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ワールド・ロジック~黒人の歩み~  作者: 紫煙の作家
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No21 旅立ちと扉と巨像

 過去の話しと現在の話しになります。

          No21



 日影はレーベントの街から旅立つ事を考えていた。すでに街での暮らしは一年半が経ち、シェイドとの訓練とミローネからの魔法指導には区切りがついていた。

 さらに、ミローネから聞かされた話からしてレーベントの街だけで調べるには情報が足りなかった。ミローネから話を聞いてからさらに色々と調べミローネとも話を重ねると行かなければいけない場所がそれなりに出てきた。


 そしてある日に、旅立つ事をシェイドとミローネに話をする。


 日影とシェイド、ミローネの三人はミローネの家に集まっていた。

 「さっそくなんだけど、オレは旅に出ることにしたよ。やっぱり調べるには他の街に行かなきゃいけないし、もしかしたら国や他の大陸にも行かなければならないかもしれない」

 「そうさねぇ、この街じゃ調べるのは限界があるさね。やっぱり王都に行くのがいいかねぇ。王都なら今よりは調べられるさね」

 「なんだよ、やっぱり行くのよぉ。せっかくコキ使える弟子が出来たってのよぉ! 別に調べなくてもこのままでいいじゃねぇのか?」

 ミローネは日影が旅をするのに同意し、シェイドは自分勝手な物言いで日影を引き止めようとする。


 「ただ暮らすだけなら別にシェイドの言ったように調べなくても良いだけど、やっぱり知りたいんだよ。どうしてこの世界に来たのか? ってのがさ。それに、オレは誰かの手によってこの世界に送られたとやっぱり思う」

 「それってやっぱりアレなのか? 声が聞こえたってやつかよ?」

 日影はこの世界に来る直前に、頭の中に聞こえた声が気になっている。その声が聞こえた話しはシェイドもミローネも知っている。


 「うん、オレが洞窟内で聞いた声は確かに聞いたんだ。あれは錯覚じゃない。それに、色々と道標は残ってたし照らし合わせると、ねっ」

 「アルカディアと蘇生魔法、それと召喚魔法かい? でも実証は出来なかったじゃないかい。召喚魔法も発動はしなかったさね。まぁ、正確な魔法陣じゃないし発動させるには何かが足りないのか魔法陣が正しくないのか分からないけどね」

 日影はミローネからさらに詳しく魔法という概念や魔法議論を重ねてきた。魔法練習と大義を掲げつつ実態は実験を繰り返したが結果は芳しくなかった。その中には無闇に首を突っ込んではいけないようなことがあったりもしたが、前の世界とこの世界では色々な常識が違い出来なかった事が出来たりもする。


 「それを調べる為にも他の街で調べたいし、ついでに世界も見てみたい。すぐに分かるとは思ってないけど、ここにいれば分からないままだから」

 「けっ! なに一丁前なこと言ってんだよっ。たかだか冒険者を一年程度ぐらいやった甘ちゃんがよぉ。少しは強くなったが図に乗ってると死んじまうぞ?」

 シェイドは愛弟子である日影に対して素直に助言を伝えた事は数少ない。そして、助言を伝えるときは決まって口が悪くなる事を日影は知っている。今言った言葉も、照れ隠しが混じっていた。


 「分かってるよ。でも、シェイドと互角には戦えるようになったし、魔法もミローネからお墨付きをもらった。あとは経験を積んでけばそう死んだりしないよ」

 「へーへーそうかい。そりゃ、凄いなぁ。だが、オレはまだ本気を出してねぇからなっ! そこは勘違いすんじゃねぇぞっ!」

 類は友を呼ぶ、と言ったりするが日影も素直に返事を返したりしない。やはり、弟子は師の背中を見て育つのだろう。


 「はいはい、分かってるよ。何度目だか分からないセリフは聞き飽きたよ。これから、お世話になった人たちに挨拶してくるから。明日の朝には出発するよ」

 「忙しいねぇ。しっかりと挨拶してくるんだよ? みんなアンタが好きだからねぇ」

 「そうか? オレは別に好きじゃねぇぞ!」


 「アンタの素直じゃないねぇ。弟子の門出ぐらい素直に喜べないのかねぇ。カズト、夜は出発祝いも兼ねて豪勢にいくからナックの店に来な。ついでに、アンタもね。良い酒を飲ませてやるさねぇ」

