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第44話 ポイントバトル

《力哉視点》

 ポイントバトル開始の号令が上がってから、俺達は真っ先に攻略許可が下りている中で最下層となる5階層へと赴いていた。


 当然、下に行けば行くほど攻略難易度は上昇し、手に入るアイテムのレア度も跳ね上がる。


 本当なら5階層よりも下まで潜りたいし、普段の攻略でも20階層くらいまでは余裕で行っているのだが、学校側の都合か何か知らないが、校外学習で行ける階層は5階層までと決まっている。


 俺達は、甘んじて受け入れるしかないのだった。


「あいつは、今頃何していますかね?」

「きゃはは。1人寂しく指をくわえて待ってるに決まってんじゃん」


 山戸の発言に、笑いながら答える咲希。


「ちげぇねぇな」


 俺もまた、前髪で表情を隠した陰キャのゴミ屑を思い出して、嘲笑を浴びせた。

 

 俺のグループは、俺達3人に加えて、クラスメイト4人の計7人。

 行動中はグループメンバーが一定距離離れてしまっても特に問題は無いから、俺達3人と他4人はお互いに視認できる距離を保ちつつ、別々に行動していた。


 5階層には、不思議な鉱物が多く生えている。

 その他にも低ランクのモンスターが数多く蔓延っていて、ポイントを稼ぐにはもってこいの場所だった。


 ポイントバトルが始まってから既に40分が経過している。

 その間、俺達は順調に鉱物を採取し、モンスターを狩り続けていた。

 

 ポイントに換算して、俺が大体1200。山戸が980。咲希が920。

 他の4人も順調にポイントを集め、7人で合わせて5500ポイントを超えるまで至っていた。


 このペースでいけば、「個別ポイント」トップはおろか、「グループポイント」トップも夢じゃない。

 俺は、篠村暁斗とかいうヤツに勝負を仕掛けたが、あんなヤツは眼中にない。

 

 当然だ。

 この勝負は出来レース。

 どう転んでも俺達が勝つのだから。

 

 ゆえに俺は、そんな眼中にない雑魚ではなく、本気で「個別ポイント」と「グループポイント」の(ダブル)1位を狙っていた。


 ただでさえ、うちのグループは7人と、他よりも多く、優秀なメンバーが集っている。

 そっちの優勝はほぼ確実と言っていい。 

 あとは「個別ポイント」の方だが――


 このままでも1位になれる可能性はあるが、どうせなら他と大差を付けて勝利したい。

 そう思う俺に、天が味方したらしい。


「うわぁ、大きい巣」


 突如、横を歩いていた咲希が簡単の声を漏らす。

 彼女の視線が示す先に目を向けると、人1人が大の字になって寝転がっても、すっぽりと覆ってしまうほどの、大きな巣があった。


 鉱石や硬い(つた)などを編み合わせて作られたそれは、薄暗いダンジョンの中で怪しい輝きを放っている。


「これは……ヤマオドガラスの巣ですね」


 山戸が、「珍しい」と言いながら答えた。

 俺自身、何度もダンジョンに潜っているが、その名前を聞くのは初めてだった。


「レアモンスターなのか?」

「はい。2年前に一度だけ見たことがありますが、大きなカラスのような見た目をしたモンスターです。これは知人から聞いたのですが、巨体のわりに攻撃力が低く大人しい性格をしているとか。実際私が見たときも、巣の上で寝ていました」

「そうなのか」


 俺は、説明を受けながら巣に近づいて中を覗く。

 すると、鶏の卵よりも一回り大きい卵が、巣の中に寝転がっていた。


「お、見ろよ! 卵があるぜ!」


 俺は、卵を拾って咲希達に見せびらかした。


「すごい! 美味しいのかな?」

「卵ですか、初めて見ました。でも、不思議ですね。孵化する前の卵なら、親鳥が暖めているはず……どこに行ったのでしょう?」

「へっ。どうせ他の冒険者が狩ったんだろうぜ」


 思案顔の山戸にそう答え、俺は卵をポケットにしまい込んだ。

 レアモンスターの卵なら、その価値はとんでもないに違いない。

 勝ったな、これは。


 俺は、自分の頬が緩むのを感じた。

 これで「個別ポイント」と「グループポイント」の1位を総ナメである。


「さて。思いがけない収穫もあったことだし、モンスター狩りながら上層階に向かうか」

「ええ」

「うん」


 咲希と山戸も、俺の提案に快く頷く。

 かくして俺達は、思いがけない幸運に見舞われて、ウキウキとした気分のままに来た道を引き返すのだった。


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