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いざ次の街へ

 朝目が覚めると、女将さんが枕元に立っていた。


「お目覚めですか? コーヒーはどうですか?」


 何て反応するのが正解なのこの場合。おかしいよね、もしかしてこの街ではこのサービスが基本なのかな。いやいや、ありえないよ。


「コーヒーはもらいますけどなんで朝起きたら部屋にいるんですか?」

「二十四時間体制でお客様にサービスを提供するのが女将の務めですから」


 どや顔でいわれても正直ドン引きですよ。


「この街ではどこの宿もこのレベルのサービスなんですか?」

「そんなわけありませんよ、うちだけです。これほどのサービスを提供しているのは。なぜこれでお客さんが来てくれないのか…………途方に暮れています」


 原因ですね、このサービスが。普通に考えて気持ち悪いと思うんですけど…………。


「このサービスはやめたほうがいいと思いますよ。あまりにも過剰です」

「またまた、ご冗談をこのサービス以外他に自慢できることなんてありませんよ」


 無自覚でやってたのか。まあ、無自覚じゃなかったらここまで客がいなくなっても続けてないか。


「私はやめたほうがいいと思いますよ。宿でゆっくりしたいのにいつ現れるかわからない女将さんがいると疲れませんか? 昨日だけでもかなり疲れましたよ」

「嘘ですよね? 大満足じゃないんですか?」

「それなら一回来たお客さんがもう一度来たことはありますか?」

「当然あります……よ? あれ? 記憶にありません」


 やっぱり、このサービスを嫌がられてるんだ。私ももう一度来ようとか思わないもん。


「そうですよね、これからは普通のサービスにしたほうがいいと思いますよ。値段も下げて」

「お客様の心のオアシスになりたいという精神のもと一生懸命サービスさせてもらっていたのですがまさか逆効果だとは思いもしませんでした」


 わかってくれたのか。これでこの宿も多少は人が来るようになるんじゃないかな。なんかいいことをしたら気分がいいな。この宿が世界中で有名になったりしたら私が変わるきっかけを与えた恩人としてお金貰えるかもしれないな。ないとは思うけど。


 女将さんに感謝はされたが普通に金貨一枚払わされました。



 宿で朝ご飯を済ませた私たちは次なる街へ向けて出発した。


「次はどこを目指すつもりなの? この近くにほかに街あったかな?」

「私が知るわけないだろう。しっかり調べておくのがメリアの仕事だ」

「じゃあ、私は家に帰るね」

「冗談だ、私は魔王だぞ。世界地図くらい頭に入っている」


 本気で帰ろうかと思ったんだけどな。それなら普通に言えばいいのにこういうことをするから。


「それで、次はどこに行くの?」

「そうだなここから一番近いのはセイリムだろうな。半日くらいで着くと思うぞ」


 半日か、意外とかかるなぁ。でも半日で着ける範囲に街があるのはありがたいけど。今のところ野宿はしていないのでまだいいほうだと思う。


「セイリムだっけ? どんな街なの?」

「私が知っていたことと言えば…………鉱山が近くにあったような気がするぞ」


 鉱山があるってことは武器とか防具とかの素材が集まるから、もしかしたらいい武器や防具を調達できるかも。まあ、剣とか使えないけど。


「とりあえず街道に沿って歩けばいいの?」

「方向も記憶と一致しているからそれでいいと思うぞ。つかなくても文句は言うなよ。なんせ私の知識はすべて三十年前のものだからな」


 街が三十年で消滅することはモンスターにでも襲われない限り大丈夫だと思うけど…………。


「モンスターが出てきたらヘルに任せるよ。私は昨日かなり倒したから今回は譲るね」

「いいのか、昨日は結局一体もやれずじまいだったから、ストレスがたまってたんだよ。どんどん出てきていいぞ」


 それは嫌だな。一体くらいでいいんだけど。それでヘルもストレス発散できるしね。



「もう疲れたよ、一回休憩しよぉ」

「だらしないぞ、それで冒険者か。まだ四時間程度しか歩いてないぞ」


 四時間もぶっ通しで歩けただけ褒めてほしいんですが、私のスキルに体力補正は一ミリもかかってないから素の私のステータスなんだよ。それでこれだけ歩けたらかなり上出来だとおもうんだけどな。


「ヘルぅ、抱っこしてよ。もう無理」

「しょうがないな。ここで一つ魔王のすごさを見せてやるとするか」


 いいの? やったー。これで歩かなくて済む。


 次の瞬間、私はヘルに抱きかかえられていた。それもお姫様抱っこで。


「えーーーーーー!? お姫様抱っこ!?」

「なんだ、いけないのか?」


 自分から言っといてなんなのだが、流石にお姫様抱っこは恥ずかしい。なんでこんな街道のど真ん中でお姫様抱っこをされているのだろうか? ここに人でも通ったら一週間は引きずってしまいそうだ。


「ヘル、これは恥ずかしいよぉ」

「そうなのか、私は別に恥ずかしくないが」

「私は恥ずかしいの」


 この後、何とか交渉の結果、おんぶに変えてもらうことができた。これなら全然平気だ。お姫様抱っこされた後だから、感覚が少し麻痺しているかもしれないけどね。

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