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黒い森

 





 黒い森は不気味なまでに静かだった。


 いつものことだが、夜行性の化け物が多いこの森は夜、辺りが静まりかえってからが本領を発揮する。


 この森で多発する襲撃事件が夜に多いのはそう言うわけだろう。


 私も夜目は効く方ではないが、さて、そんなので夜に出歩く凶暴な化け物をどうやって狩るのか? という点が今回重要なポイントである。


 手段としては二通り。



 まずは、罠を掛けておくこと、幸いにも、私という素晴らしい餌が森に迷い込んでいるのであるから、向こうからしたら格好の獲物だ。


 それを逆手に取り、罠を仕掛けておく、こうしておけば、翌日には化け物が見事に掛かってくれていることだろう。



 二つ目は錬金術を使った薬剤で夜目をきかせ、自ら狩りに行く方法。


 こちらも悪くはないんだが、リスクを考えれば前者の方が安全でどちらかと言うと効率的だ。ただし、目当ての獲物が掛かっているとは限らない。


 とまあ、そんな風にいろいろと話はしたが、他にもこの森が危険だと言われる理由は他にもある。


 例えばそう。



「おーおー、良い女がこんなところに一人で……」

「手挙げてもらおうか? お嬢さん」



 こんな輩もこの森には潜んでいる。


 下品な笑みを浮かべ、私に拳銃を突きつけて来る男達。


 うん、まあ、知っていたけどね、この森に入ったばかりから付けられているのは気づいていましたし。


 私が何もしないとでも? まさか、こんなことには慣れっこですから、無論対策は打ってありますよ。



「ん? 私に何か用かい? お二人さん」

「はははは、わかってるのにそんな事を今更聞くかい?」

「いやー、この森に来てからしばらく女を抱いてなかったからなぁ。

 ようやっと来てくれたって感じだよ、良い体してるなお前」



 そう言って、私と距離を詰めて来る男二人。


 大方、殺人か強盗かでこの森に身を潜めていた犯罪者だろう。そんな人種もこの森には集まってくる。


 よく、今まで生きてこれたなと感心はするが、森の奥にまで行かねば、さほどこの森で生き残る事に関しては問題はない、危険には変わりないけどね。


 私はしばらくすると笑みを浮かべたまま、私の身体に興味津々の男にこう告げる。



「試してみるかい?」

「話がわかるじゃねーか……それじゃ早速」



 そうして、私の身体に手を差し伸べてくる男。


 何というか、馬鹿だねぇとは思うよ、こんな簡単に私の間合いに入って来てくれるなんてね。


 私は男が身体に触れた途端、手の甲に薬剤を打ち込み体を翻すと銃を向けている男の前に盾にする。


 私の行動に驚いた銃を持った男が発砲してくるが、私は掴んできた男を盾にしているので弾丸は全てその男に直撃する。



「あーあ、お仲間殺しちゃって……」

「テメェ!? ふざけやがってぇ!」



 そして、私は腰のホルスターから『バレッタ』を抜くと、素早く構えて男に発砲。


 男に直撃した『メモリア』から一気に樹木が生えはじめる。男は変形していく自分の身体に恐怖を抱きながら、私の技を見て声を荒げた。



「お、お前……! れ、錬金術師だったの……!?」

「その通り、今更気づいても遅いんだけどね」



 私は抜いた『バレッタ』をホルスターに戻すと肩を竦めてそう告げる。


 眼帯をしている時点で察して欲しかったところだけどね、戦場帰りだって。激戦の戦争を経験している鍛えられた兵士とたかたが犯罪者が勝負になるわけないでしょう。


 私がその気になれば、君らなんて素手だけで鎮圧できるよ、めんどくさいし拳を痛めるの嫌いだからしなかっただけだけど。


 ちなみに、私は軍にいた頃は暗殺を依頼された事もあったからね、それだけ技術がある人間が相手だったのが君達にとって不幸だっただけだ。



「おやすみ」



 私がそう告げて、男に背を向けると男の身体は悲鳴と共に大樹に飲み込まれていった。


 身体から木が生えるってどんな感覚なんだろうね、身体から噴き出るように生えるから激痛なのは間違い無いんだろうけども。


 一方、私が盾にした男は仲間から拳銃で撃たれ虫の息だ。しばらくしてれば、この血の匂いに誘われて凶暴なモンスターがやってくる事だろう。


 あ、閃いた。



「良かった、まだ息はあるみたいだし、とりあえず餌はできたな」

「に、人間がやる事じゃねぇ……」

「君が言える事かな? 私は君らから襲われた時からそのつもりだったよ」



 人を殺したりする人間にかける情なんて持ち合わせていないからね。


 私が別に殺すわけじゃないよ、君を殺すのはこの森だ。だからせめて、役に立ってもらわなきゃ困るな。


 私は銃で血を流している男を引きずると、開けた場所に身体を置く。


 しばらくしたら、多分、死ぬだろうけど、その前に餌を求めてモンスターが集まるだろう。


 私は男を横に寝かすと、男の四方を囲むように『メモリア』撃ち込んでいく。


 作業を終えた私は一息つくと、辺りを見渡しこう呟く。



「ふぅ、後は罠に掛かるのを待つか」



 私は男を寝かせた場所からしばらく離れたところに移動し、地面に『メモリア』を撃ち込むと木を発現させて、そのまま木の上から経過を眺める事にした。


 うん、どうせだし、今日は木の上で夜を過ごす事にしようかな。


 私は成長する木に手を添えて操作し、丸く開けた丈夫な枝を発現させる。


 今日はここにキャンプ地を作ろう。私は『メモリア』に記憶させたテントを木の上に発現させながらそう決めた。


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