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模擬戦

 



 軍学校の演習場に着いた私達は早速、準備体操をして身体の調子を互いに確認していた。


 模擬戦だし、いきなり錬金術の応酬っていうのもあれだしね、私としては出来るだけ身体を動かせる様にして戦いたいんだよね。



「さて、そろそろやるかな……。っとその前に」



 私は外野に群がる野次馬達にジト目を向ける。


 そこに居たのは軍学校の生徒達である。なんでも、私達二人の錬金術での戦闘を間近で見たいのだとか。


 私から見られた女生徒達は黄色い声を上げ、男子生徒達も歓声を上げていた。



「キャー⁉︎ キネス様が今こっちを見たわ!」

「やっべー…! あのジト目、なんか興奮するっ!」

「めちゃくちゃ美人だよなぁ! 結婚してー!」

「キネス様ー! 愛してますー!」



 学生達から飛び交う歓声はもはやスターを見るような、そんなレベルである。


 いや、私自身、こんなに知名度があるとか知らなかったんだけども、一体、私が居なくなった首都で何があったんだってレベルだよ本当に。


 しかも、キネス様呼びだしね。なんだよキネス様って、我ながらびっくりしてるよ。



「あはは、キネスさん大人気ですねー」

「……違うんだ、私もびっくりしてるんだよラデン。

 なんでこうなるのかなぁ」



 軍学校の先生は一体何を教えてるんだろうね。


 さて、そんな事はどうでもいいとして、私達はここに模擬戦をしに来ている。


 外野がどうだろうと関係ない、今はとりあえずラデンとの模擬戦を通じて、実戦での勘と体力を取り戻さないと。


 私達は互いにバレッタを出すと互いに対峙する。



「さて、それじゃ行かせてもらおうかなっ!」



 まず、仕掛けたのは私からだった、装填したメモリアをラデンに向けて放つ。


 戦闘に特化している錬金術に関してはかなり相性が悪い、ラデンは火炎、私は木だ。この差をどう埋めるかが勝負の鍵になるだろう。


 ラデンの目の前に着弾したメモリアから一気に鋭利な丸太が突き出す様に出現する。



「……いきなりとはっ!」



 それをバク転して華麗に避けるラデン。体勢を立て直すと自身の短刀型バレッタのギアを回し、手元に火炎を発現させる。


 そして、発現させたそれを私に向かい、思いっきり振り抜いた。


 炎の斬撃が私めがけて何発も放たれる。私は思わず顔を顰めると目の前に向かいメモリアを放った。



「あっぶなっ⁉︎」



 すぐに放ったメモリアが発現し、私の目の前には巨大な樹木の壁が姿を表す。


 流石にこれは破れまい、一応、対策として三重にメモリアを地面に撃ち込んだし、いくら炎とはいえこれを破るのは困難だろう。


 そう思っていたが、私の考えは覆される事になる。



「マジかッ! うわっと⁉︎」



 私はすかさず、身体を横に丸める様に転ばせて間一髪のところで、飛来してきたそれを避ける。


 なんと、樹木の壁を高熱で溶かしてラデンの斬撃が突き抜けて飛んできたのだ。


 突き破られた樹木はたちまち燃えはじめ、巨大な炎の柱になる。



「まだまだ行きますよっ!」



 ラデンは私にそう告げるとバレッタをその燃え上がる木に向ける。


 すると、不思議なことに木から発火した炎がまるで意思を持った様にラデンの周りに集まりはじめた。


 炎はラデンのバレッタを中心に蠢いている。


 なるほど、これは非常に厄介な錬金術だな、私の錬金術との相性、本当に最悪じゃないか。



「はぁっ!」



 ラデンが地面に向かって炎をバレッタを叩きつけると、集まった炎が巨大な大蛇の様になり、私に向かって飛来してくる。


 自分が操る炎だけでなく、他の炎も錬金術として操れるとかとんでもないな。


 私はバレッタを構えると、自身の足元に向けて放つ。



「だけど、抜け道が無いわけじゃない!」



 発現したメモリアからは私を押し出す様に丸太が勢いよく突き出す。私はその勢いを使って高速で飛び、炎の大蛇を避ける。


 とはいえ、空中に身体が飛ばされたままでは良い的だ、私は残り二発のメモリアを地面に放ち、すぐに発現させた。


 地面に向かって撃ち込んだメモリアから巨大な植物のツルが私に向かって伸びてくる。


 私は伸びてきたツルをそれぞれ絡めて一つにし、両手で掴む。


