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26、白桃の眠り2


26、白桃の眠り2



 次の階層に降りた私は周囲を見回した。階段を降りたすぐの場所は広場のようになっている。どれだけ広いのか先が見渡せなかった。私は剣を構えたまま慎重に進んでいく。


ヒヒヒヒヒッ……


 どこかから笑い声のような声が聞こえる。私はドキリとした。実は私はモンスターのゴーストやファントム系の魔物は平気なくせに、日本のお化け系は苦手だったりする。テーマパークや遊園地に行っても、お化け屋敷には絶対に入らない。某遊園地の「戦○迷宮」などもっての外だ。それまで、平気で進んできた私だったが急に怖くなってきた。


・・・うぅっ、やっぱりダンジョンは一人で来るもんじゃないよ パーティー組んでみんなで来るところだ ナガトみたいにソロで潜る奴は異常者だよ ・・・


 私は、今まで以上に慎重になり恐る恐る進んで行くと、広場の外れに泉があった。ダンジョン内での泉は、飲むと体力が回復するとか、魔力が回復するとか冒険者にとって助けとなるものが多い。この泉からも穏やかな気配を感じるので、おそらく回復系の泉なのだと思うが、それにしてもこの浅い階層に泉があることに違和感を覚えた。


・・・回復系の泉は、普通もっと深い階層にあるよね こんな浅い階層では、みんな体力も魔力もあるし、ポーションや薬草だって残っているはずだから、泉があってもそれほどありがたくないよね ・・・


 私は、この泉に何か意味があるのではと考えていた。だって、こんな浅い階層に泉が湧いているなんてあからさまに怪しいもの。何かしらの罠が仕掛けられている可能性が高い。一番考えられるのは、テレポートの罠だろう。浅い階層で油断した冒険者が泉の水を飲むと、深い階層にテレポートされてしまうというシンプルな罠だが、それが初級の冒険者だったら、いきなり深層に飛ばされて全滅の憂き目にあうだろう。


・・・ナガトがいればなぁ。罠を鑑定して貰えるのに ・・・


 テレポートの罠だったら私にとって望むところだよ。こんな、お化け屋敷みたいなところを歩いて進んで行くより、わざと罠にかかってテレポートで飛ばされた方がましだ。でも、他の罠だったら大ダメージを受ける可能性もあるし……。私は泉を前に悩んでいた。


・・・ポイズンの罠なら解毒を使えばOKだし、フロアじゃなくて泉だから落とし穴の罠も考えづらいよ 麻痺とか石化の罠だったらソロの私には厄介だよね ・・・


 私は考えた挙げ句、剣に魔力をエンチャントして自分の体に触れ、毒や麻痺、石化への耐性を備えればいけるのではと思い付いた。そうすれば最悪、毒や麻痺、石化で動けなくなる前に、転移して脱出出来る。


・・・我ながら良い考えじゃん ・・・


 私は早速自分の身体に状態異常の耐性を備え、泉の水を口にした。すると、突然目の前の景色がぐにゃりと歪む。


・・・やっぱり、罠だった これは、テレポートの罠みたいだよ ・・・


 歪んだ景色が消え、目の前が暗くなったと思うと次に見えた景色は全く別の景色になっていた。


・・・何階層まで飛ばされたんだろう この不穏な気配から、かなり深い階層だよね というか、ここ”白桃の眠り”で良いんだよね ・・・


 事によるとまるで違うダンジョンに飛ばされた可能性もある。私は、剣を構えて通路を歩き出した。周囲からの圧が凄い。これは、相当レベルの高い冒険者でなければ、このプレッシャーで動く事も出来ないだろう。”ポラリス”のメンバーもここに飛ばされたのだとしたら、何か痕跡が残っている筈だ。私は歩きながら、その痕跡も探していた。すると、嫌な気配が近付いてきた。なにやら巨大なものが動いているようだ。それが、私に近付いて来ている。私は身構えた。それは通路の角からヌッと顔を出した。


・・・ス、スケルトンだっ ・・・


 それもただのスケルトンではない。日本でいう”がしゃどくろ”のような巨大なジャイアントスケルトンだ。頭蓋骨の大きさだけで私の何倍あるのだろう。


・・・あんなのに一撃喰らったらただでは済まないよ ・・・


 私は即座に爪楊枝の剣に魔力とイメージをエンチャントした。イメージしたのは北欧神話で雷神トールが使用した武器”トールハンマー”。別名”ミョルニル”とも呼ばれる打撃系の武器だ。スケルトンのようなモンスターは打撃に弱い。つまり、殴打する武器が有効なのだ。逆に云えば、それ以外の攻撃に対する耐性が高い。深い階層に出現するモンスターは何かしらの耐性を備えているものが多いので、モンスターの弱点を攻撃する事が勝利につながるのだ。なので、初見のモンスターと対峙する時は緊張する。戦いの中で敵の弱点を探らなければならないからだ。


・・・まだ私に気付いていない チャンス ・・・


 小さなジリスの体である事が幸いした。私は通路の壁をスタタッと駆け登ると、そこから剣を上段に振り上げ思い切りジャンプして、スケルトンの頭蓋骨目掛けて剣を振り下ろした。


バキャッッッ


 私の一撃でスケルトンの頭部の一部が破壊されるが、スケルトンはそれで怒り狂ったように私に攻撃を仕掛けてくる。私のすぐ横をスケルトンの巨大な手が通り抜け、ぶわっと風が巻き起こる。私は、その風圧だけで吹き飛ばされ、ダンジョンの床を転がっていた。この対格差はいかんともし難い。最初の一撃で仕留められなかったのが痛恨の極みだった。それでも、素早さでは私の方が上だ。私はチョロチョロとスケルトンの攻撃をかい潜り、隙を見つけては、打撃を叩き込んでいた。


・・・まだ倒れないの、こいつ ・・・


 ジャイアントスケルトンは再生能力もある。もう一番最初に破壊した頭部が再生されつつある。


・・・このままじゃ、ジリ貧だよ ・・・


 私の攻撃ではこのスケルトンを倒せない。


・・・サラマンダーみたいに氷詰けにすれば良いかも ・・・


 私は良い考えを思い付いたと喜んだが、スケルトンは冷気や氷に対する耐性が非常に高い。氷で固めて動きを封じたとしても、一瞬で氷を破壊してくるだろう。スケルトンの背後は広場になっているようだ。この狭い通路で戦うよりも、何か手が見つかるかもしれない。私は、スケルトンの脚の間を抜け、一直線に広場に飛び込んだ。


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