リンゴの木
国を造り始めてから数日、着々と建築物が完成してきた。家は勿論店や工房その他多数の者が完成し、それに伴う人口増加により街には活気があふれていた。
魔神王が統べる国『ラヴァル』、建国すら終わっていないのに大陸統一国家になるというのは滅茶苦茶な話だ。
「バアル、知っているか?この大陸のど真ん中にある大木に生るリンゴと言うのは絶品らしいぞ。」
何の変哲もない夫婦の会話。一日の始まりを感じる朝日と共に食卓で話されたことは面白いものだった。
「何だ?そのリンゴと言うやつは。」
疑問に思うバアル。聞いたことのない言葉に自然と興味がわく。バアルの質問にアリスは生き生きとしながら話した。
「何でもリンゴと言うのは果実らしい。それはそれは美味しいらしいのだが、何でも最近流通量が減っているらしい。理由は知らないがそのせいでこっちに回ってこない。」
興奮しすぎて話し方を忘れてしまっているが、問題は無いのでそのまま聞くことにした。
「だから考えたのだが、回ってこないなら自分たちで取りに行けばいいだろう?だから今から行くぞ!」
珍しく考えもなしに物を言ったアリス。建国会議や現場指揮の時の知的な感じではなく、今は好奇心旺盛な小さな子供みたいに見える。
「分かったから落ち着け。」
身振り手振りで必死に訴えかけてくるアリスを見てダメとは言えず了承する。いつもとは立場が逆な二人だが、仲がいいことは変わらない。
「クレナイ達も呼ぶか?」
「二人がいい。早くいくぞ!」
リンゴに気を取られサラッと言ったがバアルには大ダメージだった。今日はちょうど二人が休みでクサナギを始めとした面々は皆仕事をしているため、結局は二人きりなのだがそんなことは知らない二人はリンゴの木に向かって飛び立った。
「空から見ると工事の進捗具合が分かって面白いですね。」
「ああ。そうだな完成したらどんなふうになるか楽しみだ。」
スピードは出さずゆっくりと空の散歩を楽しむ。空中デートと言っても間違いではないだろう。他愛もない会話を楽しみながらリンゴを求めて二人は行く。空に響く笑い声はとても楽しげだった。
小一時間位飛ぶと少し大きめな木が見えてきた。飛んだ時間からして恐らくあれが・・・
「リンゴの木だ、間違いない!早くいくぞ!」
アリスは急にスピードを上げて地面に降りた。そんなに慌てなくてもいいだろうにと思ったが俺もリンゴと言いうのは気になるので後を追う。
「む?」
先に降りたアリスが気の方を見ていった。何があったのかと思い木の方を見るとリンゴを布にいっぱいに包み持ち帰ろうとしている者がいた。
紫色の短めの髪の民族風の服を着た女だった。顔は木の方を向いていて見えないが身長は高めですらっとした体系だ。
布の中に木に生っていたリンゴをすべてつめているらしく木には実が一つもない。それを見たアリスが女に言った。
「そこの者すまない。私たちにも少し分けてくれないか?」
女がゆっくり振り返る。まだ顔は見えないがはっきりと見えるものがあった。馴染みのあるそれは髪の色と同じ紫色をしていた。額に生えた二本のそれは少し短いが角だった。
「すまないがそれはできない。」
完全に振り返らずにそう言い放った。そんなに大量に食べるのかと気になったが手ぶらで帰るとここまで来た意味がない。
「二つでいいんだが・・・それともお前がそれをすべて食べるのか?」
「お前には関係ない。」
段々アリスの顔が引きつっていく。それでもまだ笑顔で対話しようとしているがイライラしているのは間違いないだろう。拳を握り締めているのが見える。
「二つで・・・」
「失せろ。」
俺の隣からどす黒いオーラが見えている気がする・・・。俺の額から冷や汗が流れた
感想待ってます(ノ・ω・)ノ




