運命の分かれ道
1
ユカリは高校1年生。
5月、学校から駅までの帰り道。
同級生のタカシが「付き合わないか?」と言ってきた。
タカシは笑顔で誰にでも話しかける社交的なムードメーカー。
これまで友好的に当たり障りのない会話をして、浅い友人関係だった。
特に恋愛感情は無いが、試しに付き合うのは有りだろうか、という微妙な所。
「考えさせて」と答えた。
2
その日の夜、どうしようかと自室で考えていると。
バサ、と本棚から何かが落ちる。
昔の日記帳。小学校2年。簡単な文字で書いてある。
思わず読みふけっていると。
次のページを開くと。「えっ?何これ?」
1ページ全体に「タカシ ダメ」と大きく書いてある。
次のページは普通の日記。
「タカシ ダメ」は今日の月日と同じ日付・・・・。
3
翌日の学校からの帰り道。
「やっぱりやめとく。恋愛感情無いのに付き合うって変だし」
「え~、何でだよ、いいだろ、俺ら気が合ってるし、ぜって~楽しいって!」
ひつこくグダグダと絡んでくる。
ユカリは走って逃げた。
4
次の日の学校。休み時間。
タカシ「いーじゃんか、付き合おうぜ~」
ユカリ「断ってるでしょう、いい加減にして!」
タカシはカッターナイフをポケットから出すと
ユカリの文房具を切り始めた。
「何してるの!キチガイ!」バン、と顔を叩いた。
「てめー!」睨みつけてくる。
「ちっ、後悔すんじゃねーぞ、俺の顔潰しやがって!」
周りの生徒の目を気にしてタカシは出て行く。
その日から陰湿なイジメが始まった。
靴に画鋲、スリッパが盗まれ、筆箱にゴキブリの死骸が入れられ、
メガネが切り刻まれ、ロッカーがボコボコにされた。
教師に訴えたが証拠がない、と言われるだけ。
タカシは地元の有力者の息子らしく子分が大勢いた。
「あんた、タカシを振ったって。生意気な事してんじゃねーよ!」
スケバン女にからまれ、殴り合いを行った。
5
結局、ユカリは、その高校を自主退学した。
遠くで住み込みで働くことにして自宅を出た。
正社員で貯めたお金で、女性専用千円カット屋を起業、チェーン店を全国展開して
事業を軌道に乗せた。
15年後、知り合いにその後の事を聞いた。
タカシはスケバン女と、高校生で子供が出来て結婚した。
カッとすると暴れる癖があり、スケバン女を切り刻んで惨殺、
逮捕されて刑務所へ。出所後は酔っ払って暴れては警察に捕まる事の繰り返し。
中途半端に付き合って、もしそんな立場になっていたら、とゾッとする。
6
ある日の夜。
夢の中。小学校2年の自分が日記を書いている。
あの月日のページ。「あ、ちょっと待って、そこのページは!」
声を出すと。「あれ、だれ?」子供が驚いている。
「そこのページだけ私に書かせてくれない?」
「・・・いいけど」
子供の手を動かして例の文を書く。「何これ?」
「今はわからなくても将来きっと役に立つから」
「あなた誰?」
「あなたの味方」そこで夢が途切れる。
別の場面へ。
高校1年生の自分が自室で机に向かっている。
「あ、そうか、ここで」
本棚を見て日記を探して、床に落とす。
もう一人の若い自分が驚いた表情で振り返る。
また意識が途切れて・・・。
目を覚ますとベッドの上。
隣のベッドには夫が寝ている。
十分に吟味して、信頼できて尊敬できる男を、夫として選んで結婚、
事業は売却して、すでに経済的自由を獲得、現在は幸せな生活を実現できていた。
手本は本「怪談学校2 本当にあったコワイ話」の「さとり」。