態度をとる者がいる。接待の時でも自分たちが大口の取引先だと偉そうな輩がいるが、結局長い目で見るとそういう所は消えていく。残るのは誠実に応対する会社なのだ。うちの会社だって馬鹿ではない。そういう会社とは縁を切っていくのが当たり前。この勇者一行だって、一度でも不覚を取ればもう信用を失くすだろう。それをまったく分かっていない。特にこんな態度をとっていれば尚更だ。


・・ねえねえ、イブリース。勇者ランスロットは認めていると言ってたけど彼の事よく知ってるの・・


「ええ、彼は私に戦いを挑んできましたからね。人間ごときが魔王である私に戦いを挑むなど笑止と思いましたが、なかなかどうして善戦してくれましたよ。彼個人の力もありましたがパーティーの連携が見事でしたね。私は、それで人間に興味を持ちました。人間は個人の力よりも連携した力が素晴らしいと思いましたよ。まあ、結局はパーティーの回復役である僧侶と司教のマジックポイントが尽きて撤退していきましたがね」


 そこでナガトが驚いた目でイブリースを見ていた。


「勇者ランスロットが破れた魔王とはイブリース殿であったのか。あの時、無敵といわれたランスロットが破れて、みんな絶望の淵に落ちたものです。ランスロットで勝てないのであれば、もう人間に勝ち目はないと人類全てが諦めていたのですが、ランスロットは更に自らを鍛え、聖剣”エクスカリバー”も手に入れたのです。彼は自分が人類の希望になる為に常に行動しています。今では絶対魔法防御の白銀の鎧も身につけていますよ」


 私はナガトの話を聞いてドキッとした。まさか私が灼熱の迷宮で倒した白銀の騎士はランスロットじゃないよね。私は恐る恐るイブリースに目を向けた。が、イブリースは私の視線にまったく気付かないようにナガトに向かって得意気に話していた。


「ふふん、ナガト。世の中に絶対などという物はないのですよ。その白銀の鎧もキノコさんが魔力で破壊しました。故にもうその鎧は絶対ではないのですよ」


 ナガトは驚いて今度は私に目を向けてきた。


・・あっ、たまたま調子良かったんだよね。それより、そのランスロットって人は何処にいるの・・


 私はしらばっくれて訊いてみたら、ナガトは首都にいる筈だと答えてくれた。


「人類の防衛力強化の為、北の国王に頼まれて騎士の訓練をしていると聞いています。ランスロットに会いたいのですか」


・・あっ、そうではないけど、立派な人らしいから普段は何をやっているのかと思って・・


 ランスロットが無事だったなら私が倒したのは全然別人だろう。イブリースもランスロットだったら気付く筈だし、良かった。もし良い人を倒してしまったら気分が悪いもんね。私は、ホッと安堵していた。



 * * *



 それから、しばらくは首都の情報集めや馬車の手配などで私たちは走り回っていた。その間、勇者一行は毎日お酒を飲んで騒いでいる。私たちは呆れながら部屋で珈琲や紅茶を飲んで寛いでいると突然半鐘が鳴り響いてきた。その瞬間ナガトはその半鐘の情報集めの為、風のように飛び出していった。


・・さすが忍者マスターだね。ナガトに任せておけば安心だよ。でも全然鐘が鳴り止まないね・・


「火事でもないな。火の手は見えんし煙も上がっていない」


「でも、これだけ鳴り止まないのは異常ですね」


 私たちが、あーだこーだ言ってるうちにナガトが戻ってきた。


「魔物が街を襲ってきたようです。警備隊が門を死守していますが、この街の警備隊程度では突破されるのは時間の問題でしょう。そこで組合からも冒険者にも協力依頼が出たようです。私たちはどうしますか」


 ナガトが私の目を見てくる。


・・もちろん依頼があったなら協力するよ、ナガト。一番警備が弱い所はどこ?・・


「それは南門です。警備が手薄な上に魔物の数も多い。しかも冒険者組合からも遠いので援軍が駆けつけるのも遅くなるでしょう」


・・分かった。じゃあ南門へ直行しよう。全速力で行くよ、ナアマ、イブリース・・


 偉そうに言いながら私はナアマの肩にちょこんと乗っていた。私だって走るの速いけど体が小さいからナアマの方が速いんだよね。でも短距離なら負けないよ。私がぶちぶち言い訳を呟いていると、あっという間に南門に到着していた。警備隊は傷だらけになりながらも魔物たちを撃退していたが、その数は減ることはなく逆に増えてきていた。


「はぐれ魔物が襲ってきたと思ったのだが、この数をみると違うようだな」


「これだけの数という事は、誰かに命令されて来たと推測されますね。しかし、この魔物をみるに魔王サタンでも魔王ラーヴァナでもないでしょう」


・・ふーん、とにかく撃退しようか。私に任せてっ・・


私は爪楊枝の剣に魔力をエンチャントして魔物の群れの中に飛び出していた。


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