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14、灼熱の迷宮5


14、灼熱の迷宮5



・・・今、地下何階だろう ・・・


 私はもう自分が何階にいるのか分からなくなっていた。見える景色は変わらないし、途中までは階層によって出現するモンスターが変化していたが、もうモンスターも同じ魔物しか出てこない。創った方も明らかにもう飽きて手を抜いているのが、もろバレだ。イソギンチャクのような”ローパー”や、食人植物の”マンイーター”、それに人型植物の”マンドラゴラ”。そんなモンスターが配置してあるが、もう戦うのも面倒だから近付かないでスルーする。みんな自分から動かないモンスターじゃん。ローパーとマンイーターは触手を伸ばしてくるが離れて歩けば大丈夫。マンドラゴラに至っては、引き抜かなければ何も問題ない。


・・・いったい何の為のモンスターなんだよ ・・・


 今度、ナアマに問い質したいところだ。


・・・早く最下層に着きたいよ ・・・


 ぶちぶち文句を言っているうちに、もうモンスターさえ出現しなくなっていた。ただ歩いて階段を降りるだけ……。それが延々と続く詰まらなさに私はイライラしていた。


・・・ダンジョン創る方も九十九階も階層あったら、もうモンスター配置するのも面倒になったに違いないよ ・・・


 私はまた気分転換に、コーヒーでも飲もうかとも思ったが、ここまで来ればもう少しの筈だと先へ進む事を優先した。


・・・もしこれが精神的ダメージを与える考えられた仕掛けだとしたら脱帽ものだよ ・・・


 私はいろんな雑念を抱きながら階段を降りた時に、これまでなかった巨大な扉が目に入ってきた。豪華な装飾が施された扉は、如何にもな雰囲気だ。私はイブリースを振り向いていた。


・・・あの、この大きな扉 もしかしたら…… ・・・


「そうですね ラスボスの部屋でしょう まったく分かりやすい 」


 ラスボス……。ついにやっと辿り着いた。長かったよう。私はチョロチョロと扉の前まで走っていき、イブリースが扉を開けてくれるのを待っていた。私は大きな扉を見つめワクワクドキドキしていた。私の頭の中にあの有名なRPGゲーム「ドラ○ン・クエ○ト」のテーマ曲が鳴り響いている。そして、イブリースが扉をギィィッと開けた。いよいよラスボスとの対決だ。私は扉の中に飛び込んでいた。そして、それは私の目の前にいた。身体の大きさは私と同じくらいだ。いい勝負になりそうな予感がする。


・・・スライム ・・・


 私は、ぶよぶよとした半透明のゲル状の身体を持つモンスターを見つめていた。私は相手がスライムだからといって油断したりはしない。だって、このスライムがもし私と同じ転生者だとしたら強大な力を持っているのを知っているからだ。スライムも私を見て、グルルと唸り声を上げている。そして、スライムの身体の色が赤くなってくると、身体からボオッと炎が噴き出した。


・・・ファイヤースライム ・・・


 スライムの亜種だ。ラスボスである以上、普通のスライムではないと思ったが、その通りだった。ファイヤースライムは普通のスライムよりも攻撃力が桁違いに高い。そして、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性共に高くなっている。そんなファイヤースライムの弱点は水属性だ。だがそれだけでは倒せない。スライム系の不定形モンスターは核という物を破壊しないと再生してしまう。が、その核の位置は半透明の身体では一目瞭然。


・・・まったく自分の急所を曝しているんだから、ある意味親切なモンスターだよね ・・・


 私は、イブリースにもう1本爪楊枝を貰うと両手で爪楊枝の剣を構えた。そして、それぞれの剣に魔力をエンチャントする。


・・・さあ、行くよ ・・・


 私はファイヤースライムに向かって飛び出していた。ファイヤースライムは私に向かって炎の弾を撃ってくるが、そんな物に当たる程私の動きは遅くない。私は、ファイヤースライムとの間合いに飛び込んでいた。そして、左手の剣を一閃する。


ピキィィィンッ


 ファイヤースライムは瞬時に凍りつくが、すぐに氷を溶かしてしまう。しかし、その一瞬。ファイヤースライムの動きが止まった刹那に私の右手の剣、風の槍がファイヤースライムの核を貫き粉砕していた。


「グラララッ 」


 ファイヤースライムは断末魔の悲鳴をあげると身体が崩れていき、塵となって消えていった。


・・・やったぁ、ラスボス倒したよ ・・・


 でも私はラスボスを倒した事よりも、これでやっとこのダンジョンから帰れると安堵していた。


・・・もう二度とこんなダンジョン来ない ・・・


 ナアマには悪いけれど、私は固く心に誓っていた。すると、ダンジョンの床が開き、下からゴゴゴッと宝箱が上がってきた。その宝箱の横には一人の女悪魔が立っている。それは、肌を赤く塗り翼を炎の羽に模したナアマだった。


「よくここまで辿り着いた勇者よ 私が最後の試練だ 私を乗り越えた者に、この宝を進呈しよう さあ、かかってくるがよい 」


 ナアマはすっかり成りきっているようだが、イブリースが詰まらなそうに口を挟む。


「もうそんなのはいいから早くアイテムをよこ…… むぐぅっ 」


 私はイブリースの口を塞いでいた。私にはナアマの気持ちが痛いほどよく分かる。会議の場で発表する為に、一生懸命資料を集め、グラフを作成し、チャートも揃え、プレゼンテーションの準備を整え、さあ次は私の番だとなった時に、時間が押しているので後は皆さんお手元の資料で確認して下さいと議長に言われた時の脱力感たらない。ここまで準備したんだからプレゼンやらせてと議長に泣きつきたかった自分が思い出される。きっとナアマも何度も何度も練習したんだろう。それなのに、ここまで辿り着く冒険者はいなかった。今初めて練習した成果を披露する事が出来るのだ。ナアマの晴れ舞台だ。黙って聞いていてあげようよ、イブリース。


「だが私は炎の魔人アシャ 簡単には越えられぬと思い知れ 」


 ナアマは嬉しそうに炎の魔人を演じている。


・・・いいよ、いいよ、ナアマ 私も付き合うよ ・・・


 私はいつの間にか流れていた涙を拭き取り、剣を抜いて構えた。


「炎の魔人アシャ、私は勇者リース その宝を必要な子がいる 遠慮なくあなたを乗り越えさせて貰うよ 」


 私の言葉をイブリースが代弁し、私は剣に魔力をエンチャントし魔人アシャに飛びかかっていった。




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