表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夜色ちょうちょ

作者: 銀狼

「ねぇ、ほら。キレイでしょう。ちょうちょ。」

 子どもが指をさし、キラキラしたその目で見つめるのは、「キレイなちょうちょ」。

 白色。黄色。青色。

 朝露が光る葉っぱの上で、夜の間に湿った羽をぐんと伸ばして。活き活きと。朝日を浴びて、宝石のように輝く彼女たちは、きっと今日も、花から花へ飛び回る。

 ひらり。

 ひらり。

 キラキラ。

 ひらり。


―たった、一つを除いては。


 まだじめじめと湿っぽい、辛うじて日の光が当たる場所。そこで私は闇色の羽を広げて、独りぼっち。

 ひらり。

 ひらり。

 花と花の間を縫って、彼女たちと同じに飛んでみても、誰一人、私を「蝶」とは認めない。

 花は私の体を引っ張り、葉っぱは後ろ指をさす。彼女たちは、知らんぷり。子どもは私を「蛾」と嗤う。


 だから私は旅に出た。他の誰も、いない場所。私が「ちょうちょ」になれる場所を探し求めて。

 ひらり。

 ひらり。

 飛んで。飛んで。

 山を越えた。林も抜けた。町も村も。

 ひら、ひらり。


 ある日、地面が揺れ動く、真っ青な不思議な場所に出た。青の大地からは美しい、澄んだ歌が聞こえてる。

 そこで私はやっと見つけた。

 私とおんなじ、黒い、羽。

「あぁなんだ。そこにいたのね。」

 私は青い地面に舞い降りた。

 夜色の羽の蝶々は、波にのまれて同じ色。深海の底に、沈んで、消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