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トロッコ

 領主の話を聞いたところ、一か月ほど前から急にドラゴンが鉱山を住処にしたらしい。本当に迷惑な話だ、こんなに街の近くに住みつかれたりしたらそれだけでも大問題だというのに。さらにセイリムの主な財源である鉱石も採掘できない。これでは切羽詰まってしまうのも理解できる。それにしてもなんでいきなりドラゴンなんて……。


「ドラゴンとはまた珍しいモンスターではないか。私の敵ではないがな」

「本当に大丈夫なの? 全盛期のヘルならまだしも今は十分の一の魔力しかないんだよね? ドラゴンだよ? 超強いよ」

「どうやら、この前のを見ても私の強さを正しく理解してないみたいだな。ドラゴン程度今の私でさえ、余裕だ」


 相変わらず頼もしいけど、ドラゴンとなると、ちょっと不安だな。でも二人で戦えば何とかなるかな。


「どうする? もう今日鉱山に行ってドラゴン倒しちゃう?」

「いいぞ、さっさとかたずけたほうがこの街にもいいだろう」


 今までドラゴンに挑んだ冒険者はBランクパーティが三つとAランクパーティが一つらしい。どの冒険者たちも命からがら帰ってきたようで今のところは犠牲者は出ていない。私たちが初の犠牲者にならないように気を付けないとね。


「鉱山の最深部にいるっていってたよね? 本当にどうしてドラゴンがそんなところを住処にしてるのかな?」

「私に聞かれても知るはずがないだろう。そんなのはドラゴンに直接聞け」

「ドラゴンに話しかけたりしてどうするの? 言葉なんて通じないでしょ」


 何を言ってるのやら。言葉が通じるのは人がたモンスターだけだ。ドラゴンに話しかけるなんてただのあほだよ。


「メリアは知らないのか? 高位のドラゴンは普通にしゃべれるぞ。これは有名な話じゃないのか?」

「初耳だよ。ドラゴンしゃべれるの?」

「もしかしたら人間とはしゃべってくれないのかもな。雑魚だし」


 人間にも強い人くらいいるはずだよ。Sランク冒険者なんて魔王並なんじゃないの? 


「とりあえずしゃべるようなドラゴンじゃないのを祈ろう。一番下位のドラゴンだといいな」

「それだと面白くないだろ。下位のドラゴンなどただの雑魚モンスターじゃないか」

「いいのそれで。楽に報酬をもらえるほうがいいに決まってるよ」


 ヘルは不満そうだが、これは断然弱いほうがいい。どうするの? 無駄に高位のドラゴンだったりしたら、もしかしたらやられるかもしれないよ?


「まあ、実際には行ってみないとわからないし、早く出発しよう」

「最高位のドラゴン来い!!」

「いやなこと言うのやめてよ」


 はあ、本当にそれだけはやめてよね。洒落にならないから。




「それにしてもドラゴンはなんで山頂じゃなくて坑道の中にいるんだろう? 普通は山頂じゃないかな?」

「だから自分で聞いてみろっていってるだろう。暗いところが好きだったんじゃないか?」


 そんな理由は流石にないよ。坑道の中にドラゴンなんて採掘どころじゃないよね。いつ襲われるかわかったもんじゃないよ。てか、ドラゴンが入れるほどの坑道ってどれくらいの大きさなんだろう。


 街の入り口とは反対側に歩いていると、鉱山にでっかいトンネルが掘られていた。なるほど、この大きさならドラゴンが通ってもおかしくないかも。絶対に不必要なでかさだ。


「立派なものじゃないか。人間にしてはやるな」

「でも本当にすごいトンネルだね」


 直径十メートルはあるだろうか。どうやって掘ったのだろう? こういう時にも役に立つスキルの人もいるのかな。


「それじゃあ、行こうか。坑道だから最深部のドラゴンのところまではモンスターにも遭遇しないし安心だね」

「少し退屈だがしょうがないか」


 今からドラゴンと戦おうってのにさらに道中まで戦いたくないよ。中へ入っていくと、思ったよりも明るくかなりきれいに整備されていた。この街、最大の財源だから力が入ってるな。


 どれくらい歩いただろうか? こんなに長いものなの? てっきり三十分も歩けば着くと思っていたのに、すでに二時間は歩いていると思う。今日だけで一体私はどれくらいの距離を歩いたのかな? 途中からヘルにおんぶされていたとは言え、自分でも相当な距離を歩いている。やっぱり明日にしておけばよかった。もうやだ、帰りたい。いや、帰りの体力はもう残ってないや。


「ヘル、ちょっと休憩しようよ。長すぎないかな、この坑道」

「これほど、巨大な鉱山なのだから相当な長さがあるに決まってるだろう」

「それにしてもだよ、大体、鉱石を運ぶ用のトロッコとかないの? この距離を人間が運ぶのは無理があるよ」

「入り口にあったじゃないか。今のそのレールの横を歩いてるだろ」


 へ? 入口にあった? なんでその時に行ってくれないの? ほんとだ、普通にレールがあるよ。私もなんで気が付かないかなぁ。冷静に考えてみれば、あるに決まってるよ。


「入り口にしかないのかな? この長さなんだし、ちょこちょこあってもいいと思うけど…………」

「あるんじゃないか? 入口だけにしかないとは考えにくいしな」


 これで何とか光明が見えてきた。トロッコにさえ乗れば今の私でも楽に最深部まで行くことができる。


「しょうがない、私が探してきてやるからここで待ってろ」


 そういうと、ヘルは無数に開いている小さなトンネルの一つに入っていった。


 ヘルって魔王なのに結構優しいよね。魔王って怖いイメージしかないからすごい意外だ。


「あったぞ」


 はや、え? そんなにあっさり見つけてくるの?


「もしかしたらこの小さいトンネルすべてにトロッコが付いてるのかもしれないな。入ってすぐのところにあったぞ」

「なにそれ? じゃあ、今までも大量にあったトロッコに気づかないでここまで来たってこと?」

「そうなるな。実際、探して始めたのは今だからしょうがないがな」


 くそぉ、すぐに気が付いていればこんなに歩くことなんてなかったのに。ていうか領主も教えてくれればよかったのに。気が利かないなぁ。


 トロッコを見てみると、横にレバーが付いていて、倒した方向に進むというとても使いやすいものだった。これなら私でも余裕で使えるよ。


「早く、乗ってヘル。行くよ」

「私はあまり乗りたくないのだが…………しょうがないか」


 さっきまでの歩くスピードとは比べ物にならないスピードで私たちは進んでいった。

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