 「おっ! さっすがババアっーーゴツンっ!! イッテェーーっ!」


 「ははっ! じゃ、行ってくるからまた夜に」


 日影はシェイドとミローネに話をしたあとに今まで世話になった人たちへと挨拶回りに行った。



△▽

 日影は約束のナックの店にやって来た。この店は他の店に比べて少し敷居が高い。料理や酒はそれなりに高く店内もシックで上品で清潔である。

 日影は店員に案内され個室へと入った。


 「おうっ、やっと来たかよっ! まぁ、座れよっ」

 シェイドはすでに酒とツマミを頼み飲んでいた。


 「もう飲んでるの? ミローネは?」

 卓にはシェイドしかおらずミローネの姿が見えない。


 「さぁな、まだ来てねぇよ。もう少ししたらくるんじゃねぇのか? カズトも座って待ってろよ。ついでに適当に頼めっ!」

 「頼めって。支払いはどうするのさ? 結構するんだよ、この店」

 日影は備え付けのメニューを見ながら言った。料理の値段はいつもの店より二倍から三倍の値がつけられていた。いつも飲み食いしてる居酒屋とは格も質も違っている。


 「大丈夫だよっ! あのババアっは結構持ってるからよっ! こんなのは頼んだもん勝ちの食っちまったもん勝ちよっ! ガハハハッ!!」

 指で貨幣を表す形にしながら、悪ガキのような言い方をして笑うシェイドである。


 「あとからまた怒られても、オレは居ないから知らないよ。じゃ、コレとコレにこっちも頼もうかな」

 日影はシェイドに罪を背負ってもらおうと、幾つか高い料理を頼んだ。それからしばらくシェイドと二人で食事をしてるとミローネが入ってきた。


 「おや、やっぱり始まってねぇ。悪かったねえ、遅くなって。ちょっと時間がかかってねぇ」

 ミローネは個室に入り、言いながら卓に座った。


 「おせぇよ、何してたんだよ。んじゃ、さっそく乾杯しようじゃねぇかっ!」

 「まだ、何にも頼んでないよバカだねぇ。カズト、果実酒とチーズを頼んでおくれ。それと、ギャオスの香草焼きもね」

 シェイドにさっそくツッコミを入れてからミローネは、日影に酒と料理を頼んだ。


 ちょっとした雑談をしてる間に酒と料理が揃うと乾杯が始まった。

 「おらっ、お前の門出なんだからなんか言えよっ!」

 「えっ、オレが言うの?」

 シェイドが日影へと音頭を取るように話をふった。日影はミローネに視線を向けるがミローネは頷くだけだった。日影は、酒の入ったジョッキを掲げて音頭をとる。


 「それじゃ、これからの旅と二人の未来を祝してカンパーイッ!!」

 「「カンパーイッ!!」」


 その日の夜はたくさんの話をして笑い、旨い料理と旨い酒をたらふく日影は食べて飲んだ。

 この世界に来てから心から温かい夜を過ごしたのだった。


▽△

 翌日朝早く、レーベントの街の入口ではシェイドとミローネが日影の見送りに来ていた。

 「カズト、体に気をつけてるんだよ。それから、たまには手紙を寄越しなねぇ。アタシはこっちで調べられるだけ調べてあげるさね」

 「ありがとう、ミローネ。ミローネも体に気をつけて。手紙はなるべく書くようにするよ」

 日影とミローネは互いに抱きしめ合い別れを惜しんでから離れた。


 「それから、これは餞別さね。今まで調べた事をまとめた物だよ。旅をしながら読んでみるといいさね」

 ミローネは数冊の本をミローネに渡す。どれも丁寧に製本されたものだった。


 「ありがとう、大事に読ませてもらうよっ!」

 日影は受け取ると肩から下げた見た目がボロい収納鞄に仕舞った。見た目がボロくみえるのはそのように偽装されたからだ。性能は国宝級といっても過言ではないものなので、あえてそのようにして人目につかないようにしてある。


 「ほら、アンタからも挨拶しなっ! 弟子の見送りなんだからねっ!」

 と、ミローネは隣で気持ち悪そうに唸ってるシェイドに向かって言った。


 「うぅ...わっ、わあってるから...ウプッ!」

 シェイドは昨夜飲み過ぎの為に手に口をあてていた。それでも、弟子である日影の為に手に持っている一振りの剣を渡す。


 「ほっ、ほらよ...餞別だ。大事に...使えや...ウゥゥ、きっ、気持ち悪っ!」

 日影はシェイドから受け取った剣を鞘から抜き、剣身を確認してから鞘に戻し、収納鞄に収めた。


 「ずいぶんといい剣だね。ありがとう、シェイド。大事に使うよ」

 日影はシェイドと握手を交わした。


 「ふっ、フンっ! 簡単に死んだりするんじゃねぇぞ? 達者にやれっ」

 シェイドは言葉少なに日影に言った。最後まで締まらないシェイドだが弟子を思う気持ちは確かなものだった。


 「お世話になりました。なるべく連絡するようにします。ミローネもシェイドも元気でっ!!」

 日影はまだ薄暗い空の中、ダレアナの街を背に旅立った。


 目指すは【ブレアナ王国、首都・ブレアス】に向けて。



△▼

 日影とロッカは地下へと続く梯子で地下道に降り立つ。通路は二人並んで歩けるぐらいの幅であり天井も高くはない。せいぜいロッカの背丈より頭一つ分ぐらいの余裕しかなかった。

