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22、キノコの野望


22、キノコの野望



 私と忍者は向かい合い、互いの隙を狙っていた。


・・・まともにいったら体格差で私に勝ち目はないけど、私は最強の魔法使い 卑怯だと思わないでよ ・・・


 私は爪楊枝の剣にイメージをエンチャントした。そして、剣を忍者に向かって投げつける。剣は忍者に向かって斬りかかるが、忍者の聖刀”蛍丸”で簡単に叩き落とされてしまった。しかし、私の剣はまた宙に浮き上がり忍者に向かって斬りかかる。


「うおぅぅぅっ 」


 意表を突かれて忍者はバランスを崩すが、私の剣を叩き伏せていた。しかし、それでもまだ私の剣は自動で浮き上がり忍者に攻撃を加えていた。


・・・聖剣”フラガラッハ” この剣には幾つか反則級の能力があるけれど、これもその一つ 私が敵と認識した者を攻撃し続けるんだよ これでもう体格差なんて関係なくなるね ・・・


 私は得意満面で解説する。私が遊んでいたゲームからの受け売りだ。ゲーム中で超レアアイテムだった聖剣”フラガラッハ”は結局手に入れる事が出来なかったけど、今はこうして私の手の中にある。しかし、なんでも切れる筈の”フラガラッハ”の剣撃を”蛍丸”は刃こぼれしながら受けている。普通のカタナであれば、もう刀身を切断され使い物にならなくなっているのだが、自動修復する”蛍丸”は瞬時に元の刀身に戻っていく。


「それにしても、あのキノコさんの剣は反則ですね。あんな剣には誰も勝てないですよ それを使えるキノコさんは最強と云えるのでは…… 」


「ふん、ギュスターヴ キノコさんであれば当然だ 」


「その通りだ 珍しく意見が合うな、イブリース キノコは私よりも強い キノコに勝てる者など存在せん 」


 やけに私を褒め称える言葉が聞こえてきて私は赤面していた。私の力はセレネ様に貰ったものだから、そんなに褒められても恐縮してしまう。でも、だからこそ、この力は世界の為に役立てたい。私が、この世界で寿命を使い果たして、またセレネ様に会えたなら胸を張ってありがとうございましたと言えるような力の使い方をしたい。そう思っていた。


「己…… 小動物の分際で何を企んでいるんだ 悪魔を従え、人間も(たぶら)かし、この世界を征服しようとでもいうのか 」


・・・へっ…… そんなつもり全然ないけど…… 大体あんたさっきから誤解だって言ってるでしょう 人の話聞きなさいよ ・・・


 こういう奴、どこにも必ず一人はいるんだよね。人の話をまったく聞かずに一人で話を進める奴。こういう奴には”報連相”も出来ない奴が多いけど、絶対にこいつもそうだろう。もう社会人として失格だよ。こういう奴に指導してやるのも私の務めだ。私は”フラガラッハ”の速度を更に上げる。


「うおぉぉぉぉっ 」


キイィィィン、キイィィィン、キイィィィン


 忍者はなんとか応戦するが、それも限界だった。


ガキィィィィンッ


 聖刀”蛍丸”が弾かれ忍者の手からこぼれ落ちる。私の聖剣”フラガラッハ”は忍者の首筋に当てられていた。ここで、あの映画ならゲームオーバーと宣告され、首がはねられるところだが私の目的は忍者を殺す事ではない。私の誤解を解く為だ。元々、この忍者、カレンを助けに来るくらいだから悪い奴ではないだろう。


・・・ちょっと忍者さん 私は忍者と云うのは沈着冷静で仕事をこなすというイメージなんだけど、あなたは直情径行で状況も顧みずに動いてるように見えるんだけど、なんなの この世界の忍者はみんなそうなの ・・・


「ふん、他の奴の事など知るか これは私の性格だ それに私はナガトという 」


 ナガトかぁ。伊賀の名門、上忍の藤林長門と何か関係があるのかなぁ。私は有名人に会ったようにドキドキしていた。


・・・じゃあ、ナガト はっきり言う 私はカレンちゃんを助けようとしていたの あなたが来てくれて助かったけど、あなたはカレンちゃんを助けた後どうしたの 何もケアしてないじゃない カレンちゃんは声も出せず食事も摂れなくなっていたの そんなカレンちゃんを放っておくなんて大人として失格です ・・・


 私は、ピシッと言ってやった。


「ううっ 」


 ナガトは言葉もなく私の顔を見つめている。


・・・私たちはカレンちゃんの症状を改善させる為に、灼熱の迷宮でアイテムを手に入れた 本来なら、それはあなたが行くべきではないですか ・・・


 私は訥々とナガトを説教していた。


・・・いや、キノコさん あのダンジョンは人間には無理 モンスターから逃れて最下層まで行けたとしても、ナアマが出てきてそれで終わり クリア出来ないようになっているクソダンジョンですよ ・・・


 イブリースの心の声が聞こえてくるが私は無視した。


・・・とにかく私は悪い奴は容赦なく殺しますよ でも、あなたは悪い奴には見えない だから争うつもりはありません 良いよね、イブリース、アシャ、ギュスターヴ ・・・


 私はみんなを振り返った。


「勿論ですよ キノコさんの判断に是非もありません 」


「私は、キノコの考えに従う 当然だろう 」


「私も異存はありませんよ、キノコさん 」


 私はナガトの首筋から聖剣”フラガラッハ”を外した。


・・・ナアマ、結界を解いてくれる それじゃ、もう帰っていいよ、ナガト ・・・


 私はうっかり魔法剣士アシャではなくナアマと呼んでしまった。


「ナ、ナアマ…… 魔王ナアマか お前、魔王二人も従えているのか 一体何者なんだ そして、何をしようとしているんだ 」


 あぁ、やっちゃった。もう早く帰ろうと思って気を抜いたのがいけなかった。そりゃ魔王二人もいたら誰でも警戒するよね。仕方ない。ここはハッタリかませて終わらせよう。仕事の商談の際にも時にはハッタリが必要だ。大言壮語で煙に巻く。社会人として長年生きてきた私の経験則だ。


・・・仕方ないなぁ それなら教えてあげる 私は最強の魔法使いキノコ 私は、この世界を征服する ・・・


 私は爪楊枝の剣を、天に向かって突き出した。


「やはり貴様の野望は世界征服か それでは、ここで命をかけて貴様を討つ 」


 ナガトが私に飛びかかろうとするが、ギュスターヴの波動で弾かれ、イブリースの重力魔法で押さえつけられる。そして、首にナアマの焔の剣”レーヴァテイン”が当てられる。


・・・本当に話、最後まで聞かないね、ナガト 私は世界を征服して争いのない世界にする 北の大地と南の大陸、そして、悪魔も人間も一緒に楽しく暮らせる世界を創る それが私の野望だよ、ナガト ・・・


 私は剣に魔力をエンチャントした。仲間の三人を転移させ、最後に自分も転移する。あの酒場の前に私たちは戻って来た。


「さあ、まだ夜は長いです もう一度、飲み直しましょうか 」


「僕の歌のレパートリーもまだまだありますよ 」


「キノコ、今度私に言い寄ってくる馬鹿がいたら、お前が追い払ってくれ 遠慮しなくて良いんだぞ お前はこれから世界を支配するキノコなんだからな 頼りにしてるぞ 」


 ナアマは微笑むと、私を肩に乗せ酒場のドアをギイッと開いた。


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