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27、白桃の眠り3


27、白桃の眠り3



 ジャイアントスケルトンの足下をすり抜け広場に飛び込んだ私は周囲を見渡す。私の目に見える範囲には何も見当たらないが、この広場はかなり広いようで全てを見渡す事が出来ない。スケルトンは一瞬私を見失ったようだが、すぐに私を発見して追いかけてくる。


・・・こいつ、骸骨で目なんかないのに、チョロチョロ動く私を正確に追ってくるよ 何か感知する能力があるのは間違いないね ・・・


 私はスケルトンの攻撃から逃げながら、何かないかと周囲を探っていた。


・・・聖剣”フラガラッハ”が使えればなぁ ・・・


 私は無い物ねだりをしてしまう。聖剣”フラガラッハ”は反則級の剣だけど、一度使用すると次に使用するまでインターバルが必要になる。何度でも無限に使えるわけではないのだ。いくら、私がイメージして魔力を注ぎ込んでも、顕現してくれない。そのインターバルが、どれくらい必要なのか、まだ把握出来ていないが現時点で使用出来ないのは間違いなかった。


・・・それにしても何だろう? この広場に入ってから視線を感じる もちろん、スケルトンの視線じゃない、別のものだ 大勢の人に観察されているようで気持ちが悪い ・・・


 私はスケルトンの攻撃を避けながら、背筋が寒くなっていた。


・・・このダンジョンで亡くなった冒険者の魂が漂っているのかなぁ ・・・


 私は自分で想像して、ぶるぶると首を振っていた。


・・・ダメだ、ダメ このスケルトンに集中しないと、考えるのはそれから ・・・


 私がスケルトンの攻撃を避け広場を駆け回っていると、ある一画で異様な気配が漂っていた。おそらく人間では、エキスパートの盗賊や忍者でなければ感じる事の出来ない気配だろう。だが小動物の私は、その本能でそこに何かあると感じていた。


・・・トラップフロアだ あそこに何か仕掛けられているよ ・・・


 私は確信していた。何があるか分からない。でもそこにスケルトンを誘き出して、罠を発動させてやろうと考えた私は、スケルトンを惹き付けるように動き、そのフロアにスケルトンを入れた。その途端スケルトンの姿がぐにゃりと歪む。


・・・テレポート? ・・・


 スケルトンの姿はそのまま消えていった。私はしばらく様子を見ていたがスケルトンの姿が再び現れる事はなかった。


・・・やっぱり、テレポートの罠だったんだ あのスケルトンは何処に飛ばされたんだろう それにしても、このダンジョン テレポートのトラップが多いよ 気を付けないと知らないうちに何処かに飛ばされているかも知れない ・・・


 もし”ポラリス”のメンバーが次々にテレポートされていたら発見するのが容易ではないと考えていた。とはいえ、何も手がかりなしではナガトに申し訳ない。私は、再び剣を構え広場の奥に向かった。そして、そこでさらに奥へと続く通路を発見する。途中、泉や宝箱を発見したがスルーしていく。泉はおそらく体力回復や魔力回復の泉だろうと思うが、罠が仕掛けられているかも知れない。宝箱は開けて中に何が入っているのか非常に気になったが、今は”ポラリス”のメンバーを探すのが先だ。こんな深い階層の宝箱には、まず罠が仕掛けられているだろう。宝箱の罠にかかってしまっては時間が勿体ない。私は、後ろ髪を引かれながら宝箱を通り過ぎていた。



 * * *



 数え切れない程の様々な機器の作動音がし、その機器が灯す光が動く異質な空間で声が聞こえる。


「あの小動物は何者だ? かなり知能があると思われるが…… 」


「そうだな、ジャイアントスケルトンをトラップにかけて転送させた 偶然ではなく意図してやったのだろうな 」


「奥に進んで行ったが、この奥にカメラは設置してあるか? 」


「いや、通路にはないな ドローンを飛ばすか、固定モンスターの”ルーシーズ・ファントム”の所まで行ってくれれば確認出来るだろう 」


「ドローンを飛ばすと気づかれる恐れがあるな 小動物は危険を回避するために耳がいい ここは、”ルーシーズ・ファントム”の所まで行くのを待とう 」


「よし、それではしばらく待機しよう 」


 それを最後に声は聞こえなくなり、周囲の機器に点滅する光や動く光だけが空間を彩っていた。



 * * *



「おい、ナアマ まだ終わらないのか、早くしろ キノコさんをこれ以上待たせる気なら殺すぞ 」


「うるさい奴だな、イブリース 貴様と違って女は準備が大変なんだ キノコなら、当然分かってくれるさ 私の友だちだからな、キノコは 」


「分かってないのはお前だ、ナアマ キノコさんは1000年以上生きられる我らに比べて遥かに寿命が短いんだぞ キノコさんにとって時間は一番貴重なんだ 一分一秒でも無駄に出来ない だから、早くしろ 」


「キノコの寿命が短い……? そうか、それであんな凄まじい力を持っているのか…… だったら私の命を分けてやる そうすればキノコはもっと生きていられるだろう 」


「何を言っているのか分かっているのか、ナアマ 自分の寿命が縮むんだぞ 自分の命を犠牲にするつもりなのか それに、もしキノコさんの魂の器のキャパシティを超えてしまったら、その時点でキノコさんは消滅してしまうぞ 」


「キノコの器がそんな小さい訳がなかろう それにキノコは私の命の恩人だし、友人のキノコのいない世界など、もう私には耐えられない 」


 簡単に言うナアマに対してイブリースが言葉がなかった。



 * * *



 ダンジョンの外でナガトはただ待っていた訳ではない。”白桃の眠り”で何が起こったのか情報を集めていた。その為、真っ先に盗賊プロキオンの所に向かい対面していた。だが、プロキオンはダンジョンからなんとか脱出してきたものの、そのまま気を失い、まだ意識が戻っていなかった。


・・・奴らは大丈夫なのか ・・・


 ナガトは、ダンジョン内に取り残されている”ポラリス”のメンバーを案じていたが、まだキノコからの連絡もなく不安が高まっていた。キノコは、何か情報を掴んだらノートに書いて、それをナガトと二人で決めた場所に転送すると言っていたが、今だ何も転送されてこない。”ポラリス”の情報が何もないのか、あるいはキノコに何かあったのか。ナガトは自分もダンジョンに飛び込みたい気持ちを必死に抑えていた。



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