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35、空間の悪魔


35、空間の悪魔



 私は剣を収めてナアマたちの下に戻った。ナガトも戻ってきたが、今の悪魔の事が気にかかる。


・・今のユークリッドっていう悪魔、何者なの? ・・


 私の質問にイブリースが答えてくれた。


「奴は空間を操る悪魔です 能力はそれだけですが、その分その能力に特化しているので僕やナアマにもユークリッドの動きは掴めません 要は不意打ちや暗殺が得意な悪魔といえるでしょうね そのユークリッドを察知するとは、さすがキノコさんですね 」


 なんかたまたま嫌な予感がして、それが的中しただけだけど、イブリースとナアマの二人でも感知出来ないなんて不味くないだろうか。イブリースが言うように不意打ちされたら防げないのでは……。私はナアマに、この悪魔相当ヤバい奴じゃないのというと手を口の前で振り笑っていた。


「心配するなキノコ イブリースが言ったように奴は空間操作にのみ特化している 不意打ちされたとしても蚊に刺されたようなものだ 案ずる事はない 奴が相手に出来るのは非力な人間だけだ 上司にこき使われる、ただの馬鹿だと思ってればいいさ 」


 ああ、なんかそれは可哀想な気がする。会社でもいたよね。やたら上の人に便利に使われてる社員。本人は自分は頼られてると思っているみたいだけど、端から見ると体の良い便利屋だよ。まあ、でも本人が喜んでいるから良いけど……。あのユークリッドという悪魔も、嫌々やっているようではなかったからいいか。私は一人、ウンウンと頷いていたが、ナアマが言った中で気になるワードがあった。魔王である二人にとっては蚊に刺されたくらいでも、人間には有効な攻撃力があるという事だ。


・・・ねえねえ、ナアマ それならナガトが狙われたら不味いんじゃない ・・・


「言ったろう、キノコ 奴の攻撃が有効なのは非力な人間だけだと キノコも見ただろう、バジリスクをソロで倒したナガトの実力を 奴は確かに忍者マスターといわれるだけはあるな そんなナガトは間違いなく非力な人間ではないな 」


 なるほど、確かにナアマに言われるまでもない。ナガトは非力な人間なんかじゃないよ。とすると、あのユークリッドが相手に出来るのは冒険者ではない普通の人や、小さな子供くらいになるね。ユークリッドのインビジブルな能力は凄いけど、別に恐れる必要はないという事か。私は一安心したが、ナアマが言った中にもう一つ気になるワードがあった。


・・・それで、ラーヴァナって誰なの? ・・・


 私の質問にナアマもイブリースも苦笑する。


「ラーヴァナは魔王の一人だ しかし、人間たちが言う三大魔王ではない ラーヴァナは姑息で表に出てこないからな 人間たちは、その存在に気付いていないかもな それに、さっきのようにユークリッドに常に世の中の情勢を探らせているから、それで自分の身を守る事を最優先にしている 少しでも不穏な動きがあると、すぐに身を隠してしまう でも、ネクラ同士イブリースとは仲が良いようだがな 」


「相変わらず人に喧嘩売ってきますね、ナアマ 僕が、あんなのと仲が良いわけないでしょ 奴は人間の舌を集めている変質的なコレクターですよ そんな特殊な趣味持っている奴と話が合うわけないでしょう 」


「イブリース、お前だって切手やコイン集めているコレクターじゃないか 」


「切手やコインは立派な趣味ですよ それを言うなら、部屋の中いっぱいにメルヘングッズ溜め込んでいるあなたはどうでしょう いい歳した悪魔が恥ずかしいと思いませんか 」


「なんだと、イブリース 喧嘩売ってるのは貴様の方だろう 」


 また始まったよ。めんどくさい奴らだなぁ。私は無視して次の質問を二人に投げ掛けた。


・・・それなら、三大魔王のもう一人は誰なの ・・・


「「魔王サタンだ 」」


 二人は声を揃えて言う。まったく息ぴったりじゃないの。私は感心してしまう。それにしても、この世界にもサタンがいるのか。魔王といえばサタンだもんね。でも、この世界のサタンは、私の知っているサタンとは違うかも知れないよ。私はサタンがどんな悪魔なのか訊いてみた。


「サタンは強大な力を持っている それに唯我独尊で協調性は皆無だな 自分の好きなように行動している 私も奴の本気の力をみたいと戦いを挑んでみたが、まるで興味がないように逃げられてしまった 」


「ふふふっ、つまりナアマ程度では相手にするのも馬鹿らしいと思っているのでしょうね 」


「ふんっ、お前のように極大魔法をカウンターで返されて、尻尾を巻いて逃げてくるよりはマシだろう 」


「なんだと、ナアマ 」


 あぁもうコイツら、まともに会話も出来ないのかと私はげっそりしていた。でも、どうやらサタンは私のイメージ通りの魔王のようだ。そこへ何やら良い匂いが漂ってくる。ナアマとイブリースの夫婦漫才に嫌気がさしたのか、離れた場所にいたナガトが朝食の準備をしていた。そして、テーブルの上に朝食を並べている。私のお腹がぐうっと鳴っていた。


・・・二人共、ご飯食べようよ ・・・


 私がテーブルに向かって走って行くと、ナアマとイブリースも笑顔になってついてくる。コイツら、お腹が空いてイライラしてたのか。まるで子供じゃないの。私はナアマに抱っこしてテーブルの上に乗せて貰い、目の前の朝食を見た。カリカリのベーコンエッグに塩コショウを振ったお皿に、サラダ、パン、それにスープもついている。サラダには私の好物の胡麻ドレッシングがかかっているし、スープも好物のオニオンスープだ。カップラーメンだけで済ませていた以前の私の朝食とは全然違う。


・・・ナガト、ありがとう ・・・


 豪華な朝食を見て私は幸せな気分になっていた。



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