正のフィードバックと金融ビジネス ~金融ビジネスは金持ちの方が有利
正のフィードバックという作用があります。これは結果が原因に影響を与える作用のうち、更に強めるようなものを言います。
実はこの正のフィードバックはかなり重要な概念で、人間社会ならば都市の形成、自然現象ならば竜巻や台風発生などの様々なメカニズムに関わっていて、「この作用を見つけたら、そこには何かがある」と疑った方が良いと言われているほどです。
金融経済にも正のフィードバックは関わっていて、例えばバブル経済は正のフィードバックによって引き起こされるものです。実体経済の市場の場合、価格が上昇すればその商品の需要は下がります。がしかし、金融経済市場の場合は必ずしもそうではありません。「価格が上がったのだから、更に上がるかもしれない」と市場参加者が考え、むしろ需要が上がってしまうケースがあるのです。つまり、需要と価格上昇の関係が“正のフィードバック”になるケースがあるのですね。需要が上がったことにより、更に価格は上がり、また需要が上がる…… というループを繰り返し、限界まで価格が上昇した後に弾け、深刻なダメージを経済に与えてしまいます。
これは金融経済においては、“売って儲ける為に商品を買う”事が多いからこそ起こるのです(すなわち、お金自体を商品として扱うメタの性質があるという事なのですが)。
そしてこの正のフィードバックは、“富の集中”にも関わっているのです。
2023年現在、岸田政権は金融ビジネスの活性化を政策として掲げています。更に(岸田政権の影響だけではないでしょうが)高校の授業の一環として“金融教育”が始まりました。
その“金融授業”の是非についてはここでは述べません。金融リテラシーを上げる事は、世の中の動向を理解する上でも役に立つでしょうし、身を守る手段にもなるでしょうから。ですが、金融ビジネスの活性化については、問題点があると言わざるを得ません。
金融経済は先ほど述べたようにお金自体を商品として扱うメタの性質があります。これにより、資本主義が前提とする市場の調節機能が効果的に働かない場合が多々あるのです。その最も顕著な事例が先にも挙げたバブル経済な訳ですが、だから金融ビジネスを活性化させすぎると、世の中は不安定になってしまうのです。
そして、もう一つ、気を付けてもらいたい点があります。
世の中には、金融ビジネスを活性化させればまるで貧富の格差が縮まり、平等社会になるかのような言説を述べている人がいますが、まったくのデタラメです。中には資本主義が本質的に不平等である点を説いたトマ・ピケティさんまで持ち出して、「金融ビジネスを世間の人々が行うようになれば、世の中は平等になる」かのように訴えている人がいますが、そんな事は彼は言っていませんし、そんな現象も起こってはいません。
むしろ、金融ビジネスは貧富の格差を増大させるんです。アメリカでは一般の人達が株をやり始めてから発展途上国並みに貧富の格差が広がってしまいました。
そして、その原因は金融ビジネスに正のフィードバックがある点に求められるのです。
金融ビジネスには実は「お金を持っていれば持っているほど有利」という特性があります。だからこそ銀行はメガバンク化する傾向が強いのです。そして、これは金融ビジネスの“富”には、正のフィードバックの性質があるという事でもあるのです。
その為、都市に人口が集中するように、富も集中していきます(「参考文献:複雑な世界、単純な法則 マーク・ブキャナン 草思社」309ページ辺りから)。
つまり、お金をあまり持っていない人は、金融ビジネスを始めると損をしてしまう可能性が高いのです。
偶に有名なインフルエンサーなどが、金融ビジネスを勧め、「自分も儲かった」と金融商品の宣伝などをしていたりしますが、彼らは元々大金持ちである場合が多いです。お金を持っているのだから、金融ビジネスで有利なので勝てていたとしても不思議でもなんでもありません。
ですが、もちろん、我々のような一般人にはそれは当て嵌まりません。むしろ不利な立場です。
「あの人が成功をしたのだから、自分も稼げるはずだ」
などとは思わない方が賢明です。
これだけではまだ納得しない人もいるかもしれません。が、大金持ちが有利な点はこれだけではないんです。大金持ちは、ハイレベルな数学者を雇い、微分積分などの高等数学を用いて金融ビジネスをより有利に進めています。更に最近ではAIの活用も脅威となっています。
しかも、AIについては、半ば犯罪のような高速回線を使った手段を使っているともいいます。ほんのわずかな時間ですが、高速回線を使えば早く取引が可能であり、それにより後出しジャンケンのようなズルがAIにならば可能だというのですね。
これ、国によっては犯罪だそうですが、日本では僕の知る限りでは犯罪にはなっていないはずです(「参考文献:人工知能が金融を支配する日 櫻井 豊 東洋経済」46ページ辺りから)。
一般人がそのような者達を相手にして、勝てるはずがありません。
金融ビジネスを多くの日本人が行えば、当然ながら金融会社は儲けを出す事ができるようになります。また、アメリカの証券会社なども歓迎するでしょう。もちろん、収入が増えるからです。
だからでしょう。
金融庁などの官僚や政治家達は必死に国民に向けて金融商品を買うように売り込みをかけています。
が、これまで述べてきた点を鑑みれば分かると思いますが、金融ビジネスに手を出すのは慎重に判断した方が良いです。
最近はどうか分かりませんが、「日本の金融機関は手数料で儲けている為、顧客の収入を増やすことにあまり積極的ではない」といったような悪評を耳にすることもあります。
どうか、国などが行っている喧伝に騙されないようにしてください。