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第78話 深夜、思わぬ邂逅

 さて。

 ロビーを後にしたはいいが、実はもう一つ用事がある。

 高校生男子なら絶対一度は経験があるだろう。

 深夜、お腹が空いてカップ麺が食べたくなるヤツ。


 あれは、全男子高校生にかけられる魔法か、何かの疾患なんじゃないかと思う。

 深夜に熱々のラーメンを食べる。うん、最高。

 不健康まっしぐらな気もするが、それでも欲望には逆らえないよね。


 そんなわけで、俺はホテルのロビーから少し歩いた場所にあるコンビニに立ち寄った。

 そこでカップ麺と水を購入した後、俺はコンビニを出る。

 明日は朝七時半には起床していないと予定に間に合わない。

 

 時刻はもう11時半を周ったところ。

 ちゃっちゃと食べて、日付が変わるまでには寝たいところだ。


 何? 食べた後すぐ寝たら、牛になるだろうって?

 モー、何言ってるんですかね? そんなはず無いじゃないですか。


 深夜テンションでそんなことを思いながら、俺はエレベーターへと向かう。

 途中、休憩所のようなソファーがいくつか置かれた場所を通るのだが、そこに差し掛かったときのことだった。


「――そんなこと、許しませんよ!」

「け、けどさ……やっぱり許せないよお姉ちゃん。だって、あの人、お姉ちゃんが一番嫌いなタイプじゃんか! それなのに、お姉ちゃんと同じステージに立つなんて」

「そうだそうだ! 私も許さない!」


 何やら、三人の話し声が聞こえる。

 一人は、どこかで聞いたことあるような声。

 他の二人は、それに抗議するような幼い男女の声。


 何事かと、俺は聞き耳を立ててしまう。


「いい加減にしなさい!」


 その一喝に、二人の男女が息を飲むのが聞こえた。


「あなたた達が、私のことを思ってくれるのはわかってる。でも……ナズナさんはそれには関係ないから」


 ナズナさん……?

 よく知っている名前に、俺は眉をひそめる。

 そのとき、俺はようやく声の正体に気付いた。


 この声……花ヶ咲さんだ。


「で、でも……!」

「やっぱり私達、許せないよ!」


 二人の男女が駄々をこねるように言ったあと、走り出す音が聞こえた。「待ちなさい!」という花ヶ咲さんの声が、静かなラウンジを埋め尽くす。

 二人の男女は、すぐそこのラウンジから俺の居る通路へと飛び出した。


 やべっ、気付かれる!


 そう思い身を固くしたが、幸い二人は感情のままに向こうへ走り去ってしまった。

 よかった。俺には気付かなかったみたいだ。


「それにしても、一体なんだったんだ……」


 今の二人、背格好は十歳前後といったところか?

 お姉ちゃんと言っていたし、花ヶ咲さんの弟と妹かな?


 そんなことをぼんやりと考えていると、ため息をつきながら少女がラウンジから出てきた。

 それは、紛れもなく花ヶ咲さんだった。


 けれど、パーティーで会ったときのような、勝ち気な姿ではない。

 疲れ切ったような、どこか覇気の無い姿だった。


 と、不意に花ヶ咲さんがこちらを向いた。

 

「……あ」


 目が、あう。

 一瞬見つめ合った後、花ヶ咲さんは鋭い視線を向けて、こちらへ歩いてきた。


 ど、どどど、どうしよう!

 盗み聞きしちゃったし、ひょっとしてマズいこと聞いたんじゃ!?


 焦る俺の前まで歩いてきた花ヶ咲さんは、口を開いた。



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