 そして、それを一気に収縮させて、スリングショットのようにツルの反動を使って、一気にラデンに向かって一直線に飛んでいく。



「ちょっと強引だけどねッ! 間合いを詰めさせてもらうよ!」



 私は義手の右腕を構えるとそれを振りかぶるようにして、ラデンに向かい振り下ろす。


 一方のラデンは飛来する私を迎え撃たんと短刀型のバレッタを構え、姿勢を低くしていた。


 私が衝突すると共に辺りには凄まじい金属音と土煙が立ち昇る。


 土煙が晴れると、そこには鍔迫り合いの様にして、短刀型のバレッタと義手を火花を散らしながらぶつけ合うラデンと私の姿が現れた。



「やはりキネスさん、やりますね」

「こっちもさっきからヒヤヒヤしてばかりだよ」



 互いに冷や汗を流しながら笑みを浮かべるラデンと私。


 とはいえ、狙い通りに間合いが詰める事ができた。その後にやる事と言えば一つである。


 私は身体をすぐに翻すとラデンの腹部に向けて蹴りを放つ。


 だが、ラデンはそれをスルリと抜けるように躱すと、お返しとばかりに回し蹴りを放ってきた。


 私はそれを手で受け流すようにして捌き、一気に間合いを詰めて彼女の襟元を掴むと引き寄せる力と共に掌底をお見舞いした。


 顎がかち上がる様にして上を向くラデンだが、その勢いのまま、サマーソルトの様にして私に蹴りをぶつけてきた。


 私は紙一重でそれを義手を前にして手でガードする。



「いっつぅ……。今のは効きました」

「あそこから蹴りに繋げるとはね……」



 今のところ間合いを詰めた事が功を奏している。打撃戦でもなんとか打ち勝っているからね。


 だが、間合いを詰めたからと言って私が決して有利という訳ではない。


 むしろ、短刀型のバレッタを持っているラデンの方が有利と言っても過言ではないだろう。



「じゃあ、行きますよッ! そらぁ!」



 そう考えていると短刀型のバレッタを使って、炎を発現させながら斬り掛かってくるラデン。


 私はその軌道をなんとか読みながら躱すが、短刀型のバレッタを上手く使いながら連撃を仕掛けてきているため、さっきよりも間合いを詰めて仕掛けづらくなっている。


 しかも、さらに厄介なのはその短刀型のバレッタで火炎を発現させながら、ラデンが体術を交えて追い討ちをかけてくる事だ。



「ぐふっ⁉︎」



 油断してると、こうして腹部に回し蹴りをモロに受けてしまい、後方に吹き飛ばされてしまう。


 すぐにバク転するように身体を後ろに逸らして衝撃を逃すが、結構良いところに入ったなこれは。


 私は腹部を押さえながらゆっくりと立ち上がり、まっすぐラデンを見据える。



「さっきの掌底のお返しです」

「いやぁ、効いたよ今のは」



 してやったりと笑みを浮かべるラデンに苦笑いを浮かべながら応える私。


 なかなか良い感じで身体が動かせたな、まあ、初日だし、こんなところで良いだろう。


 互いに一発づつ入れた事だしね、後腐れはない。



「さて、今日のところはこんなもんで良いだろう」

「……おや? もう終わりですか?」

「まだ足りない?」



 肩を竦めながらそう問いかける私。


 割と身体は動かせたし、特に調整くらいならこれくらいでも良いかと思っていたんだけどね、どうやら彼女は物足りないようだ。


 ラデンは短刀型のバレッタを軽く放りながらゆっくりと口を開く。



「えぇ、私としてはせっかくなんで、もうちょっとやりたいなって思いまして」

「はぁ……。仕方ないなぁ」

「ふふ、そうこなくてはっ」



 すかさず、私の顔面に向かって飛び蹴りを仕掛けてくるラデン。


 飛んできた飛び蹴りを私はやれやれと言った具合にそれを軽く流す様にして躱す。


 そこからは、ラデンと私はひたすら体術や錬金術を使って先程と同様の実戦形式の模擬戦を繰り広げた。


 なかなか戦いづらい相手という事もあって、良い演習になったと思う。しかも、相手は現役バリバリのエンパイア・アンセムの一人だしね。


 気を抜いたら大怪我をしてしまうので、気が引き締まる模擬戦になったと思う。


 もちろん、互いに本気を出す訳ではなくあくまでも模擬戦という形なのである程度、手は抜いていたんだけどね。



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