部屋番号マイナス2408
「さぁさ、今宵は冷えます、早く入ってください」
スーツ姿の男、またはリーヴェが言った。二人は顔を見合わせ、意を決したようにカラカサが入って行った。それにローグも続く。
歩くごとにギィ、と軋む音が響く。一歩一歩、歩くごとに周りが暗くなっていく。光の一つも付けていないようだ。中に入ると外より一層冷たい空気が待ち受けていた。ローグは思わず身震いした。
「ちょっと待っていてください。明かりを持ってきます」
と言って、吸い込まれるように闇に消えていった。扉からある程度の光が部屋に入ってきているはずなのだが、それでも二人から先の空間は闇一色である。少し待っていると、闇にいきなり光がポッと現れた。
「ランタンを持ってまいりました、ではご案内します」
そう言うと後ろの扉を開けて、歩き出した。二人からすると下へ、下へとリーヴェの体が沈んでいくように見える。下へ階段が続いているようだ。
「よくこの暗闇でランタンなんか見つけ出せたな」
ローグがカラカサの耳元で囁いた。
「夜目が効くんだろ」
カラカサはそう言ってリーヴェに付いていった。それにローグも続く。
階段はレンガで出来ていて、一歩一歩踏み出すごとに通路に音が響く。所々欠けていたり、ヒビが入っている。ちょっと蹴ったらすぐに壊れそうである。ずっと昔から使われているのだろう。それにしては壁にツタもコケもない。誰かが定期的に管理しているのだろうか。そうカラカサが思った矢先、ローグが話しかけた。
「リーヴェさん」
「はい、なんでしょうか」
「さっき地雷を踏んだ時、老人が勝っただとか何だとか言っていたが、ありゃどういう事なんだ?」
リーヴェは目を丸くして言った。
「地雷を、踏んだ?」
「ああ」
「んで無傷でここに立ってらっしゃると、そう申しておられるのですか?」
「ああ」
「どうにもこの街には狂人しか居ないみたいですねぇ」
リーヴェは深いため息をついて、話し始めた。
「それは多分、ベクターとガーシーですね」
「地雷仕掛けるなんてどんな連中だよ」
カラカサが口を挟んだ。
「そうですね、頭のおかしい連中と思ってもらって構いません」
リーヴェが続けた。
「5年前、ガーシーの息子が姿を消してから、気がおかしくなったみたいで、今ではもう一人の狂人のベクターと悍ましい遊びをしています」
「悍ましい?」
カラカサが聞いた。
「はい、何でも年内にどれだけ多くの人を自作の地雷で殺せるかというのを競っているらしいです」
「おわっ」
ローグが嫌そうな顔をした。
「まぁこんな嫌な話はやめて、」
そう言ってリーヴェは鍵を二人に手渡した。銀色の錆びた鍵だ。ー2408と大きく刻印されている。
そういえば、いつの間にか辺りが明るい。廊下のように細長い通路の天井にランタンがいくつもぶら下がっている。話している間に着いたのだろうか。
「ここがお客様の部屋となります、部屋番号はー2408です、忘れる事の無いようご注意ください、」
「それでは」
そう言ってリーヴェは去った。
部屋の扉は鉄で出来ている。まるで刑務所みたいだ、とカラカサは思った。恐る恐るローグが扉を押してみると、ギィキィィィという鈍いような甲高いような音をあげて開いた。中に入ってみると、
「案外汚くないんだな」
ローグが言った。
「汚いどころか綺麗じゃないか」
とカラカサは驚いた。部屋の中は綺麗に掃除されていて、綺麗なベッドにカーペット。宿として100点満点の所だ。ベッドに横たわるなり、カラカサが傘を持って寝るだのローグのいびきがうるさいだので寝る前に少しいざこざは有ったが、その後すぐに二人共爆睡した。
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