 「すいふんと狭いなぁ。これじゃ、戦闘は一対一だなっ!」

 「あぁ。ロッカ、ちょっと下がってくれ。魔法で空気の循環をするから」

 日影はロッカより少し前に出て、杖を取り出し詠唱する。


 「風よ、風よ。清涼なる風を吹け。【清き風流(ラ・ウィンディア)】」

 日影の魔法で風が起こり通路の奥まで風が吹くと、同時に日影は無詠唱で探知魔法を発動させる。

 「(んっ!? 反応が三つ、これは.....まぁ、行けばわかるか) ロッカ、先に進もう。魔力の反応が三つあるけど、今は動いてない。警戒しながら行く」


 「おしっ! 警戒は厳にしとくぜぇ!」

 「光よ、光よ。我の行く道を照らせ。【光球(フラッシュ)】」

 日影はさらに光の玉を前後に出現させた。これで、視界はある程度確保され通路の奥へと入っていく。その様子をロッカはジッと見ていた。その視線にどんな考えを巡らせているのは日影は知らない。



△▽

 地下通路を歩いた距離はそれほど長くはなかった。罠が無いか慎重に進んだ結果、一時間と少しといったぐらいで広い空間にたどり着いた。本来なら、その半分の時間ぐらいで目的の場所に着くのだろう。


 たどり着いた空間は半円形ですいぶんと広さがあった。正面奥には大きな扉がありその両端には巨像が立っている。日影が探知したのは扉と巨像二体の魔力だった。


 「なんだか、なぁ...明らかに何か仕掛けがありそうだぜぇ、ヒカゲよ?」

 「あぁ、扉と両端の巨像から反応がある。近づけば巨像が襲う罠だろう。それと、あの扉」

 日影は巨像と扉に指差し話をしていく。


 「あの扉を開ける何らかの鍵、もしくは仕掛けがあるはずだが.....どうする? 近づけば十中八九襲われるぞ? ちなみに、オレは扉を開ける鍵を持っていない。仕掛けがあるか分からない」

 「どうするってよぉ....さすがに二人じゃあの巨像はちっと無理じゃね? ってかオレの剣じゃ傷をつけられても斬る事は難しいな。日影は魔法が主体なんだろ? どうにか出来る手はあるのか?」

 ロッカは自己分析し、自身の考えを日影に言う。ロッカの性格から戦闘へと移行するかと日影は読んでいたが、さすがは銀級といったところか。しっかりと戦力分析は出来ていた。


 「(魔法か....出来なくはないが、この地下空間が崩れかねないな。それに、ロッカはやはりオレが魔法主体(・・・・)だと思ってるか) 攻撃魔法はあるが、それは使えないな。この空間が崩れたら生き埋めだ」

 日影の戦闘は完全な近接戦闘を得意とする。が、日影はあえて魔法主体だと思わせるような立ち振舞いをしていた。それは、ロッカに実力を見誤らせるのが目的だった。


 多少の言葉を交わし臨時のパーティーを組んではいるが、完全に信用してるわけではない。


 「そうか....なら、撤退だな。せめて防御特化か巨像に攻撃を加えられる冒険者が必要だぜっ。まぁ、日影がやりたいってんなら付き合うが、さっき言ったようにオレの剣じゃ傷をつけられても倒せしねぇ」

 日影はロッカの話を聞いてから少し思考する。


 せっかくここまでたどり着き見つけた場所である。何も得ずに帰るのは後ろ髪を引かれる。が、巨像を倒そうとすれば自身の力を見せなければならない。

 別に見せるのは構わないが、その後の干渉が日影には面倒だった。理解しがたい力を見た者はそれを知ろうとするし、話したがるものだ。ロッカが日影の力を見れば必ず何かしらの行動をするだろう。


 日影は少しの間考えるとロッカに言った。


 「とりあえず、一度地上に戻ろう。ここにいても今は仕方ない。一旦、今後どうするかを考える」

 「わかったぜっ、んじゃあ戻るか」


 日影とロッカは通路を戻り地上へと出た。




△▽

 遺跡の地下通路から出てきた日影とロッカは石柱が立つ広場へと戻ったが、日影の探知魔法に反応があった。

 「ロッカ、反応が三つある。警戒してくれ」

 「んっ? あぁ、わかった。オレも気づいたぜっ!」

 日影はロッカに短く伝えると反応があった遺跡と森の境に視線を向けた。


 「魔獣の反応じゃない。獣...でもないな。たぶん、人だ。盗賊か冒険者かは分からないが、どうする?」

 日影は隣にいるロッカに視線で反応がある場所を合図する。そして、ロッカの判断を伺った。




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