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ワールド・ロジック~黒人の歩み~  作者: 紫煙の作家
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No3 状況把握と未知の力

 もう少し過去と現在の話が続きます。

           No3




 固い土の上で目が覚めた。

 「....っん...っんん。....体が..痛い」

 意識が少しずつハッキリしてくると、背中側が痛いことに気がつく。仰向けの状態で寝ていたのだから当然だろう。そして、さらに気づいた事があった。


 「おっ...おい、なんで裸なんだよ?!」

 少し肌寒いと感じ上体を起こし自身の体に目を向ければ、服を着ていなかった。さらに、自分の声色が若い事に気がついた。日影の声は自分が思って出した声よりハリも響きもあったのだ。一瞬の困惑に陥るがそれよりも自分が裸だった事の方に意識が向きすぐに棚上げした。


 目覚めのインパクトとしては少し強い。だが、インパクトがあった為に寝惚けることはなかった。少しだけ惚けた時間はあっただろうが、時間にすれば長くて数分だろう。すぐに周囲を見回し自身の状況、さらに状態を確認した。


 目が覚めた場所は少しだけ岩肌から陽の光が射し込んでいた。最初に見た光は陽の光だとは理解できていなかったがのちに理解する。


 寝ていた場所から立ち上がりざっくり自分の体を確認する。その際に怪我が無いことや体に異変が無いかも確認した。変わっているのは声の違和感と少し目線が低かった事なのだが、とにかく裸で寝ていたのが衝撃的だった。

 「.....とりあえず、無事? でいいのか? ここは、どこだ?」

 口から出た言葉に対して答えてくれる者は存在しない。


 視線の先に見える光に近寄っていった。どれぐらい寝ていたのかは分からないが、体は自分の思うように動いた。しかし、記憶にある自分の体よりずいぶんと動かしやすいと感じながら。視線の高さに違和感があるが意識はしっかりし、状況の確認に重きをおいた。


 光が射し込んでくる場所の近くに立てば、それが陽の光だとすぐに分かった。光に手をあてるとほんのりと暖かさを感じたからだ。さらに、周りを触れば岩肌だと分かる。陽の光は岩肌の隙間から射し込んでいた。

 「これは、岩を崩せば外に出れるのか?」


 自然とそんな言葉が出てきた。だが、この向こう側がどうなっているのか? 裸で寝ていたのだから誰かが自分をこの場所に連れてきた人物がいると考えるのは当たり前だと気がつく。


 光が射し込む場所から向こう側を静かに覗く。すると、見えるのは濃緑の葉を繁らした立派な木が見えた。他に何か見えないかと覗く角度を変えながら見てみるが、視界に入る光景は立派な木だけだった。それも、たくさん。見えるのは木だけだった。脳内の中では脱出の事を考え始める。


 「....どうする? 幾つか案はあるが....」


 声を出す。陽の光が射し込む隙間から少しだけ手を出してからすぐに引っ込めた。安易な行動をとれば自身の身が危ないと感じたからだ。脳内で浮かべた脱出案は岩肌を叩く、もしくは蹴るなどして岩肌を崩す。二つ、三つならすぐに思い付くが現状を考えるとやはり安易な行動はとれない。


 もし、誘拐犯に見つかればどうなるか分かったもんじゃないだろう。すでに、裸で寝かされていたのだから誘拐犯の連中は頭が可笑しいと考えるのが当然だ。

 実際には、誘拐犯など存在しないとのちに分かるのだが。この時点では情報が足らず、誘拐犯が居ると仮定して行動している。


 それからしばらく自分が寝かされていた空間、洞窟内に身を守る物がないか、さらに可能性は低いが服や食糧といった物資がないかの確認をした。ほんの少しの岩肌から差し込んでくる陽の光を頼りに。


 だが、特に得るものはなかった。光が射し込んで居るとはいえやはり洞窟内は視認性は極端に悪い。せいぜい、洞窟内に転がっている小石を見つけるのが関の山だった。それでも、人に投げつければ小さな傷や意識を割けるぐらいにはなるだろうと考えて集めた。


 しばらくの間、この場所から脱出する為の方法や今後の予測できる展開を考えうる範囲でいくつも脳内でシミュレーションした。こうなった場合は? ああなった場合? 相手がこう来たら? そんな事を考えていると自分がとんでもない事を忘れていた事を思い出した。


 自分が死んだ事をすっかりと忘れていた事に。日影はすでに自分が寿命で臥せって亡くなっていた事を思い出した。


 「あっ!!...ちょいまて、俺は死んだ..はずだよな? 夢...明晰夢? じゃないな。こうして感覚はある。体も動くし、痛みも感じる....」


 そこからはずいぶんと考えた。自問自答を繰り返し、この状況を答えを導くために。

 自分の記憶を思い出していった。若い頃、働いてる頃、中年時代、さらに自分の死に際の事。そしてようやく思い出した。死に際にかけられた"声"を、"響き"を。



 それからまた少しの時間が考え込んだ。今度は、洞窟内からの脱出や誘拐犯への対抗手段ではない。自分が生きていた頃に観たり読んだりした物語の事を思い出していた。


 現実では起こり得ない物語を観たり読んだりするのは楽しい。非現実な世界観を想像し、多少の着色をして夢想するのは好きだった。こうなったら楽しい、自分だったらこうする。ここの場合はこうした方がもっと面白い、あの場合はちょっと物足りないなど考えるだけでワクワクドキドキしたりするのが楽しかった。

