表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/22

サービス

 はあ、思わぬ出費だ。さっきのご飯の何倍もお金かかったよ。こんな調子だとだめだ。今度からは情に負けないようにしよう。


「ではお部屋に案内させていただきます。どうぞ、こちらへ」

「ありがとうございます」


 せめて部屋には期待しよう。これだけ高いんだから相当いい部屋なんだろうな。


「こちらでございます」


 入り口はいたって普通の部屋だ。まあまあ、問題は中だから。扉を開けると…………少し広いくらいの部屋だった。え? これで金貨一枚? まさかそんなことありえないよ……ね?


「なんの冗談ですか? この部屋が金貨一枚のわけないですよね?」

「この部屋で間違いありません。料金にはサービスと料理のお値段もこみこみですから、がっかりするには早いですよ」


 豪華な料理とか出ても今はそんなに食べれないよ。文句はチェックアウトの時に言うべきか。


「では失礼します。何かあったらすぐに参りますのでご安心ください」


 そういうと女将さんは部屋を後にした。もう一回冷静になって部屋を見渡してみてもやはりちょっと広めかな程度である。きっとサービスが充実しているはず。


「ほんとに何なのこの宿。おかしいよ」

「まあ、そういうな。人助けをしたと思えば気も晴れるだろう。いいことをしたら気持ちがいいな」


 ヘルってこんなキャラだった? 深く考えてもしょうがないか。ヘルは根はやさしいのかもしれないな。


「今日は疲れたね、お風呂に入ってもう寝よっか」

「そうだな、今日のところはもう寝たい」

「かしこまりました。お風呂ですね、どうぞこちらへ」

「「え?」」


 私たちの会話にいきなり女将さんが入ってきた。いつの間に。ていうかその壁隠し扉になってるの?


「今の話聞いてたんですか? いや、それよりなんでそんなところに隠し扉があるんですか?」

「言ったはずです、料金にはサービスも含まれていると。これぞ我が宿のおもてなし。いついかなる時にでもお客様のご要望に応えられるようこの扉を作らせていただきました」


 おかしい。女将さんは一体何者? 忍者なの? 


「ご苦労だ。で? 風呂はどこにある?」

「はい、自慢の大浴場が一階のほうにありますのでどうぞご利用ください」


 女将さんに案内され、大浴場へ着いた。ここも本当に大きいのかな? またちょっと広いくらいのものじゃないの?


「では、ごゆっくりどうぞ、お客様はお二人以外にはいませんので完全に貸し切りです」


 貸し切りはうれしいかも。お風呂は期待してもいいよね。


 ガラガラッ。


 脱衣所はまずまずの大きさだ。ロッカーもしっかりしたものがたくさん設置されている。よかった、これは安心していいよね?


「以外に広いじゃないか。これだとかなりの人数が来ても大丈夫だな。私たち以外に客はいないが」

「そんなこと言わないの。ほら、さっさと入るよ」


 ガラガラッ。


 もう一度ドアを開けると、思ったよりも大きいがそこまで大きくないとても普通なお風呂だった。逆に反応に困る。


「思ったよりも広いね。自慢の大浴場っていわれて案内されたら少し微妙な気もするけど」

「この宿はこれが精一杯だったんだ。やめろそんな顔するのは」


 私顔に出てたかな。確かに複雑な心境ではある。


 別段、長風呂が好きと言うわけでもない私たちはすぐにお風呂から上がり部屋に戻った。部屋に戻ると、すごい綺麗に布団が並べられていた。こういうところはしっかりしてるな。


「気が利くじゃないか。サービスもいいのになんで客がいないんだろうな?」

「高いからじゃないかな。さすがに金貨一枚は高すぎだよ」


 いくらサービスが良くてもあまりに高いと客は来ないに決まってる。ましてやこの街はお金持ちたちが大勢住んでいるわけでもない。そんな街でこの値段は正気の沙汰とは思えない。私たちにだけこの値段を払わせてるのかもしれないけど。


「のどが渇いたな。水でも用意されてないのか?」

「どうぞ、冷たい水です」


 でた。また隠し扉から女将さんが現れた。どうやってるのか知りたいくらいの速度だ。ほんとにヘルが言った次の瞬間には女将さんがいるというわけのわからない状況だ。


「やるな、私の僕にしてやりたいくらいだ」

「ありがとうございます。サービスには自信があるので」


 水をヘルに渡すと、すぐに隠し扉からいなくなってしまった。これはもしやこのサービスのせいか。いくら気が利いてもこれは正直かなりうっとおしいし、プライバシーもあったもんじゃない。


 その後もヘルが小腹が空いたと言うとすぐに夜食用の料理を持って現れたり、クエストで肩が凝ったというとマッサージをしに現れた。これは何か違う。独り言でいったものにもすべて反応し、現れている。もう、女将さんが到底普通の人には思えない。未来が見えてるっていわれても信じてしまいそうだ。このサービスの料金も合わせて金貨一枚と言うことのなのだろう。


 極めつけには寝ているときに脱げた布団まで直しに現れていた。女将さんそれはもうやりすぎだよ。このサービスが気味悪がられてお客さん来なくなったんじゃないの?

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