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15、灼熱の迷宮6


15、灼熱の迷宮6



「ピイィィィーーーッ 」


 炎の魔人アシャは私に向かって火の玉を投げつけてくるが、私は軽快にそれを避けてアシャに近づいていく。そして、私は大きくジャンプする。こう見えても私はリスだ。けっこうジャンプ力はあるのだ。アシャの顔が目の前にある。


「ピイィィィーーーッ 」


 私が剣を振ると、剣の先から水鉄砲のように水が噴き出し魔人アシャの顔に命中する。


「うぐぅ、さすが勇者だ 私の敗けだ 約束通り、その宝はお前の物だ さあ、受けとるが良い 」


 私は宝箱の上にピョンと乗ってイブリースに早く開けてと急かしていた。イブリースはやっと終わったかという顔でゆっくりと歩いてくると宝箱の蓋に手をかけギィッと開けていく。私はイブリースの肩でドキドキしながら蓋が開くのを見ていた。そして、宝箱の中にそれはあった。アイテム”白竜の雫”。白い半透明のティアドロップ型の宝石だ。私は興奮しながら”白竜の雫”を手にした。


「ピイィィィーーーッ 」


・・・アイテム、ゲットォー ・・・


 私はイブリースにアイテムを渡して、いつもの空間倉庫に収納して貰う。これで、カレンちゃんの状態異常を回復出来るよ。私は達成感に浸っていた。


「楽しかったぞ、キノコ また、攻略に来てくれ 何時でも歓迎するぞ 」


 嬉しそうに言うナアマの顔を見ると文句を言えなくなってしまうが、ここできちんと指摘してあげないとナアマの為にならない。私はイブリースに、このダンジョンの不満点を箇条書きにしてもらいナアマに渡した。ナアマは私のメモを真剣に読んでいた。実際に体験した者の意見だ。貴重な意見であるのは間違いないだろう。ナアマもそれが分かっているから時間をかけてじっくり読むと私に顔を向けた。


「ありがとう、キノコ これを参考にこのダンジョンを改良してみる そしたら、また来てく…… ごばあぁぁぁっ…… 」


 突然、ナアマの口から血が溢れ出た。ナアマのお腹に大きな風穴が空いている。ナアマはゆっくりと倒れると体を痙攣させていた。


・・・な、なにっ いったい何が起こったの ・・・


 私が狼狽えているとイブリースが私を突き飛ばす。


「キノコさん、危ないっ ぐわっ…… 」


 私を突き飛ばしたイブリースの右腕の肘から先が吹き飛んでいた。イブリースの右腕から血が噴き出す。私はコロコロと転がり、壁にぶつかって止まっていた。


「ピイィィィーーーッ 」


 私が起き上がってイブリースに駆け寄ると、イブリースは険しい顔で魔法を唱えていた。立体多重魔方陣。あの時の魔法だ。でも、そんな魔法をここで使ってしまったら、このダンジョンは崩壊してしまうだろう。あれだけ、ダンジョンを壊さないようにと言っていたイブリースが……。


・・・それほどの事態だというの ・・・


 私はイブリースの視線を追う。その先には一人の人間の男が立っていた。その白銀の甲冑から騎士のように見える。相手が人間なら例えマスターした騎士と云えど、魔王であるイブリースの敵ではないだろう。私は倒れているナアマに急いで剣にエンチャントした回復の魔法をかけた。ナアマのお腹の傷が塞がり、ナアマは体を起こして私を見る。


「キノコ、逃げろ 今すぐ転移しろっ 」


・・・私、一人で逃げられる訳がないじゃない ・・・


 私はナアマの手を掴むと、イブリースに目を向けた。逃げるなら3人一緒だよ。だけど、ナアマは私の手を振りほどくと立ち上がっていた。そして、ナアマも呪文を唱える。


・・・人間の騎士一人にどうしたの? 魔王が二人がかりで戦いを仕掛けるほど、この白銀の騎士は強いの? ・・・


 私が息を呑んでいると二人の詠唱が終わった。


「ラグナロク 」


「アビスフレーム 」


 二人の魔法が炸裂し、騎士の体に炎の槍が突き刺さり、光と闇の空間に包み込まれたように見えた。しかし、騎士はまるで何事もないように平然と立っている。


・・・どういう事? ・・・


 私は自分の事は棚に上げて、あれだけ強力な魔法を二つも浴びて傷一つない騎士の姿に、本当に人間なのと疑っていた。


・・・イブリース、なんなのあれ? ・・・


「あの人間は南の大陸”ネオ・エリュシオン”から来た騎士です 奴が纏っている白銀の甲冑には”絶対魔法防御”の力があります おまけに、その強度もオリハルコン並みで通常の武器では傷一つつけられません 」


・・・なに、そのとんでもない反則な設定は…… だったら一緒に逃げようよ 私の転移でゴモラの街まで ・・・


「すいません、キノコさん それは出来ません ここで僕たちが逃げたら、このダンジョンを始め、付近一帯が焼け野原にされるでしょう 奴らは南の大陸だけでは飽き足らず、この北の大地も侵略しようとしているのです 」


・・・侵略…… ・・・


 そうか、人間が侵略者というのは、そういう事なのか。私は、少しずつ事態を理解してきた。でも、それなら話し合えば分かってくれるのではと考えていた。争いの大半はコミュニケーション不足が原因だ。お互い分かり合えば、自然と争いは無くなるだろう。私はイブリースに、私が話し合うから私の言葉を通訳するように伝え、二人の前に出た。


「ピイィィィィーーーッ 」


・・・私はキノコ まず話し合いましょう ・・・


 イブリースが私の言葉を通訳するより早く、騎士は私に目を向けると、あざ笑うように言葉を吐いた。


「話し合い? 何をふざけた事をほざいている 悪魔などと話し合いが出来るか 小動物の分際でキノコだぁ、トットと消えろ 」


「ピ、ピイィィッ 」


・・・私の言葉が分かるの? それなら、余計話し合いましょう あなたたちは誤解している 彼らは人間と同じで、悪魔だからという見た目だけで判断してはいけませんよ それに私も小動物というだけで見下されるのは心外です あなたは、いったいどんな教育を受けてきたのですか…… ・・・


 しかし、騎士は私が言い終わる前に攻撃を仕掛けてきた。


・・・”縮地”のスキル、しまった・・・


 突然、騎士の姿が私の目の前にあった。剣を抜いた騎士は私に向かって、振り上げた剣を高速で振り下ろす。


「聖剣 ”アスカロン” 」


・・・竜を討伐したという伝説の聖剣だ ・・・


 私は、目の前に迫る聖剣に動く事も出来ずにいたが、咄嗟に爪楊枝の剣に魔力をエンチャントしていた。


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