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「あの背中に憧れて」

 恋愛脳のピュアな乙女のサナエちゃんはてっきり恋人になりたいと勘違いしたみたい。


「そもそも女の子同士だよ?ちょっと仲が良よくてそれで恋愛って恋愛もの見すぎ・・・いだだだだ!!ごめんなさいごめんなさい!」


 耳を引っ張られ絶叫する。


「ユイは・・・結構真面目よ?」


「お嬢様品行方正だからね☆」


「馬鹿、恋愛についてよ」


 お嬢様好きな人居るの!?と返したら呆けた面で思いっきり溜息吐かれた。


「アンタっていつもそうよね?優しくしたり甘い言葉で【好き】とか【一緒にいたい】とか言いまくってんでしょ?」


「本心だよ?勝手に勘違いしてるのはその人でしょ?」


 またビンタされた!?


「ユイもそんな感じなの?」


 真剣な眼差しで睨まれ私は首を振る。


「お嬢様は別、その・・・」


 あれを言うのが恥ずかしくて頬が熱くなる。


「なによ?」


「・・・」


 私は喉から出そうなのに羞恥心が抑えてしまう、でも言わないと。


「お嬢様の笑顔・・・幸せそうな笑顔を見たら胸がチクチクしちゃって」


 お嬢様に魅入られちゃったのかもしれない。あの笑顔が忘れられない。


 突拍子もなく、普通の日常の放課後。私は眠たくて昼寝してるとお嬢様が私の頭を撫でながら幸せそうに微笑んだ。


 起こされてストレスだったのに顔を上げたらあの笑顔が飛び込んできた。


(おはよう、サクラちゃん♪)


 あの笑顔を見た後、私は初めて胸に棘が刺さった。


 彼女は振り返り、優しくて温かい背中に憧れたんだ。


「アンタがそこまで言うなんてよっぽどね?」


「でへへ〜!」


 デコピンされた。


「なら早く伝えなさいよ」


「ムリだよ」


「何で?」


 即答する私にサナエちゃんは質問責めしてくる。


「だって・・・」


 私は本当の気持ちを押さえて出任せに喋ってしまった。サナエちゃんは溜息を吐きながらもアドバイスをくれた。相変わらず世話焼きで優しいお姉さんだ。


 だから大好き、私の命の恩人だ。


 でも“今の関係が崩れるのが怖いから”なんて言えない。


 お嬢様と私は違うから。



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