これは見せられない
私たちが列に並ぶこと数分。順番が回ってきた。
「やっとか、私を待たせるとはな。もういっそこのギルドを吹き飛ばそうか」
「はいはい、少し静かにしててね」
この程度待っただけで、この言い草だ。とりあえずいらないことを言わないよう命令しておく。
「今日はどういった御用ですか? メリアさん」
「実は私にもついに使役モンスターができたんですよ。一応、報告しておいたほうがいいかなと思って」
私がそういうと、お姉さんは不思議そうに周囲を見渡した。
「どこにいるんですか? 今は連れてきてませんとか言うのは無しですよ」
「いますよ。ほら、私の横に」
どうやらヘルのことを使役モンスターだとは思ってないらしい。普通にそうなるのは当然か。
「冗談はやめてくださいよ。メリアさんはネクロマンサーですよね。どう見てもその子は死んでるようには見えませんよ。それに人間じゃないんですか?」
「ヘルは人間じゃありません。昨日ダンジョンに封印されてたところをたまたま発見して使役したんです」
「そうだぞ、私を人間などと一緒にするな」
まだ疑っているようだ。どうしようか? ここで魔王ってばらしたらそれこそ今まで黙ってことを進めようとした意味がない。何とか信じてもらえる方法はないかな?
「ダンジョンに封印ですか? メリアさんがいつも行ってるすぐ近くのダンジョンですよね? そんな話聞いたこともありませんが…………」
「だから、たまたま隠し部屋を発見したんです」
「本当ですか? 一向に使役モンスターが獲得できないからって嘘ついてません?」
駄目だ、完全に疑われてる。確かにあのダンジョンに人型の封印モンスターがいたっていわれても私だって信じない。
「ここは、私の力を見せつけるしかないだろう。任せろ、ここら辺一帯くらい今の私でも余裕だ」
「ヘルは黙っててね。ビーストテイマーの方たちはどういう方法で使役モンスターの証明をしてるんですか?」
「ビーストテイマーの人が使役しているモンスターはスキルカードに表示されるのでカードを見ればすぐにわかりますよ…………は! もしかしたらネクロマンサーのメリアさんもスキルカードに表示されるのでは?」
何その簡単な方法…………。とりあえずスキルカードを見てみようかな。そこには思いっきり使役モンスターの欄ができており、ヘル・ミルアーラルと書かれていた。嘘? 昨日もカード見たけど、全然気が付かなかった。
「普通に書かれてました。どうぞ」
「早く気が付けばよかったですね。ふむふむ。ヘル・ミルアーラル? どこかで聞いたことがあるような?」
「当たり前だろうが。私は何て言ったて魔、ムグッ!!」
また、魔王であることを口走りそうになったヘルの口を急いでふさぐ。学んでほしいなほんとに。昨日もこれのせいでお母さんにばれちゃったんだから。それにしても名前で怪しまれるのは考えてなかった。何とかごまかさないと。
「気のせいじゃありませんか。きっとこの街の冒険者に似た名前の人がいるんですよ」
「いえ、この街の冒険者の名前はすべて把握していますからそれはありえません。確かにどこかで聞いたことがあると思うんです。それに名前持ちのモンスターなんてそれほどいませんから。普通は種族名が表示されるはずなんです」
まずい、このまま考え込まれたら、思い出されてしまうかもしれない。話題をそらしてやり過ごそう。
「それよりもヘルを使役モンスターとして登録できますか? それと何か特典みたいなものはあるんですか?」
「それでしたらおそらく大丈夫ですよ。人型の名前持ちモンスターを使役した冒険者は多分メリアさんが初めてになると思いますが。特典は別にありませんが、使役モンスターが倒したモンスターも冒険者カードに表示されるようになります。ランクアップの手助けになるでしょうね」
へー、ヘルが倒したモンスターが冒険者カードに表示されるんだ。さすが冒険者カード便利だ。
「そういえば過去に倒したモンスターも表示されると思うのでちょっと見せてもらってもいいですか?」
「いいですよ、過去に倒したモンスターも見れるなんて本当にすごいですね」
私は冒険者カードをポケットから取り出し、お姉さんに渡そうとしたところで不意にある考えに至った。
ヘルって魔王だよね。そのヘルが倒したモンスターなんて見せて大丈夫なの? 絶対だめだよね。取りあえず一回確認しよう。
えーと、あ、ここか私の名前の横にヘルの名前が表示されていた。スキル、討伐モンスターが書かれている。あれ? スキルも見れるんだ。何々…………魔法威力極大アップ、詠唱省略、完全魔法適正、魔王。はい? なにこれ? 最初の四つの時点ですでに異次元だ。まだスキルの欄にはスキルが無数に存在している。それに最後を見ると、表示しきれなくて途中で終わっている。あ、これ見せられないやつだ。
「どうしたんですか? 自分だけ見てないで私にも見せてくださいよ」
「ごめんなさい。これはちょっと見せられないです」
「どうしてですか? まさか、すごい珍しいスキルでも持ってるんですか? それとも変なモンスターを倒してるとか」
あー、モンスターのほうはまだ見てないや。でも見る必要ないよね。どうせやばいモンスターが大量に書かれてるだけだよきっと。
「なに? スキルも見れるのかそのカード。ちょっと私に貸せ」
「駄目、これは流石に見せられない」
「なぜだ? 私のスキルを見るだけだぞ」
ヘルに見せたら、自分で言いふらすに決まっている。このカードは私だけの秘密にするしかない。
「どうしても見せなくなかったらしょうがないですが、冒険者カード見せないとクエストのクリア報告できませんよ。これからどうするつもりですか?」
やばい? すっかり忘れていた。最近はダンジョンに潜ってばっかりで素材の換金しかしてなかったから。それじゃあ、私はクエストにいけないよ。
「何とか見せないでできませんか?」
「不正防止のためにそれはできません。と言うかなんでそんなに見せたくないんですか?」
「私を無視するな」
ヘルのことを放っておいて話をしていると、ヘルが私の手にある冒険者カードを素早く奪い取った。
「甘いな。私を無視しておいて無防備すぎるぞ。おおー!! 強そうなスキルばっかりじゃないか」
「返して、ヘル!!」
とっさに私が命令するとすごく嫌な顔をしてヘルが私にカードを返した。本当この命令はすごく便利だ。
「そんなに強いスキルばっかりなんですか? いいじゃないですか、誰にも言いませんから見せて下さいよ」
「本当ですか? 約束ですよ」
このまま話していても埒が明かないので仕方なく、お姉さんにカードを渡した。