 当然、もしそれが現実だったらそんな考えは浮かんで来ないだろうが。


 だがしかし、今の状況と照らし合わせると非現実な考えが可能性の一つとして持ち上がる。


 「....異世界...」


 その答え合わせをするには、まだ早い。早計だと、思える。裸で洞窟内に寝かされていたぐらいで、まさかの"異世界"だと考えるには。自分の死亡時にはすでに老人と言っても間違いない年齢だったはずだ。どこぞの中学生が考えるような病はすでに卒業しているはずだと日影は思っている。


 「情報があまりにも足らない。情報を得るには洞窟内から出ればいい。しかし.....」


 この際、自分が確かに死亡した事やワケわからない声などは一旦棚上げしておく。現状把握が優先だと、思考を切り替える。そして、今一番の問題は防衛手段が皆無だという事だろう。

 いくら生前に六十年ほど生きていたと言っても武道の嗜みは無い。暴力沙汰に遭遇する事がほぼ無い平和な国、強いては住んでいたのだから。教育的な指導を受けた事はあるが自ら暴力的行為を行う事は一度もなかった。ただし、脳内では数えきれないほどに想像した事はあった。ムカつく上司や同僚、見知らぬバカな男女や老人などは脳内で制裁を加えたりした事は誰しも一度や二度はある。だが、それぐらいだった。


 人は誰しも一度くらいは憎しみを抱いた事ぐらいはあるはずだ。人は生まれながらにして"欲深き生物"なのだから。


 現状、手元にある防衛手段は洞窟内で集めた小石とうろ覚えな体術。なんとも心許ない限りだ。しかし、それしかないのであればそれに頼るしかないわけだ。


 「....よし、少し練習するか」

 考えた結果なのだろう。ぶっつけ本番でするよりはマシなるはずであろうと考えるのはごく自然だ。


 あのような"コト"にならなれば・・・。






△▼

 時おり吹く風は気持ちが良い。自然豊かな街道をゆっくり歩くのは。しかし、この世界で"一人で歩く"行為は人に優しくない。この世界は、弱肉強食。気を弛めばすぐに強者の糧となってしまう。


 「...っん? 反応があるな。..."また"野党か...」


 この世界には、魔法が存在する。そう、あの魔法が。詠唱を唱えると火を起こしたり、水を出したり、風を吹かせたり、土を操ったりする魔法だ。所謂、ファンタジーと言われるような事がこの世界では当然のように出来る。ただし、それなりの知識や修練は必要になるが。


 さっき、俺が"感知"したのも魔法の一種だ。人によっていくつかやり方は変わるが、俺のは魔力と呼ばれる魔法エネルギーを周囲に薄く薄く拡げるやり方だ。任意で方向も変更できる。今は、自分を中心とした円形状に拡げている。探知範囲は半径三十メートルぐらいだ。


 この世界のあらゆる生物は大なり小なり魔力を持っている。さらに、"魔獣"と呼ばれる、あるいは認定されている種もだ。

 さっきの反応からして俺は人だと判断した。判断した理由は、獣類なら魔力量が多すぎる。魔獣なら魔力量もそうだが"魔核"の反応があるはずだからだ。人種(ひとしゅ)に属してる種族に"魔核"は存在しないと言われている。


 魔獣には必ず"魔核"と呼ばれる結晶体が体内に存在する。俗に"魔石または魔晶石"と呼ばれる物だ。魔石または魔晶石はその名の通り魔力の結晶だ。魔獣は魔力を体内に蓄積させる器官があり、その蓄積した魔力が結晶となったものだと魔獣を研究する者達の中では通説になっているのがこの世界の常識の一つだ。


 俺の探知範囲は約三十メートルだ。と、同時に俺が瞬時に動ける距離でもある。これ以上の探知範囲を拡げることは出来るがそうすると多少の労力を要する。不要時は特に範囲を拡げたりはしない。


 道端に転がる拳大の石を拾い、おもむろに振りかぶり反応があった場所へと投げつけるとーーー


 ヒュッ!ーードォーーッン!


 まるで上空から砲弾が着弾したような半径数メートル程のクレーターの出来上がりだ。自分に何故こんな事が出来るのか? そして、魔法が使えるのか? 


 この"力"を理解し使えるようにこの二年ほど修練した。まだまだ、使い方は極めていないが。そして、この力を知ったからこそいま、俺はこうして"洞窟から抜け出せて旅をしている"のだから。



 明日も投稿します。

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