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34、分身の術


34、分身の術



 スケルトンを倒したナガトはバジリスクに向かっていく。ナガトは聖刀”蛍丸”でクリティカルヒットを狙うがバジリスクには効果が発動しなかった。


「クリティカルヒットは自分よりレベルの低い対象には抜群の効果を発揮するが、自分と同程度、あるいは高い相手には発生率がかなり低くなるからね 忍者マスターといえどもバジリスク相手ではキツイだろう」


「そうだな、それにバジリスクには状態異常攻撃がある これが厄介といえる 状態異常にされてしまえば人間は無力になるからな 高位の魔物程、状態異常の攻撃を持っている まあ私には、全ての状態異常の耐性を持っているから効かぬがな アイツには荷が重いだろう 私がいくか 」


 ナアマが焔の剣”レーヴァテイン”に手をかけ歩き出そうとするが、私はピイッとナアマを止めていた。


・・・自分から行ったという事は、自信があるんだよ もう少し見ていてあげようよ ・・・


 私は、いざとなったら自分も飛び込めるように魔力を剣に込めながらナガトの戦いを見ていた。ナアマもイブリースも私がそう言うならと大人しく傍観している。

 さすがにバジリスクの攻撃は凄まじい。レベルの低い冒険者であったなら、1分ももたずに倒されているだろう。私もハラハラしながら見ていたが、私の目がおかしいのか、何時の間にかナガトの体が二つに見えていた。


・・・どういうこと? ・・・


 私はナアマとイブリースに訊いてみると、二人の目にもナガトが二人いるように見えるらしい。


「今、私たちは視覚だけに頼って見ている訳ではない だが、それでも二人に見えるという事は、あれは幻ではなく本物だという事だ 話には聞いた事がある 忍者、それもマスターと呼ばれる者の中には、分身の術というものを使える者が存在するらしい 」


「僕も聞いた事がありますよ ですが、実際に目にするのは初めてです なるほど、キノコさんが同行を許す訳ですね あの忍者、相当な腕前のようです 」


 分身の術、もちろん私も聞いた事あるよ。でも、その本物を見るのは初めてだった。そして、見ているうちに、ナガトが三人、四人とまた増えていく。そのどれもが私の目には実体に見える。


「大きな口を叩くだけの事はあるな 人間にしては、なかなかやるじゃないか 」


「ふむ、そうですね このレベルなら、パーティーを組めば魔王にも対抗出来るでしょう まあ、僕には及びませんがね 」


 ナアマとイブリースもナガトの動きに感心していた。4人に増えたナガトは、それぞれの分身から聖刀”蛍丸”で攻撃を仕掛ける。さすがにバジリスクといえど四方から繰り出されるナガトの攻撃になす術がなかった。分厚く硬い表皮も斬り裂かれていきバジリスクの動きもだんだんと鈍ってきていた。


「バジリスクをソロで倒すか、まあ合格点だな これだけの力があれば足手まといにはならんだろう 」


「料理当番と、買い物とか頼むにも便利そうですね 」


 はい、ナガトのパシリ決定。ナアマとイブリースも、取り敢えずナガトの力を認めてくれたようで何よりだよ。でも、何でナガトは私を襲った時に、この術を使わなかったのだろう。いつか機会があったらナガトに訊いてみようと私は思っていた。


ズーンッ


 大きな音を立ててバジリスクが地面に倒れると、ナガトは”蛍丸”を鞘に納め、こちらに向かって歩いて来る。肩で息してるように見えるけど、あれだけの魔物を一人で倒したのだから当然だろう。


・・・お疲れ様 ・・・


 私はナガトに声をかけた時、何か嫌な予感がした。背中にゾクリと寒気が走る。


「ピイィィーーッ 」


 私は飛び出していた。聖剣”フラガラッハ”はまだ使用出来ない。私は聖剣”ラグナロク”を剣にエンチャントした。そして、ナガトの背後の空間を”ラグナロク”で斬りつける。


ズバァッ


 その途端、何もないと思っていた空間から血が吹き出した。


「まさか、これは…… 」


 ナアマとイブリースが驚愕するが、血を吹き出した空間に徐々に人の、いや悪魔の姿が浮かんでくる。


「ユークリッド、やはり貴様か 何しに来た 」


 空間から姿を現した悪魔は不敵な笑みを浮かべていた。


「これは、お久しぶりです ナアマ様、イブリース様 私は主の命で、少し様子を見に伺っただけですよ なにしろ魔王であるお二人が、なにやら手を組んで行動しておられる 何かあると思うのが当然でありましょう それに、何ですかこの小動物は、魔法感知や人間が開発したレーダーにも特定出来ない私の存在を見抜くとは…… 偶然とは思えませんが…… 」


「ふん、ラーヴァナの命令か 奴に言っておけ 我らは冒険を楽しんでいるだけだ 我らの邪魔はするなと それにお前、気を付けろ キノコの気分を害したら殺されるぞ 」


「まあ、キノコさんに手を出そうとしたら僕があなたを殺しますけどね、ユークリッド 」


 ナアマとイブリースの言葉で、ユークリッドと呼ばれた悪魔は私を睨み付ける。冗談じゃない、気合いで負けてたまるか。取引先との商談でも退いてしまえば相手の有利な条件で契約をされてしまう。ここは退けない。私は精一杯、痩せ我慢してユークリッドを睨み付けていた。すると、私を睨み付けていたユークリッドが目を逸らす。


「なるほど、只者ではないようですね この黒い瞳の中に底知れない深淵を感じます 私は様子を見てこいと命令されただけなので、本日はこれで失礼しますよ 」


 そう言うとユークリッドの姿は忽然と消えていた。私は、しばらく聖剣”ラグナロク”を構えていたが、ユークリッドの気配も、再び姿を現す事もなかった。




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