駅にいる少女1
「ふあああああああああ」
ローグの欠伸が部屋に響く。それに釣られてカラカサも目を覚ましたようだ。ゆっくりと体を起こして、手を思いっきり天井に突き上げ欠伸をした。靴を履いて、水で顔洗っていると、
「今日は何するんだ?」
とローグが聞いてきた。すると少し考えて
「今日は食料の買い出しにでも行こうと考えてる」
と答えた。
「食料かぁ、まともなのが有るといいな」
「まぁきっと有るだろ、一応街としてやっていけてるんだからな」
「へぇ」
そう言ってボサボサの頭を掻きながらランタンを持ち上げ、扉を開けようと押した。
「ありゃ、扉が開かねぇ」
するとベッドに座っていたローグがさも当たり前のように
「押し戸なんだから中から開ける時は引くんだろ」
「あ」
引くと簡単に開いた。カラカサは久しぶりにローグに対して尊敬の念を抱いた。
「お前も来るか?」
「行く」
階段を登っていく。一歩上がるごとにカーンと足音が響く。上に着くと昨日じゃ暗すぎて見えなかった部屋がハッキリと見える。リーヴェがカウンターの後ろに有る椅子に座っていた。
「おはようございますお客様」
「おはようございますリーヴェさん」
「今日は何をしに外に?」
「ちょっと買い出しにでも行こうかと」
「なるほど、いってらっしゃいませ」
ローグが扉を開けようとすると、リーヴェさんが慌てて言った。
「待ってください、駅の近くには近づかないでください」
カラカサが不思議そうに尋ねた。
「何でですか?」
そして少し考えて、
「裏切り者が屯しているからです」
「あ、はい」
ローグは気を取り直して扉を開けた。外に一歩踏み出すと同時に、光が目に入ってきて、眩しい。改めて朝であることを実感した。
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「裏切り者って何だ?」
ローグが聞いた。
「さあな」
カラカサが興味なさそうに答えた。今は市場がどこに在るかを探すのに精一杯なようだ。歩いても歩いてもそれらしき所には着かない。
「市場なんてそもそも有るのかぁ?」
こんなに歩いても無いと、もはや有るのかどうかさえも怪しい。
「屋根を歩いた方が早いんじゃないか?見晴らしもいいし、すぐに見つかるだろ」
カラカサは本日二回目の尊敬の念を抱いた。
「頭良いなお前」
コイツ知的に見えて頭悪いんじゃないか?とローグは半ば呆れながら思った。
コッコッコッコッコッコッコッ、と何かが家の屋根のレンガの上を走っている音が聞こえる。その「何か」というのは無論ローグとカラカサである。
「おっ、あそこからワイワイガヤガヤと人の騒ぐ音がするっ」
「だな、ほっ」
軽々と屋根と屋根との隙間を飛び越えていく。
「きっと市場じゃないか?」
「きっとそうだっ」
そこに飛び降りると予想通り、活気付いた市場だった。
「らっしゃい、らっしゃい、皆に愛される果物、リンゴだよー!」
「採れたてのミカンからジュースを作ってまーす!」
「よってらっしゃい新鮮な魚だよー!」
どこもかしこも呼びかけの嵐。
「おおすごい活気だな」
「だな」
その後魚や、ミカン、めずらしい物を買って帰路に付いていた。すると帰る途中、ローグが思いついたように言った。
「駅に行こう」
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