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第58話 芹さんの自宅訪問part2

 翌日の土曜日。

 午前11時頃に、芹さんはやって来た。


「お邪魔します」


 そう言って玄関先に上がった芹さんの服装は、うす青色のワンピースだった。

 ノースリーブというか、空いた肩から覗く肌の城が眩しい。

 夏ということもあってか、涼しげな白い帽子を被っている。


 まあ、有名人ということもあってその帽子を目深に被った上でサングラスをしているから、どこぞのマダムかと一瞬思ったのだが。


「久しぶりですね、暁斗さん……って、髪切りました?」


 芹さんはサングラスを外して、驚いたように目を見開いた。


「まあ、二週間くらい前に」

「そうなんですか。似合ってますよ」

「あ、ありがとうございます……」


 美少女から髪型を褒められるのって、なんか凄くドキドキする。


「せ、芹さんも今日の服、似合ってますね」


 照れくさくて、無難すぎることを言うのがやっとだった。


「ありがとうございます」


 そう言って、芹さんは爽やかに笑う。

 その笑顔は柔らかいのに、強烈なほど力強い輝きを放っていて――

 

「……暁斗さん? どうかしましたか?」

「い、いや。なんでもないです」


 思わず見とれていた俺は、不思議そうに顔を覗き込んでくる芹さんから視線を逸らす。


「そうですか? ならいいんですが。あ、お邪魔しますね」


 芹さんは帽子を取ると、靴を脱いで上がった。

 俺の横を通り過ぎてリビングに向かう芹さんから、爽やかな香りが漂ってきた。

 制汗剤かな。シトラス系の……

 そんなことを思いながら、芹さんを追ってリビングに上がった。


「え? なんですかこれ。ドラム?」


 先にリビングに入った芹さんが、ベッドの横に置かれている電子ドラムを見て目を丸くした。


「はい。ちょっと興味を持ちまして、始めてみました」

「へぇ……よかったら、何か叩いてもらえませんか?」

「流石にまだ厳しい……かな。手足別々にリズムを刻むから凄く難しいんです」

「そうでしょうね。私も、仕事の関係で何度かプロのドラマーの方に会ったことがありますが……よく手足がこんがらがらないなと思ったことがあります」


 芹さんは苦笑いしながら言った。


 正直言うと、割とどっぷりはまってしまい、それなりに叩けるようになってきていた。

 楽人の叔父さんからも「飲みこみが早い」とのお墨付きを貰っている。


 ただ、まだ誰かに聴かせるレベルでは無いなと思っていた。

 楽譜に関しては、少しずつ読めるようになってきている。

 二週間前まではオタマジャクシが踊っているようにしか見えなかったのだが、一度理解できるようになるとこれがなかなかに面白かった。


「それより、席に座りませんか? 話があって来たんでしょう?」

「そうですね」


 芹さんに着席するよう促して、以前食卓を囲んだテーブルに向かい合って座る。

 あの頃からまだ一ヶ月弱しか経っていないはずなのだが、随分と懐かしい感じがした。

 まあ、この一ヶ月はかつてないほど濃いものだったしな。


 俺は内心で苦笑しつつ、芹さんに話を切り出した。


「それで、お話というのは?」

「はい。仕事関係で暁斗さんの力をお借りしたいんです」


 芹さんは、真剣な眼差しでそう答える。


「ダンジョン配信の護衛……では無さそうですね。まだ謹慎期間中のはずですし」

「はい、ダンジョン配信じゃないです。アイドル関係のことです」


 芹さんは、少し申し訳なさそうに眉をひそめて言った。

 まあ、俺に手伝いを頼んだのはダンジョン配信の護衛だけだからな。

 関係ないことで巻き込むのも憚られたんだろう。


 ただ俺は、芹さんを支えることを誓った。

 動画で大々的に告知し、AISURU・プロダクションの花島社長に大見得を切った以上、後には引けない。まあ、引くつもりも無いのだが。


「わかりました。女装してステージで踊れみたいな無茶ぶりをされない限りは、引き受けます」

「あ、それいいですね。暁斗さんなら人気アイドルになれるかも――」

「やめてください本当に」


 俺は即答した。

 ただでさえワイバーン一撃マン女の子説が日本中を駆け巡っていたのに、これ以上の面倒ごとはごめん被りたい。


 以前グーグラで、「ワイバーン一撃マン 正体」と面白半分で検索した楽人が、予測変換に「性別不詳」「男の娘」と最上位に出てきたことにゲラゲラ笑っていた。

 俺としては笑い事じゃないんだが。


「冗談です、すいません」


 芹さんは可笑しそうに表情を歪めて謝ったあと、真剣な顔つきになった。


「暁斗さんに頼みたいのは、二週間後に開催される「SIS……サマー・アイドル・ステージ」の裏方の手伝いです」


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