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戻り時計  作者: 村良 咲
混沌~明絵編~
13/55

肝試し

 竹原明絵は『キャンプのしおり』を開いて、どうしたものかと思いあぐねていた。


「キャンプと言ったら肝試しだよな」


 そう言ったのは誰だったか。


 クラス替えをしたばかりの中学二年の四月末、仲のいい子が全くいないわけではなかったが、多少仲のよかった子たちはもっと仲のいい子が同じクラスになったことで、『いつも一緒にいる』という相手がまだできないでいた明絵にとって、五月末に予定されているそのキャンプは苦痛でしかなかった。


 そんなキャンプの班決めでは、担任の岩谷が気を利かせたのか生徒の顔色を窺っての点数稼ぎか知らんが、男女それぞれ三人ずつのグループを作り、それからそのグループをクジでくっつけて六人の班を作ると言ったのだ。


 そういうとき、まずすごく仲のいい二人がいれば、二人でグループを作る。そこから、もう一人誰にする?というわけだ。そのもう一人は、そうしたものすごく仲のいい子で二人や三人のグループがすぐに作れずにいて、周りを窺っているその二人のお眼鏡にかなった子が選ばれる。


「明絵、誰と班を作るか決まってる?」


「ううん、どうしようかなと思って……どこか二人のとこに入れてもらおうかなって」


「じゃあさ、一緒に班を作ろうよ。私と里沙と」


「うん、じゃあ入れてもらおうかな」


 なんかこの入れてもらうというへりくだった感は嫌だなと思いながらも、最後までどこからも声がかからず、どこにも入れずの残り物になるのが嫌で、それに、声をかけてもらえたことを嬉しく思う気持ちもやっぱりあって、同意した。


 そこからの男子グループとのくじ引きになり、明絵の班は杉尾真生、坂本潤、前山拓也たちとの五班に決まった。


 杉尾真生。


 真生とは一年の時から同じクラスで、好意を寄せていた。


 真生は飛び抜けてイケメンというわけではなく、ごく普通のイケメンだった。つまり、近寄りがたい過ぎるイケメンではなく、自分にでも手が届くのではないかというくらいのイケメンで、優しい性質を持つ真生は、それだけでもモテる素質を十分兼ね備えていた。


 が、中学生の真生には色恋にはまだ興味があまりないらしく、昼休みのたびに男子たちと連れ立ってサッカーに興じる姿は、女子の視線など気にも留めない、いや、全く気付いてすらいないように思えた。


 そんな真生は、二年へのクラス替えで別のクラスになった菅野由貴から「話があるので、放課後西館の裏に来てください」という手紙を人づてにもらい、「由貴ちゃん何の話?放課後は部活もあるから今でもいい?」と、昼休みに由貴のクラスまで行き、ちょうど廊下に出てきた由貴のクラスの女子に由貴を呼んでもらい、そう言った。それに気づいた真生に手紙を渡した由貴の友達の葵が出てきて、真生をまだ人気のない階段まで引っ張っていき、「あんな人が多いところで、デリカシーなさ過ぎでしょ。由貴は告白したかったのよ」と言ったというのは一部女子の中で噂になっていた。真生は自分が告白されるなんて、夢にも思っていなかったようだ。


 真生がそんな調子なのだから、今、真生に好きとかどうとか言っても仕方ないだろうと思っていた明絵は、このキャンプで同じ班になったことで、少しでも自分の印象を真生によく思ってもらえるようにできないかと考えていた。


 二泊三日の初日の夜のキャンプ活動の中にキャンプファイヤーがあり、それは全クラス合同の活動のため、班でどうこうするわけではない。問題は二日目の夜だ。そこは各クラスごとの自由活動になっている。その二日目の夜の活動が肝試しになったのだ。


 そのキャンプ場は、テントを張ってそこに泊まるというキャンプで、二百人を超える学生が五~六人ずつ一つのテントを使うのだから、広大な敷地があり、テントを張れる場所を囲むように山道の遊歩道がある。遊歩道とはいっても木々に囲まれているため、夜になると闇に囲まれて、それはそれは怖いこと間違いないだろう。


 そして明絵のいる二組が肝試しをやるという話を聞きつけて、五組も肝試しをやることになったというではないか。同じ場所での肝試しのため、それぞれのキャンプ実行委員が集まり、これはある意味都合がいいと、合同肝試しをやることになった。合同でやることのメリットは、それぞれのクラスが肝試しをやるときに、お化け役を相手のクラスにやってもらうことで、クラス全員が肝試しができるということだ。まあ、はたしてそれがメリットなのかどうかはわからないが。


 そんなわけで、お化け役をやりたいと手を挙げた男子たちが集まり、どんなふうに五組を怖がらせるか盛り上がっている中で、班員六人ずつで歩くのは怖くもなんともない、二人ずつペアを作ってやろうという話になり、それが両クラスに伝わり、夜活動の時間内で二クラスが終わるのであればということで、いつの間にかそういうことに決まっていた。


 そうだ、二人ずつ肝試しをするのだ。


 では、どんな組み合わせをするのか、それはそれぞれの班に任せると言われたが、男女三人ずつの班なのだから、どう組み合わせたところで必ず一組は男女の組になる。そんなわけで、だいたいの班は班員に気を使い……といえば聞こえはいいが、女子三人が二人と一人にならないように女子たちが気を使い、男女のペアで行くことになった。


 そして、そんなうまいわけにはいかないだろうと思った明絵だったが、くじ引きで決めたペアの相手は真生だった。

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