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続・竜太の壁

 最初の日本酒二合が空になる頃、二人は少し打ち解けた。

「鷲野さん、いける口だね、ジュースみたいなお酒しか飲めないのかと思ってた」

「何か、かわいい飲み物しか飲まないと思われてて、一度日本酒とか飲んでみたかったんですよ!美味しいですね!」

 次の日本酒が空になる頃には、もう少し打ち解けた。

「てゆーかさ、鷲野さん、何でジャージ?いつものお洒落なOL風から一気に変わりすぎでしょ!」

「だって、通勤着かおしゃれ着か部屋着しかないもん!仕方ないでしょ!」

 そして、その次に頼んだ芋焼酎を飲み干す頃には、かなり打ち解けていた。

「俺、鷲野のこと勘違いしてたわ、男をとっかえひっかえしてる美人なだけの悪女だと思ってたけど、めっちゃいい奴やん!」

「私は理想がそこそこ高めなだけだし!見合わない男とはすぐ別れちゃうだけだもん!私も坂下のことただのチャラ男だと思ってたけど、案外あんたいい奴ね」

「何か、徹ちゃんと梨紗ちゃん、仲良くなってない?」と、何だか打ち解け合った二人を見て大将が言った。

「おう!なんっつーかもう、マブダチだ!」

「そうね、マブダチね」

 何だかんだ二人はマブダチになったらしい。

「ところでよう、マブダチ!」

「何よ?マブダチ!」

「今日は、何で、メイク落として着替えてまで、ここに来たわけ?」

 そして、マブダチになったところで、不意に徹は核心を突く質問をした。


「いつも、美味しそうな匂いがするから一度来てみたかったのよ!」

 梨紗子の言葉に大将がにやけた。

「もっと早く来てみたら、もっと楽しかったのに!勿体ないな!」

 徹から言われて、梨紗子はその通りだと思った。

 店の雰囲気も温かくて、常連さんも皆仲良しで面白くて、お酒も料理もめちゃくちゃ美味しい。

「確かに、もっと早くこの一歩を踏み出すべきだったわ……」

「この、記念すべき一歩を踏み出したのには何か理由があるんだろう?」

 徹に言われて、梨紗子は、今日はとてもムシャクシャしていたことをふと思い出した。

「めっちゃ美味しいし楽しくてすっかり忘れてたけど、今日すごくムシャクシャしたことがあったのよ!」

「忘れてたならまあいいか」

「よくないわ!思い出したらムシャクシャしてきたから、聞いてよ!どうせ!徹ちゃんとは仕事で関わらないんだから聞いてよ!」

「おう!いいよ!俺、総務のお局に気に入られてるから仕事で梨紗ちゃんに話しかけることないしね」

 そして、梨紗子は今日のムシャクシャの原因である竜太について話した。

「鈴村さんの女好きとマドンナ好きは有名だもんなぁ」

 徹はそう言うと、会社で高志と梨紗子が会話をすることは難しそうだと頭をひねった。

「じゃあ、逆に休日なら鈴村さんに邪魔されないかな?」

 そう言うが早いか、梨紗子は高志に明日の都合はいかがですかとメッセージを送った。

「まだ20時台だから返事来るかなぁ?」

「くるんじゃね?」

「ホントだ!来た!明日はご近所さんたちとバーベキューだって!私も混ざって良いって!混ざっちゃおっかな?」

「ちょっと待て!」

 返事をしようとした梨紗子を徹が制した。

「神野の隣の家には鈴村さんが住んでる。危険だ!」

「ウソ!職場であんなにベッタリなのに、ご近所さんなの?何?二人できてるの?もう、信じられない!」

 慌てて行くって送らなくてよかったと、梨紗子は高志のメッセージに返信しようとして、「そうだ、明後日も聞いてみよ!」と、言った。

「梨紗ちゃん、週末なのに……暇なの?」

「合コンとか入ってたけど、神野さん一筋になることに決めたから全部断ったの!私にだって友達くらい……」

 梨紗子が言葉を詰まらせたので、徹は察して「マブダチがここにいるだろ!」と言った。

「そうね!あ、返事来た!明後日は暇だって!ランチ行きましょって送っとこ!」

「よかったな!よっしゃ!じゃあ、乾杯しようぜ!」

 そして夜は更け、二人はそれぞれの家に帰宅した。


 翌朝、梨紗子は昼前に目覚めた。

 昨日あれだけ飲んだ割にはそんなに響いてないなと梨紗子は感じた。

「うーん、とりあえず、シャワー!」

 そう言って梨紗子はシャワーを浴びて、簡単な昼食をとった。

 気付くと、メッセージが二通届いていた。

 一通目は徹からだ。

 徹が、「何か進展あったら報告待ってるぜ!」と言って、その場のノリで、連絡先を交換したのだ。

 昨日は無事帰れたか?明日は楽しんで来いよ!いい報告待ってるぜ!

 徹はチャラいけど、いい奴だなと思いながら、お局からの急ぎの案件だといけないと、もう一通のメッセージを見た。

 相手は、高志だった。

 明日のランチに鈴村さんが一緒に行きたいと言い出しました。

「また、鈴村かー!」

 思わず梨紗子は叫び、思わず徹に電話した。

「急にどうした?」

 何だか周りがざわざわしている。

「今いい?」

「いいよ、何があった?」

「聞いてよ!神野さんからメッセージ来たんだけど、鈴村さんが明日のランチに一緒に行きたいって言い出したって!そこは断っといてよって思うのは私だけ?」

「いや、確かにそうなんだが、あいつは鈍いからな。それに、断ったところで、鈴村さんが簡単に諦めるとは思えない」

「もー!何で鈴村さんはことごとく私の恋路の邪魔をするのよー!」

「明日俺、暇だから、偶然居合わせて、鈴村さんだけ連れ出そうか?」

「え?いいの?」

「そうでもしないと二人きりで話せないだろう?」

「ありがとう!今度たろうでおごるね!」

 そう言うと、梨紗子は徹との通話を終了した。

 たろうというのは前日に梨紗子と徹がマブダチになった居酒屋のことだ。

 ちなみに、初代店主の名前からつけたらしい。

 徹に感謝しながら、梨紗子は高志に、鈴村さんも一緒で構わないですよ、と、返信した。

 意外とそこまでながくなりませんでした。

 なかなか進まない……。

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