未来という今
戻る未来 1996年 7月21日 18時
その時間、和彦は雪乃の遺骨を胸に抱いて、茫然としていた。
「なぜだ。どういうことだ。あと一回使えるはずだったのに、なぜ何も起きないんだ……」
雪乃、雪乃、雪乃。雪乃が先に逝く未来から、俺は逃れられないのか。二回とも上手くいったじゃないか。雪乃が逝き、過去に戻ってやり直して雪乃がそこにいて、また雪乃が先に逝き、また過去に戻ってやり直したのに、なぜまた雪乃が先なんだ。なぜ雪乃は俺より先に逝ってしまうんだ。願ったのは雪乃に看取って欲しいそれだけだったのに。雪乃がいなければ俺はダメなんだ。雪乃が先じゃダメなんだ。雪乃がいない人生など、俺には耐えられそうもないんだ。雪乃には俺より長く生きて欲しかった。俺を看取って欲しかった。それだけが最期の願いだったのに。
三回しか使えないこの戻り時計、残す一回に希望を託して和彦は過去に戻ってまた雪乃を助けるはずだった。なのにその三回目が起きないのだ。
誰かが使ったのか?……
誰だ?
まさか、……雪乃か?
何をやったんだ!……「雪乃っ」……
雪乃編~了~